演出家・岡本一馬インタビュー 新作公演『あの鐘の音と共に-THE BELL-』は「いける!」と確信する作品【インタビューVol.12】

岡本一馬

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2022年12月14日(水)〜12月18日(日) 新宿シアターサンモールにて、ACTMENT PARK THEATER Vol.4新作オリジナルミュージカル『あの鐘の音と共に-THE BELL-』が上演される。

このたびオリジナルミュージカルにこだわって公演を続けてきたACTMENT PARKを主宰する、演出家の岡本一馬さんにインタビューを行った。

新作公演が目前に迫り稽古が行われる中、ACTMENT PARKを立ち上げたことへの想いやオリジナルミュージカルにこだわる理由について語っていただいた。

撮影:咲田真菜
目次

ミュージカルが大好き! その魅力を多くの人に知ってほしい

――ACTMENT PARK(アクトメントパーク)を立ち上げた経緯を教えてください。

2017年にACTMENT PARKを旗揚げしました。ACTMENT PARKとは、芝居のACTとAMUSEMENT PARKをかけた言葉を意味する造語です。

もともとミュージカルが大好きだったんですが、自分のまわりにはミュージカルを観たことがある人があまりいませんでした。映画ほど身近な存在ではなかったのです。

だから家族や友人など、自分にとって大切な人にもっとミュージカルを観てほしいし、魅力を知ってほしいという気持ちがあったんです。

この世界に入った当初は、プレーヤーとして活動していたのですが、もともと「こういう世界観の作品を作ってみたい」という気持ちも強く持っていたので、ACTMENT PARKを立ち上げ、レストランシアターでお客様巻き込み型の公演を始めました。

劇場にミュージカルを観に行くとなると敷居が高いと思う人もいると思いますが、レストランだったら行きやすいですし、まずはレストランシアターで楽しんでもらって、ミュージカルに興味を持ってもらえれば…と考えていました。

――最近ではお客様を巻き込む形のステージは増えてきていますが、流行り始める前から岡本さんはやっていたということですね。

そうですね。例えば探偵ものを上演する場合、お客さんひとり一人に「あなたは犯人です」「このキャストがこういうせりふを言ったら叫んでください」というような指示があって、そのシーンになると全員がそれぞれの役割を果たすんです。

それをもとにストーリーが進行していって、お客さんがせりふを言ったりキーワードを言ったりすることで、めちゃくちゃ喜んでもらえました。そうすると次の公演には新しいお客さんを連れてきてくれる…という感じになったんです。

――岡本さんは、どうしてミュージカルが好きになったんですか?

昔、家族でアメリカ旅行に行った時、ディナーショーを見たんです。お芝居あり歌ありというもので、それを見た時「なんなんだ、この世界は!」と衝撃を受けました。そこからミュージカルの映画をよく観るようになりました。

音楽と歌で人の心を表して、しかもそれが観ている人に伝わって揺さぶられるというのが、ミュージカルの醍醐味だと思っています。

芝居も好きなんですけど、それ以上に感動的な場面でドーンと音楽が鳴って、そのメロディに合わせて役者が歌うというパワーに惹かれています。

――影響を受けた作品は?

好きなのは『エリザベート』や『天使にラブソングを~シスターアクト~』ですね。『エリザベート』は、ミュージカルのザ・王道という感じがします。ミュージカルの全てが詰まっている作品だと感じています。

オリジナルミュージカルを作り続ける理由とは?

――岡本さんがオリジナルミュージカルにこだわる理由は何ですか?

日本で上演されるミュージカルの多くが外国で上演されたもので、日本のミュージカル界で活躍している方々がそこに出演されています。もちろん素晴らしい作品ばかりですが、ちょっと寂しい気がしました。

日本のミュージカル俳優たちはすごいのだから、外国作品に出演するだけでなく、日本発のミュージカルがもっともっとあってもいいんじゃないのかと思うようになりました。だったら自分たちで日本発の作品を作っていこうと思ったんです。

――プレーヤーとしてやっていく気持ちはなかったんですか?

もちろん楽しく演じていたし、自分に向いているとも思ったのですが、以前、尊敬している方に「帝国劇場で演じたいんです」と夢を語った時、「キャストとして出演するのではなく、やってみたい世界観があるなら、自分の作品を帝国劇場で上演できるようになったほうが、お前が目指しているものではないか」と言われました。

その時、自分自身が舞台に立ってスポットを浴びるよりも、自分の作った作品がスポットを浴びて僕の大好きなミュージカル俳優の皆さんが演じるところを見るほうが好きなんだと気付いたんです。

――ご自身はどういうキャリアを積んでいたんですか?

僕はずっとサッカーをやっていました。関西選抜に選ばれたり、全国大会に出たりして、自分も周りもサッカー選手になるんだろうなと思っていました。でも甘くはなく、大学へ入った時にこれからの人生でまだやれていないことって何だろうと考えることがありました。

実は、悪役商会の俳優・八名信夫が僕の親戚なんです。その関係で舞台は観た事があり「こういう世界も楽しそうだなあ」と感じていましたから、一度、経験してみたいと思い、今の世界に入りました。

当時は、芝居もミュージカルもあまり分かっていなくて、とりあえずキラキラした歌って踊れる場所に行きたいと思ったんですよ。最初はユニット活動から始まって、歌って踊って、芝居をして…というところからスタートしました。

ちなみに、その頃から応援してくださっている方々も、毎回、ACTMENT PARKの作品を見に来てくれているので、全てが今につながってるんだと思うと、感慨深いですね。

――ACTMENT PARKの公演では、さまざまな場で活躍している人が出演されていますが、キャスティングも岡本さんがされているんですか?

そうです。僕からオファーさせていただく方とオーディションで来ていただく方の2パターンになりますが、僕が最終的に決めています。もちろん制作陣でかなり話し合いはするんですけど、最終的には「この人と仕事をしたい」「この人に、自分の脚本の世界観の中で生きてほしい」と思った方を選ばせていただいています。

撮影:咲田真菜

新作公演『あの鐘の音と共に-THE BELL-』「これはいける!」と確信

――今回の新作公演『あの鐘の音と共に-THE BELL-』もオールオーディションですか?

前回、前々回の公演に出演していただいた方から、何名かはオファーをさせていただきました。でも基本的にはオールオーディションで、今回 B チーム主役の桃菜さんもオーディションで決まりました。

――先ほど稽古場を拝見しましたが、女性キャストが圧倒的に多いですね。どういう感じの作品になりそうですか?

たまたま今日は、女性だけが出てくるシーンの稽古だったんですが、今作は、サントクレアという架空の町が舞台になります。そこで生き抜く人々の話で、主役はエレノアという女性で、Aチームは伊藤里紗さん、Bチームは桃菜さんが演じます。

キャストの皆に言っているのは、あくまでもサントクレアという街を主役にしたい、つまりサントクレアに生きるひとり一人を主役にしたい、ということです。

それを実現するには、その街で生きてる人が華やかで活気づいていて欲しい。それはイコール自分たちが「史上最大かわいい!かっこいい!キュート!生き生きしてる!」と感じるように舞台上に立って欲しいということを言っています。

――初日が迫ってきていますが、稽古は順調ですか?

これで面白くないって言われたら、この先どうしよう…と考えるぐらい自信はあります。これまでの自分の作品は全部大好きですが、今回は特にキャストのエネルギーがバチーンと、ハマったというのがあります。音楽も振り付けもキャストの放つエネルギーも全部がサントクレアという街を彩ってるな…とすごく感じるんですよね。

僕だけがそう思っていたら独りよがりで嫌なんですが、昨日音響さん、照明さんたちが全員入って通し稽古をしたんですけど、音響さんが観ながらぼろぼろ号泣してたんですよ。それを見て「これはいけるぞ」と確信しました。

――号泣する作品というのは、泣きの芝居になりそうなんですか?

夢とクリスマスと希望がテーマの作品なんです。涙は悲しい涙じゃなくて、かっこいい、よかった、幸せという涙ですね。

――歌も迫力がありそうですね。

今回ゴスペルが中心になっているんですけど、マーチ、R & B、 ケルト、ポップスなど、オールジャンルの音楽が入ってきます。

「ここのイメージはこんな楽曲がいい」と、脚本を作る段階で音楽を担当する津村友華さんとすり合わせをしてきました。サントクレアは架空の街ですから、それを彩るにはいろいろな顔を見せたいということで、オールジャンルの曲が散りばめられています。

――音楽担当の津村友華さんは、座付き作曲家なんですか?

明確に「ACTMENT PARK所属や専属」というわけではないのですが、ACTMENT PARKを立ち上げた時に一緒にやりましょうと声をかけて「こういうところを目指してるんです」「こういうところへ一緒に行きたいです」とオファーをしました。

ですので自分の中では、常に脚本と音楽はタッグを組んでいる意識でいます。前作からは、そこに振付のユキジも加わってくれて、今の自分には絶対に欠かせない二人ですね。

――自信作ということですが、アピールポイントを教えてください。

僕が作品を作る上で一番気を付けているのが、誰が見ても分かりやすくて面白いと思ってもらえることです。

ハリウッド映画を研究して同じような作りにしようと思っているので、過去の公演でもミュージカルを観たことがない人が「ミュージカルって、こんなに面白かったんだね」「なんの予備知識もなく行ったけどわかりやすくて泣いた」という感想を言ってくださっています。

今回の公演はその集大成だと考えていて、ミュージカルを観たことがある人はもちろん、観たことがない人にもヒットするストーリー展開と、観たことがある人には「やっぱりこの熱量すごいよね、エネルギーすごいよね」というところで感動してもらえる作品になっています。

――今回上演する新宿シアターサンモールは、大劇場ではありませんから、迫力を感じられそうですね。

新宿シアターサンモールは、個人的に思い出がある劇場です。東京に出てきて最初に出演したのが、新宿シアターサンモールでした。その時は、旗を振るだけの役だったんですけど…(笑)。改めて同じ劇場に戻ってきて、あの時からどのぐらい自分は成長したのかな…という個人的な感動や嬉しさがありますね。

完全オリジナルミュージカルにこだわって、万人に問いかける作品を作りたい

――今後、どんな作品を作っていきたいですか?

誰が見ても分かりやすいというのはもちろんですけど、たとえ設定や時代背景が違っても、誰もが一度は感じたことがある悲しみ、喜び、幸せって何だろうなというところを、万人に問いかけられるような、門戸を広げた作品を作っていきたいです。これからも完全オリジナルミュージカルにこだわっていきたいですね。

――これまでの作品はすべて岡本さんが脚本を手掛けていますが、アイデアは、泉のように湧き出てくるものなんですか?

いや、全然です。掘って掘って掘りまくって、それこそ本当に深い真っ暗な海の中に一人で潜って行って、キラッと光る石を探しに行ってる感じですね。

潜っている時は息苦しくもなるし「見つかるのかな? この世界のゴール」と思いながら書く時もあります。でも海の上で待ってくれてる人がいるんだろうなと思いながら、金の砂を探す感覚で書いてますね

今回の公演でいうと、実際にない街を描くので、登場するキャラクターなどの設定をひとり一人考えて、ピースをつなげていくのがめっちゃ大変だったんです。

「この設定って何なんだろう、何でこの人がここにいるんだろう」という疑問に対して、最後の最後に答えが浮かんだ瞬間に、全てがバーンとハマって一気に書けた感じですね。

みんなに台本を渡すまで20回書き換えましたので、今回は本当に深いところまで潜って行っちゃったという感じがします(笑)。

――改めて公演を観にいらっしゃる方にメッセージをお願いします。

音楽、振り付け、ストーリー、キャストの熱量がすごいというのはもちろんなんですけど、舞台を観に行くという感覚よりは、サントクレアの街を探検しに行くという感覚になれる作品だと思っています。

サントクレアで起こるいろいろな出来事を「この先どうなるんだろう」と、ちょっとした推理気分で観ていただける内容になってるので、もし予想していた通りに展開が進んでいったら「ほらやっぱりそうだ」という喜びがあるし、そうじゃない展開になったら「そうくるの!」という裏切りの喜びみたいなのを感じてもらえると思います。

ちなみに、1回目観る時と2回目観る時で、見える世界が全く違う作りになっているのも、楽しんでいただける一つとなっています。できれば、皆様、1回だけでなく、2回、3回と、サントクレアの街へ探検しに来てほしいですね。

サントクレアという「街」が主役、街に住む一人ひとりが主役というのが大きな見どころの今作、それぞれ観ていただく人の人生、性格によって感情移入するキャラクターも変わってくると思いますので、旅行に行く気分で劇場に来ていただいて、ぜひ作品を楽しんでいただきたいです。

皆様、サントクレアでお待ちしております!

取材・文・撮影:咲田真菜

撮影:咲田真菜
  • 『あの鐘の音と共に-THE BELL-』

公演期間:2022年12月14日(水)~12月18日(日)

会場:新宿シアターサンモール

料金:S席8,300円 A席6,800円 ONLINEチケット5,000円(全席税込)
※未就学児、及び、お一人で座席に座ることのできないお子様のご入場は出来ません。

脚本・演出・作詞:岡本一馬
音楽:津村友華
振付:ユキジ

出演者:伊藤里紗・桃菜 / 豊永阿紀(HKT48) / 大久保圭介 / 小山雲母・花房里枝(elfin’) / 伊藤友惠 / 福田学人 / 鳥羽瀬璃音花and more…

キャスト詳細ページ:https://actmentpark.com/stage/TheBell/cast_and_staff/

主催:株式会社ACTMENT PARK

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この記事を書いた人

国家公務員・一般企業勤務を経てフリーランスのライターになる。高校時代に観た映画『コーラスライン』に衝撃を受け、ミュージカルファンとなり、以来30年以上舞台観劇をしている。最近はストレートプレイも積極的に観劇。さらに第一次韓流ブームから、韓流ドラマを好んで視聴。最近のお気に入りはキム・ドンウク。

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