舞羽美海、十碧れいやインタビュー 公演中止を乗り越え、宝塚歌劇団同期の2人が『Run For Your Wife』を語る【インタビューVol.15】

左から:十碧れいや、舞羽美海

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2023年7月12日(水)~7月19日(水)、あうるすぽっと(豊島区立舞台芸術交流センター)にて、ロンドンコメディ『Run For Your Wife』が上演される。

原作はイギリスの人気劇作家レイ・クーニー。日本でも多くのカンパニーで上演を重ねている傑作コメディーだ。主人公のタクシードライバー・ジョン役を演じる山本一慶は、2019年の初演以来3度目の挑戦となる。

このたびジョンの2人の妻、メアリー・スミス役の舞羽美海さんとバーバラ・スミス役の十碧れいやさんにお話を伺うことができた。

宝塚音楽学校93期生の同期として切磋琢磨されてきたお二人。ようやく上演が叶う本作で、最愛の夫・ジョンをめぐりどのように対峙していくのか。同期ならではの「絆」が感じられるインタビューとなった。

左から:十碧れいや、舞羽美海

公演中止を乗り越えて、ようやく上演できる喜び

――公演中止を乗り越えて、『Run For Your Wife』の上演が叶います。現在の意気込みをお聞かせください。

舞羽:私は、お稽古の段階で2回公演中止になってしまいました。コロナ禍で私が出演する予定だった作品で上演できなかったのはこの作品だけだったんです。だから本当に悔しかったですし、いつか公演をやりたいと思っていました。一方で2回中止になってしまったので、怖い気持ちもありました。今回ようやく公演できる機会をいただけたので「お客様に届けたい!」という気持ちが強くあります。

前回は「覚えるのに必死」という状態で終わっていましたが、今回はいろいろなことに挑戦できそうなので、すごく楽しみです。

十碧:初めて台本をいただいてお稽古していたときから、台本の面白さ、そして自分が演じるバーバラのことがすごく好きになりました。ですから公演中止になって、みみちゃん(舞羽の愛称)と同じで、お客様に届けられなかったことがすごく残念でした。3回公演が中止になったのは私もこの作品だけなので、今年こそはお客様に見ていただきたいという気持ちでいっぱいです。

――『Run For Your Wife』は本当に楽しい作品ですが、おふたりにとって、とてもパワーがいる作品だと感じました。今回やってみたいことやチャレンジしたいことはありますか?

舞羽:私は客席からこの作品を観劇させていただいたことがあるのですが、まず台本が素晴らしいと感じました。

そういう意味で前回のお稽古中は、台本の素晴らしさとこれまで演じてこられた方々の素晴らしさにとても縛られていたんです。今回は初参加のキャストの方も多いので、また新しい『Run For Your Wife』を作ることができるのでは…とすごく楽しみです。

私自身で言えば、いちから台本に向き合いたいというのが正直な気持ちです。時間も経っているので「メアリーはこうやって演じていたな…」というところを一度外して、一つひとつのアクションにじっくり向き合いたいです。

舞羽美海

――もしかしてアドリブも期待できるのでしょうか?

舞羽:台本が素晴らしいので、その通りに演じるだけで絶対面白いという確信があります。ですからまずは台本に忠実に演じたいですね。ト書きが書いてあるのもこの作品の面白さだと思いますから。

忠実に演じつつ、一緒にお芝居をする方とのコミュニケーションで何かが起きれば、その瞬間を楽しみたいです。

――十碧さんがチャレンジしたいことは何でしょうか?

十碧:この作品は「このタイミングでこれをする」といった、きまりごとが結構多いんです。それがうまくいくからこそ面白いものが出来上がるのですが、そうしたすべてを体に入れた上で、バーバラを演じたいです。

バーバラって、キャリアウーマンなのに人を疑うことを知らない人なんですよね。夫のジョンは、いろいろ疑わしいことがあるのに、一切疑ってなくて…(笑)。そのまっすぐさやジョンへの愛、そしてジョンに絡むところでは色っぽいシーンもあるので、3年前の自分にはなかった色っぽい部分を少しでも増せるように(笑)、挑戦したいと思います。

十碧れいや

――十碧さんがおっしゃったように、ジョンは疑わしいことがたくさんあるし、よく考えるととんでもないことをしていますよね。でも山本一慶さんが演じるとなぜか憎めなくて、本当にこの役が似合っています。お二人から見て一慶さんの印象はいかがですか?

舞羽:ジョンは、一慶さんが演じているから許されると思うんですよね(笑)。

一慶さんは、多くを語る方ではないのですが、みんなを引っ張っていってくれる力強さと、安心感がすごくあります。前回の公演ではルーさん(ルー大柴)がいらっしゃったので、長く役を生きていらした方たちの安心感が強かったイメージがあります。

今回はキャストが変わりますし、特にルーさんが演じていたスタンリーを石田隼さんが演じることで一慶さんも多分変化されると思うので、そこが楽しみですね。

十碧:一慶さんは、せりふ量が莫大なのに、お稽古の最初の時点でほとんどのせりふを頭に入れてらっしゃるんですよ。しかも妻の私たちの行動まで全て把握してくれてらして。ちょっと間違ったことをしても「次こっちですよ、あっちですよ」って言ってくださったりして、本当にしっかりされてる方なので、頼りになる座長だなと思っています。

普段しっかりしている一慶さんが、ちょっと抜けてるジョンを演じるというギャップを稽古場で見ていて、ムヒムヒしていました…(笑)。

宝塚音楽学校の同期生としての絶対的な信頼感

――宝塚歌劇団で同期のお二人が、夫をめぐって対峙するというところも見どころだと思います。同期生として、いわゆるライバルのような役を演じるというのはどういうお気持ちでしょうか?

十碧:初演のときは、みみちゃんと共演するのが宝塚音楽学校以来だったので、すごく新鮮でした。でも2021年に『ル・シッド』という舞台でがっつりお芝居をさせてもらう機会がありました。

そこを経て今回の公演となるので、さらに信頼感が増し、前回とは違う空気感でやっていけるんじゃないかなと思うので、すごく楽しみです。

舞羽:『ル・シッド』で共演したのも心強いですし、本当に面白いことに、どんなに時間が経っても宝塚の同期って絶対的な信頼感があるんですよ。今回改めて台本を読ませていただいて、私の頭の中でバーバラは十碧れいやの声で流れるんです。「れな(十碧の愛称)、こうやっていたな」って。私の中で、バーバラ=れななので、やっとまた向き合えるのが楽しみです。

――同期ならではの良さといいますか、注目してほしいところはありますか?

十碧:同期ならでは良さでいうと、いいところも悪いところも音楽学校時代に全て見せ合ってるので、お互いを全て知り尽くしているから稽古場で気を遣わなくていいんです。

初めて共演する方であれば「どうされてるかな」と気にしてしまう部分がありますが、自分のことに集中できるので、いい意味で気を遣わないところが同期ならではの良いところだと思います。

舞羽:私も、気を遣わないというところですね。演じる中で疑問に思ったことも「どう聞いたらいいかな」と考えるよりは、ストレートに思ってることを伝えられたりするところがいいです。演技に行き詰って誰かに相談したい時、同期がいると心強いなって思います。

実際に共演した舞台『ル・シッド』でも、いろいろ大変なところがあったのですが、れながいたから舞台上で安心できたというのは、同期でなければ築けない信頼感があったからだと思います。

役と似ているところはない! だからこそ思い切り演じられる

――役についてお伺いします。お二人が演じるメアリーもバーバラもかわいらしい女性で、先ほど十碧さんがおっしゃったように、疑うことのない純粋な女性です。舞羽さんがメアリー、十碧さんがバーバラを演じる上で、自分と似ているところと違うところを教えてください。

十碧:私も「いつか騙されるんじゃない?」と言われるほど人を信じやすいので、そういうところはバーバラと似てるのかなと思います。(笑)

似ていないところは、バーバラはキャリアウーマンなので、そこは違うかなと。芸能のお仕事とはまた違った面があると思うので、イメージを膨らまして演じたいですね。バーバラは、仕事の時の顔とオフ時の顔が対極なのでは…と感じているので、そこがポイントかなと思っています。

舞羽:メアリーと似ている部分はあまりないと思います(笑)。

メアリーは、ジョンのことを「信じたい!」と思って信じてるわけではないですよね。当たり前と思って普通に過ごしてる中で、いろいろなハプニングが起きているので…。

そしてメアリーは「わ~!!」って発狂するシーンがありますが、私は人前で発狂したこともないですし…(笑)

十碧:(笑)確かに聞いたことがない!

舞羽:感情を爆発させるということを、人前でしたことがないので、前回も「未知の世界だな…」と思いながら演じていました。どうやったらいいんだろうと思いながら、戦っていましたが、違うからこそ思いっきりやれる部分はありますね。今もまだいろいろ悩んでますが、メアリーの発狂シーン、楽しみにしていてください!

私たちの熱量をぜひ劇場で感じてほしい!

――先日、ビジュアル撮影が行われたと伺っています。衣装を着るとまた気分も盛り上がったのではないかと思いますが…?

十碧:初演の時のポスター撮影がパーティー風で、紺のタイトなドレスだったんです。今回はうって変わってパンツスーツだったので、衣装が変わると撮り方や表情が変わりますから、とても新鮮な気持ちで撮影させていただきました。

十碧れいや

――パンツスーツというと、バーバラはキャリアウーマンですから、本当にピッタリですね。

十碧:そうなんです。本番の衣装は変わるとのことですが、ビジュアル撮影はバリバリのキャリアウーマン風でさせていただきました。

舞羽:私も前回とは違う衣装でした。今回、キーアイテムでもある電話を持って撮影したのですが、台本を読んでいたりお稽古も経験しているので、すごくイメージが沸いて、いろいろな感情が出てきました。

実は前回のお稽古で、電話のシーンがすごく難しかったんですよ。ですから「電話だーー!」と思いましたし、イメージが明確にあって思い出深かったので、楽しい撮影になりました。

舞羽美海

――電話といえば、冒頭でお二人が電話をするシーンが出てきます。同じせりふを同時に言うのは大変だったと思いますが、タイミングを合わせたんですか?

十碧:感覚でしたね。同期だから何となく呼吸が分かったので…。

舞羽:あそこのシーンは結構印象的で、テンポ感も大事なのかなと思ったので、感覚でやりました。でも結構あのシーンはお稽古をやりましたよね。

十碧:何度もお稽古しました。

――新しいキャストを迎えてのお稽古はこれからだとお聞きしていますが、楽しみなことはありますか?

十碧:私は一慶さん以外、すべてのキャストが初共演です。どんな方で、どんな演技をされるのかが未知の世界なので、すごく楽しみです。

舞羽:私は3月に石田さんの舞台を拝見して、とんでもなく面白い役者さんだと感じました。その時に少しだけお話できる機会があったので、いつかご一緒できたらいいな~なんて、軽い気持ちで思ってたら、今回実現するのですごく楽しみです。

でも、石田さんが演じるのはスタンリーなので、私はすごく絡みがありますから「怖いっ!」とも思ってます(笑)。一慶さんとの絡みも楽しみですし、いろんな化学反応が起こりそうな気がしています。

――公演にかける意気込みをお願いします。

舞羽:客席からこの作品を観て、何も考えずに楽しくて、観終わったあともいい作品を観ることができたな…というイメージがありました。お客様には劇場に遊びに来る感覚で『Run For Your Wife』を楽しんでいただけたらいいなと思います。気楽にいらしてくださいと強く思っています。

十碧:私も3度の中止を経て「観たかった!」って言ってくださるお客様がすごく多かったので、やっとお届けできると思うととっても嬉しいです。この気持ちをお稽古にぶつけて、お客様にしっかりお届けしたいと思います。

――最後にファンの皆さんに一言お願いします!

十碧:ファンの皆様、お待たせしました! 今年7月やっとお届けできます。観に来てくださいね~!

舞羽:コロナ禍を経て、やっとこの作品をお届けできるというのが本当に嬉しいです。とにかく私たちの熱量を感じに来てください。劇場でお待ちしております!

取材・文:咲田真菜

◇カメラマン:山副圭吾
◇ヘアメイク:北野恵利(JOUER INTERNATIONAL)
◇衣裳:阿部 浩(松竹衣裳株式会社 大阪本部)

ロンドンコメディ『Run For Your Wife』

日程:2023年7月12日(水)~19日(水) 
劇場:あうるすぽっと

作:レイ・クーニー
訳:小田島雄志/小田島恒志 
演出:菅原道則

出演:
山本一慶(ジョン・スミス)、舞羽美海(メアリー・スミス)、十碧れいや(バーバラ・スミス)
松井勇歩(トラウトン警部)、ピクニック(ポーターハウス警部)、石田隼(スタンリー・ガードナー)、小澤亮太(ボビー・フランクリン)

料金:7,700円(税込み、全席指定)

一般発売:6月1日(木)10:00~
企画・製作:アーティストジャパン 
お問い合わせ:アーティストジャパン 03-6820-3500 
https://artistjapan.co.jp

公式サイト:https://artistjapan.co.jp/runforyourwife2023/
公式Twitter:https://twitter.com/aj_rfyw2023

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この記事を書いた人

国家公務員・一般企業勤務を経てフリーランスのライターになる。高校時代に観た映画『コーラスライン』に衝撃を受け、ミュージカルファンとなり、以来30年以上舞台観劇をしている。最近はストレートプレイも積極的に観劇。さらに第一次韓流ブームから、韓流ドラマを好んで視聴。最近のお気に入りはキム・ドンウク。