岩本蓮加(乃木坂46)×宝田明W主演 『世の中にたえて桜のなかりせば』感想 70歳差のコンビが描くほっこりヒューマンドラマ

(C)2021『世の中にたえて桜のなかりせば』製作委員会

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2022年4月1日(金)より、映画『世の中にたえて桜のなかりせば』が全国公開される。

乃木坂46で活躍する岩本蓮加と、先日突然の訃報が伝えられた大ベテラン俳優・宝田明がW主演を務める本作。

岩本が演じる不登校の高校生・吉岡咲と宝田が演じる柴田敬三は、“終活アドバイザー”として『終活屋』で働いているのだが、そこで様々な境遇の人たちと出会い、終活を手伝う様を描く。タイトルである「世の中にたえて桜のなかりせば」とは、桜にまつわる詩からの引用で、“桜の季節”と“終活”をテーマに、岩本と宝田の70歳年の差コンビが心温まるヒューマンドラマを展開していく。

■ストーリー

終活アドバイザーのバイトをしている不登校の女子高生・咲(岩本蓮加〈乃木坂46〉)は、一緒に働く老紳士・敬三(宝田明)と共に、様々な境遇の人々の「終活」の手助けをしていく。

咲は危険と隣り合わせの職業で、万が一のために家族に遺書を残そうとする者や余命わずかで思い出を残そうとする者たちに寄り添って「終活」のお手伝いをする日々を送っていた。

そんな最中、咲の担任でかつて国語教師であった南雲は生徒からのイジメに遭い、教師をやめ自暴自棄の生活をしていた。咲はひきこもりの彼女の様子を見に度々家を訪れ、様子をうかがっていた。一方で、イジメの張本人の女子生徒を待ち伏せして自分の気持ちをぶつけたりもするが、彼女の中のやるせない気持ちは消えることはなかった。

自身も不登校で行き場を求めている咲に、敬三は病気で老い先短い妻(吉行和子)とかつて見た桜の下での思い出を語る。咲は敬三たち夫婦を励まそうと、敬三がかつて見たという桜の木を探しに出かけるのだが…。

岩本が演じる高校生・咲は、不登校という問題を抱えているが、終活屋で働いている姿は、悩みを抱えている様子が感じられない。明るい少女だがマニュアル通り客に接する姿は少し滑稽だ。「血の通った」人間味のある対応をする相棒・敬三に戸惑う毎日を送っている。

(C)2021『世の中にたえて桜のなかりせば』製作委員会

70歳差のコンビは、終活屋でいろいろな客と対応することになる。危険な任務に就くため、雇用主から家族へ遺言を書くように言われたが、何を書いていいのか分からないと相談に訪れる働き盛りの30代の男性や、重い病が分かり、自分が生きていた証を記録として残したいという中年男性など、終活というのは高齢者だけが考えることではないのだと改めて実感させられる。

(C)2021『世の中にたえて桜のなかりせば』製作委員会
(C)2021『世の中にたえて桜のなかりせば』製作委員会

さまざまな人と接するうちに、マニュアル通りの対応をしていた咲が、敬三の影響を受けて少しずつ変化していく姿が頼もしい。それと同時に不登校のきっかけとなった、かつての担任教師・南雲(土居志央梨)のひきこもりをサポートしていく姿にも心を打たれる。

咲が不登校になったのは、尊敬していた教師の南雲が、一部の生徒からいじめを受けていたことに抗議をしたことだった。咲は正義感が強く真面目な少女なのだ。そういう芯の強さを感じさせるところを岩本はみずみずしく、時に切なく演じている。

(C)2021『世の中にたえて桜のなかりせば』製作委員会

そして何より、宝田が演じる敬三が抜群の存在感を醸し出している。70歳差といえば、人生の先輩としてとかく説教くさいことを言ってしまいがちだが、敬三は常に咲と対等な目線で接している。

自身の問題に少しずつ向き合うようになる咲に対して「大丈夫ですよ、お嬢さん」と優しく語りかける敬三。さりげなく咲を見守る姿を見ていると「敬三さんみたいな人が身近にいてくれたら、どんなに心強いだろう」と思う人も少なくないだろう。

そんな敬三に、咲も何かをしてあげたいと考えたのだろうか、余命いくばくもない敬三の妻との思い出の場所を探すために咲は奔走する。70歳年上の「相棒」のために力を尽くす咲の姿に、胸が熱くなる。

(C)2021『世の中にたえて桜のなかりせば』製作委員会
(C)2021『世の中にたえて桜のなかりせば』製作委員会

咲自身も不登校という問題に正面から向き合い、咲の元担任だった南雲も、教師を辞めて自暴自棄になっていた生活から脱しようと必死にもがいていく。生きていくということは、年齢に関係なく困難と背中合わせであるとともに、人間はそれを乗り越える力があるのだということを、この作品で訴えているように感じた。

そして私たちが春に見ることができる桜は、そんな人生を彩るちょっとしたご褒美なのかもしれない…と思ってしまうのだ。

(C)2021『世の中にたえて桜のなかりせば』製作委員会
(C)2021『世の中にたえて桜のなかりせば』製作委員会

残念ながら、宝田の遺作となってしまった本作だが、岩本との心温まるコンビぶりをぜひこの作品で堪能してほしい。筆者は咲と同じように敬三に癒されたのだが、この作品を観終わったあと、ほっこり温かい気分になる人は少なくないだろう。上映時間は80分。2022年4月1日(金)より、公開となる。

文・咲田真菜

『世の中にたえて桜のなかりせば』

■キャスト
岩本蓮加(乃木坂46)
土居志央梨 郭 智博 名村 辰 柊 瑠美 伊東由美子
徳井 優 吉行和子
宝田 明

■スタッフ
監督:三宅伸行  
脚本:敦賀 零 三宅伸行  
企画・原案:鈴木均  
エグゼクティブプロデューサー:宝田 明

主題歌「蒼空」Produced by 亀田誠治 歌:all at once 作詞:Ra-U ,レオリ  作曲:Ra-U

■公式サイト:https://www.toei-video.co.jp/sakuramovie2022/

製作:埼玉県/SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ TOKYO MX ビーイング 東映ビデオ
製作プロダクション:アルタミラピクチャーズ デジタルSKIPステーション  配給:東映ビデオ

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この記事を書いた人

国家公務員・一般企業勤務を経てフリーランスのライターになる。高校時代に観た映画『コーラスライン』に衝撃を受け、ミュージカルファンとなり、以来30年以上舞台観劇をしている。最近はストレートプレイも積極的に観劇。さらに第一次韓流ブームから、韓流ドラマを好んで視聴。最近のお気に入りはキム・ドンウク。

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