ミュージカル『The View Upstairs -君が見た、あの日-』感想 アーカイブ配信は2月16日(水)まで

『The View Upstairs -君が見た、あの日-』

2022年2月8日(火)~2月13日(日)日本青年館ホール(東京都)にて、ミュージカル『The View Upstairs -君が見た、あの日-』が上演されている。本作は、アメリカ・ニューオーリンズに実在した同性愛者クラブ「アップステアーズ・ラウンジ」で1973年に実際に起きた「アップステアーズ・ラウンジ放火事件」を題材に、ブロードウェイ新進気鋭の若手作家、マックス・ヴァーノンが作・作詞・作曲を手がけたミュージカル。

2017年にアメリカ、オフブロードウェイで初演、その後全米各地で上演。2018年にはオーストラリア、シドニーで初海外プロダクションが開幕、2019年にはロンドン版も上演され、そしてついに2022年日本初上演を迎えた。

出演は、2022年を生きる若きファッションデザイナー・ウェスに平間壮一、1973年に生きる男娼・パトリックを小関裕太が演じ、「アップステアーズ・ラウンジ」に集う人々として、バディ(畠中 洋)、イネズ(JKim)、フレディ(阪本奨悟)、ヘンリ(関谷春子)、リチャード(大村俊介(SHUN))、警官·不動産業者 ほか(大嶺 巧)、デール(東山義久)、ウィリー(岡幸二郎)といった歌とダンスの実力者たちがそろった。

※以下、一部ネタバレがあります。

物語は、バディの軽快な歌から始まる。♪ここがきっとパラダイス、天使も聖母もいないけど♪と楽しそうに歌い踊るアップステアーズ・ラウンジの人々が次々に登場するが、舞台上は暗転。時代は突如2022年に。そこはニューオーリンズのフレンチクォーターにある廃墟と化した建物で、ファッションデザイナー・ウェスが今まさに購入したものだった。

とんでもない物件を買わされたと後悔するウェスだが、クスリで気分をハイにし♪輝く未来の旅がここから始まる♪と歌い、その場で眠ってしまう。目が覚めるとそこは1973年の「アップステアーズ・ラウンジ」だった…。

同性愛が罪だった時代に、唯一の居場所に集まる「はみ出し者」たちのもとにタイムスリップしたウェス。そこでウェスが目にしたものは、同性愛者たちが警官に受けている屈辱的な扱いで、ゲイであることを隠さなければいけないアップステアーズ・ラウンジの人々だった。2022年に生きるウェスはその様子に憤り、警察官に立ち向かっていく。

そんなウェスの様子に驚いたアップステアーズ・ラウンジの人々は「ここが閉鎖されたら、行くところがない。俺たちは神に背いた犯罪者だと言われている。生き残ることが復讐なのだ」と叫ぶ。そんな様子を複雑な想いで見つめるウェス。同性愛者であることがバレたらすべてが終わる…。それが70年代の現実だったのだ。

2022年でゲイのファッションデザイナーとして生きるウェスを演じる平間壮一は、自由奔放な雰囲気を持ちながらもさまざまな悩みを抱える27歳の青年を生き生きと演じている。1973年に生きるパトリックに「インスタ」「コンテンツ」「ネット」と未来を語り、「ネットって何?」と突っ込まれるちぐはぐな会話が面白い。

パトリックを演じる小関裕太は、立ち姿が美しい。パトリックの衣装がスタイルの良い小関にぴったりはまっていて、それだけでも目を楽しませてくれる。恋に落ちたウェスとの関係に一瞬亀裂が入るのだが、これまでのつらい経験を歌で訴える姿にキュンとくる。

物語の後半、ウェスとパトリックがしっとり歌うラブソングは、必聴だ。

本作品では、アップステアーズ・ラウンジの人々がそれぞれ自分の生い立ちを歌うが、圧巻は岡幸二郎が演じるウィリーだ。その佇まいの美しさったら素晴らしいし、生い立ちを語るウィリーのコケティッシュな雰囲気がかわいらしい。またウェスが作った衣装を着て登場するフレディを演じる阪本奨悟のキュートな姿も必見だ。

そして見るからにヤバそうな男娼・デールを演じる東山義久は新境地を開いた。いつも颯爽と踊るかっこいい役が多い東山だが、今回は誰にも受け入れられない孤独な人間を演じている。

物語は楽しく軽快なテンポで進んでいくが、終盤、孤独に追い詰められたデールがキレてしまい、バディが暴言を吐いたことで悲劇が起こる。

悲劇が起きたことでウェスはすべてを悟るのだが、物語の最後、「50年経っても国の半分は僕らを嫌っているし、僕らに自分自身を憎むように仕向けてくる。この世界はぶっ壊れている。君たちの時代から何も変わっていないんだ」とウェスが叫ぶシーンが胸に刺さる。

そう、世界は簡単に変わらない。それはあらゆる舞台や映画を観ていて感じることだが、『The View Upstairs -君が見た、あの日-』のような作品を上演していくことで、理不尽な世界が少しずつ変わっていることも事実だと思う。

本作は、東京公演終了後、大阪公演が2月24日(木)~2月27日(日)まで、森ノ宮ピロティホールにて上演。PIA LIVE STREAMでは2月16日(水)までアーカイブ配信中。物語の内容はもちろんのこと、マックス・ヴァーノンの曲はすべて耳に残り、ミュージカル『RENT』の曲を初めて聴いた時の気持ちに似ている。癖になりそうな予感だ。

文・咲田真菜

ミュージカル『The View Upstairs -君が見た、あの日-』

(東京公演)
■劇場:日本青年館ホール
■公演日程:2022年2月1日(火)~2月13日(日)
■チケット料金:
・S席:11,800円・A席:8,500円・B席:6,000円
※全席指定・税込
※未就学のお子様はご入場いただけません。ご了承ください。

(大阪公演)
■劇場:森ノ宮ピロティホール
■公演日程:2022年2月24日(木)~2月27日(日)
■チケット料金:10,000円
※全席指定・税込
※未就学のお子様はご入場いただけません。ご了承ください。

(東京公演のライブ配信&アーカイブ配信)
■配信日時:2022年2月9日(水)18:00~公演終了まで
■アーカイブ配信:公演終了~2022年2月16日(水)23:59
■配信視聴チケット料金:
・視聴券のみ:3,800円(税込)・デジタルパンフレット付き視聴券:5,800円(税込)

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この記事を書いた人

高校時代に観た映画『コーラスライン』に衝撃を受け、ミュージカルファンに。宝塚歌劇団にもハマり、久世星佳⇒香寿たつき⇒安蘭けい…といったファン歴をたどる。そして第一次韓流ブームから、細く長く韓流ドラマを視聴。最近のお気に入りはキム・ドンウク。

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