2023年12月29日(金)から、韓国映画『宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきました』が公開されている。
某大ヒットドラマを思い起こさせるタイトルに興味がわく人も多いだろう。しかし今回北朝鮮に不時着したのは、人ではなく6億円の当たりくじ。北朝鮮とにらみ合う38度線・韓国軍の監視所で偶然当たりくじを拾ったパク・チョヌ兵長(コ・ギョンピョ)と風に舞って飛んでいってしまった当たりくじを手にした北朝鮮兵士・リ・ヨンホ(イ・イギョン)が繰り広げるドタバタコメディーだ。
STORY
北朝鮮とにらみ合う38度線・韓国軍の監視所に勤務するパク・チョヌ兵長(コ・ギョンピョ)は、除隊を間近に控え粛々と職務にあたっていた。ある日、1等6億円の当選くじを偶然拾ってしまう。密かに大金を手にしたことを喜び舞い上がるのだが、監視塔での任務中、当たりくじが風に吹かれて北朝鮮との軍事境界線を越えて飛んでいってしまう。
焦ったチョヌは、深夜にこっそり非武装地帯の大草原で当たりくじを捜索。その時に北朝鮮の兵士、リ・ヨンホ(イ・イギョン)と出会う。風に飛ばされたくじをヨンホが拾っていたのだ。チョヌは「それは俺のものだ。返せ!」と訴えるが、ヨンホは応じない。
悩んだチョヌは、上官であるカン小哨長(ウム・ムンソク)と年下のマンチョル上等兵(クァク・ドンヨン)を巻き込んで、くじを取り返す方法を模索する。ヨンホも政治指導員スンイル(イ・スンウォン)と韓国通のチョルジン上級兵士(キム・ミンホ)とともに、くじを換金する方法を考える。こうして韓国と北朝鮮それぞれの兵士たちは、くじをめぐって3対3のチーム戦へと発展していった。そしてある夜、非武装地帯の森の奥にある共同給水区域(JSA)に集まった6人は、まるで決闘に臨むかのようにテーブルを挟んで対峙する。
『宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきました』感想
久しぶりに映画で大笑いをしてしまった。
コ・ギョンピョといえば、直近ではディズニープラスで配信された『コネクト』で薄気味悪い役を演じていた印象が強く、イ・イギョンは現在Amazonプライムビデオで配信中の『私の夫と結婚して』で超がつくクズ男を演じている。この2人がそれらの役とは全く違う、ユニークなキャラクターを好演しているのだから、笑ってしまうのも当然だ。2人ともこんなに面白おかしい表情をするんだと、ギャップ萌えをする人も多いと思う。
真夜中に非武装地帯をウロウロすることがいかに重大なことか、日本人でも容易に想像がつく。ところがお咎めを受けそうになったチョヌが上官と後輩兵士に当たりくじの存在を明かすやいなや、チョヌの罪をなかったことにして、くじを取り戻すために結託するところが面白い。
そしてそれは、北朝鮮の兵士たちも同じだ。宝くじを「民主主義の悪」と言いつつも、いざ当たりくじを手にして高額をゲットできると分かったら、その誘惑に勝てない。しかも北朝鮮で換金は不可能だから韓国兵士に頼るしかなく、渋々交渉に応じる。しかし6人は顔を合わせて話をするうちに、心が通じ合っていくところがなんとも温かい気分になるではないか。
ただし敵対している者同士なので「当たりくじを換金して平等に分ける」ことについては、お互いを100%信用できない。そこで考えた案が、換金するまでお互いに人質を交換するということ。そのターゲットになったのがチョヌとヨンホなのだが、慣れない敵地でチョヌは北の食糧問題解決に貢献して英雄とされ、ヨンホは北朝鮮が仕掛けた地雷を踏んだ兵士の命を救い、ヒーローとなる。目立ってしまったら命の危険があるのに、2人とも意に反して功績を残してしまったため、なんとか正体がバレないように苦心する姿がまた面白い。
チョヌは英雄とされただけでなく、ヨンホの妹ヨニ(パク・セワン)とも親しくなり、北朝鮮での生活をそれなりに楽しんでいた。
そして肝心の当たりくじを換金する重大なミッションを背負ってソウルへ向かったマンチョルだが、高額を手にするプレッシャーで不審な行動をとり「変態軍人」とSNSで取り上げられてしまう。マンチョルを演じたクァク・ドンヨンは『ヴィンチェンツォ』では憎らしい悪役、『ビッグマウス』では、敵なのか味方なのか分からない怪しげな役を演じたが、今回は100%ひょうきんな役に徹している。「変態軍人」と言われても仕方がないと納得できる怪しい動きに注目だ。
果たしてチョヌとヨンホは、無事に大金を手にすることができるのだろうか? ドタバタの先にある結末は、ぜひ劇場でご覧いただきたい。
文・咲田真菜
映画『宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきました』概要
2023年12月29日(金)~新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
監督:パク・ギュテ
出演:コ・ギョンピョ『別れる決心』イ・イギョン『ヒットマン エージェント:ジュン』ウム・ムンソク『犯罪都市 THE ROUNDUP』パク・セワン『人生は、美しい』クァク・ドンヨン『野球少女』
2022年/韓国/113分/シネスコ/5.1ch/原題:6/45/日本語字幕:岩井理子/字幕監修:松尾スズキ/提供:ツイン、Hulu/配給:ツイン G
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