音楽劇『あらしのよるに』ゲネプロレポート 白石隼也&南野巴那が心温まるオオカミとヤギの友情を熱演

(左から)南野巴那、白石隼也

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2024年8月24日(土)~25日(日)日生劇場において、日生劇場ファミリーフェスティヴァル2024(主催:公益財団法人ニッセイ文化振興財団[日生劇場])にて上演する音楽劇『あらしのよるに』が上演される。

オオカミとヤギという仲良くなるはずのないふたりが「食べる側」と「食べられる側」の関係をこえて友情を育む物語として知られる本作。2024年は原作絵本の出版30周年ということで、新たにオオカミのガブ役・白石隼也、ヤギのメイ役・南野巴那を迎え、再演される。オオカミのリーダー・ギロ役は阿南健治、おばさんヤギに平田敦子が務め、歌、音楽、ダンスがたっぷり楽しめる音楽劇となっている。

公演に先立ちゲネプロ(公開通し稽古)が行われた。2019年初演、2021年に再演し好評を博してきた本作が、新たなガブとメイがどのような舞台を繰り広げているかレポートする。

好奇心旺盛なヤギのメイが、仲間のヤギたちに無鉄砲な行動をたしなめられるところから物語が始まる。仲間たちは、群れを離れてさまざまな場所に行ってしまうメイが、いつかオオカミに見つかって食べられてしまうのではないか…と心配する。そんな心配をよそに、メイの好奇心は果てることがない。

案の定、ある日メイは嵐に巻き込まれ、群れに帰れなくなってしまった。小屋で一晩を過ごそうと身を隠していると、メイと同じように雷を怖がっている誰かがいた。オオカミのガブだ。お互いの姿は見えないのだが、恐ろしい嵐が吹き荒れる中、暗闇の中でお互いの共通点を話し合い、ふたりは仲良くなる。嵐がおさまって、それぞれの群れに帰ろうとする中、「あらしのよるに」を合言葉に再会を約束する。

再会したふたりは、お互いがヤギとオオカミということにとても驚くが「私たちはよく似ている」「一緒にいると楽しい」とさらに絆は深まり、合図を決めて秘密の友だちとして会うようになる。

秘密の友だちという関係を貫こうとしたふたりだが、やがてそれぞれの仲間たちに内緒で会っていることを知られてしまう。ガブはオオカミのリーダー・ギロに「メイと会って、ヤギたちの居場所を聞き出すんだ」と言われ、メイはヤギの仲間の重鎮とみられるおばさんヤギに「ガブと会って、オオカミの弱みを握ってこい」と言われる。

大切な仲間たちからの依頼だが、友だちを裏切ることができないガブとメイは、決死の覚悟で仲間のもとを離れて、ふたりで暮らせる土地を探して旅立つのだが…。

物語の冒頭から、ガブとメイのかわいらしさと純粋さに心が洗われる。ふたりはまさに「食べる側」と「食べられる側」なのだが、そうした本能を乗り越えて「私たちはよく似ている」と楽しそうに遊び、相手に共感する気持ちを前面に押し出す。

ガブを演じる白石は、優しく心地が良い声でハキハキとせりふを言う。端正な顔立ちだが、ガブ独特の「~でやんす」という口調が意外に似合っている。メイに友情を感じながらも時折本能の部分が見え隠れし、メイを見て「美味しそう…」とつぶやくが、「ブルルルルル。友だちを美味しそうって言うなんて…」と我にかえるところがかわいらしい。本当に優しいオオカミなのだ。

メイを演じる南野は、得意のダンスで華麗な身のこなしをみせる。現役の音大生ということで歌声も美しく、白石との声の相性がとても良いと感じた。そしてちょっと無防備すぎないか…とツッコミを入れたくなるメイを天真爛漫に演じている。

そんな純粋なふたりに立ちはだかるのが、種族の違いという壁だった。お互いの仲間から「ヤギは食べるものだ」「オオカミと仲良くするなんて! 仲間がどれだけ食べられたと思っているの!」と言われ、悩むふたりが切ない。

オオカミのリーダー・ギロを演じる阿南は、オオカミの群れを引っ張っているだけあって、凛々しいオオカミぶりだった。本作ではいわゆる悪役の立場なので、ちょっと憎らしい雰囲気はあるが、ギロが言っていることはいたって正論だ。「ヤギを食べなければ俺たちは生きていけない」とガブを説得する場面は、そりゃそうだよね…と納得する。

対するヤギの重鎮であるおばさんヤギを演じる平田も、テレビドラマでみせる圧倒的な存在感を舞台上でみせている。メイに対してオオカミと仲良くすることをたしなめるが、自分たちが平穏に生きていくためにオオカミの弱みを握りたいと思うのも致し方ない。

ガブとメイは必死になってふたりが仲良く暮らせる場を求めて冒険を始め、生命の危機に直面しつつもそれを乗り越えていく。ふたりの固い絆があったからこそ乗り越えられたのだが、弱虫オオカミとバカにされていたガブが、メイを守るために必死で戦う姿に涙する人は多いのではないだろうか。

原作で話の展開が分かっているはずなのに、途中ドキドキしたりワクワクしたりしてしまう。きっと生演奏による美しい楽曲の数々と、出演者全員で舞台を作り上げている臨場感がそういう気持ちにさせるのだろう。第2幕の最初には、生演奏のメンバーも一緒になって舞台に立つところが楽しい。

地方出身の筆者は、高校生の頃に夏休みを利用して東京に遊びに来た際、舞台を観て観劇の魅力にハマっていった。「東京の子たちはこういう作品を身近に観られるからうらやましい!」と思った覚えがある。本作はニッセイ名作シリーズ公演として、小学生を対象とした無料招待公演を秋田、札幌、大阪、高松、熊本の5都市にて実施する。生演奏の迫力と舞台芸術の美しさに触れられる絶好の機会だと思うので、多くの子どもたちに舞台の魅力を感じてほしい。

取材・文・撮影:咲田真菜

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白石隼也 コメント

実にシンプルな舞台セット!俳優たちが森を、風を、雪を、嵐を創り、オオカミとヤギの大冒険が始まります。 今回は約二ヶ月という贅沢な稽古期間をいただき、僕らの『あらしのよるに』を探求することができました。人生は儚いものだからこそ尊いのだと、ガブとメイに教えてもらいました。皆さんも二匹と一緒に大冒険をお楽しみください。

南野巴那 コメント

2024年の音楽劇『あらしのよるに』がいよいよ開幕します!胸がほっとあたたかくなる特別な存在、「ひみつのともだち」のお話です。種族の違う二匹が深い友情をどうやって育んでいくのか、お芝居、歌、踊り、美術、照明、そして生演奏で皆さんと「あらしのよるに」の世界を楽しめること、今から楽しみでなりません。ガブとメイが合図を出し合って会う約束をするシーンがあります。二匹がどんどん仲良くなって、楽しさのあまり歌になる。音楽劇ならではの表現が色んな場面で織りなされていて、どの場面も色んなワクワクが散りばめられています。この夏、劇場に来てくださった皆さまの胸に大切な「ともだち」のぬくもりをお届けできますように。一緒に最高の想い出を作りましょう!

立山ひろみ(脚本・演出)コメント

今回再々演という事で、土台のある状態で新たな出演者を含む新しい座組により、意見を出しあいながら挑戦する事が出来ました。稽古場がとても幸福な実験の場になりたのしくスリリングでした。私自身も開幕がとても待ち遠しかったです。演者の身体をめいっぱい、良質な音楽をめいっぱい!美術や衣装、舞台照明、音響と、舞台の要素をめいっぱい使って、今、目の前にだけ現れる動き出す絵本のような作品が、今回も新しく生まれたと思います。舞台だからこそ出来る表現がたくさんあります。観客のみなさまがいて初めて仕上がるのも舞台のおもしろさの一つ。音楽劇『あらしのよるに』どうぞおたのしみください!!

日生劇場ファミリーフェスティヴァル2024 音楽劇『あらしのよるに』 公演概要

日程: 2024年8月24日(土)・25日(日)11:00/15:00 開演(開場は開演の30分前)
会場: 日生劇場(東京都千代田区有楽町 1-1-1)
料金: <S席>大人5,000円/子ども2,500円
< A席>大人4,000円/子ども2,000円(税込)
※3歳未満入場不可。
子ども料金は、3歳以上中学生以下が対象となります。

上演時間: 約2時間(途中20分の休憩含む)

出演:
ガブ:白石隼也  メイ:南野巴那
ギロ:阿南健治  おばさんヤギ:平田敦子
タプ:木原浩太  バリー:吉﨑裕哉  ミィ:しらたまな
飯嶋あやめ  井口大地  小山雲母  沙月愛奈  須﨑汐理
田中朝子  鶴家一仁  中野亮輔  永松 樹  ⾧谷川 暢
三浦優水香  三田瑶子  宮内裕衣  山﨑まゆ子  山根海音
演奏: 鈴木光介( トランペット) 砂川佳代子( クラリネット) 関根真理( パーカッション) 高橋 牧( アコーディオン) 日高和子( サックス)

スタッフ:
原作:きむらゆういち
脚本・演出:立山ひろみ  音楽:鈴木光介(時々自動)  振付: 山田うん
美術:池田ともゆき  照明:齋藤茂男  衣裳:太田雅公  ヘアメイク:橘 房図  音響:島 猛
演出助手:山田真実  振付助手:木原浩太  舞台監督:八木清市・水谷翔子  制作:荒川藍子
宣伝美術:加藤秀幸・柴田リオ(グラインドハウス)  宣伝写真: 森 康志・曳野若菜
宣伝衣裳:生田志織  宣伝ヘアメイク:橘 房図・きとうせいこ・見目智代
宣伝イラスト: スズキトモミチ
主催・企画・制作:公益財団法人ニッセイ文化振興財団[日生劇場]  協賛:日本生命保険相互会社

◆特設ページ: https://famifes.nissaytheatre.or.jp /2024arashi /
◆チケット購入:
【日生劇場】Web:https://famifes.nissaytheatre.or.jp /ticket/
※当日券は、残席がある場合、開演1時間前から日生劇場窓口にてお取り扱いいたします。

■日生劇場ファミリーフェスティヴァルとは
ご家族で本格的な舞台芸術に触れていただくことを願い 1993 年に日生劇場開場30周年を記念してスタートした、日生劇場ファミリーフェスティヴァル。お子さまにも分かりやすく、また大人の方にも楽しんでいただける、本格的な作品を上演しています。2024年は、物語付きクラシックコンサート『アラジン・クエスト』、パペット・ファンタジー『ムーミン谷の夏まつり』、バレエ『シンデレラ 全2幕』、音楽劇『あらしのよるに』の4作品を上演いたします。
特設ページ:https://famifes.nissaytheatre.or.jp/

■ニッセイ名作シリーズ公演
本作品は、ニッセイ名作シリーズ公演として、小学生を対象とした無料招待公演を実施します。
※学校・学年単位の招待公演です。一般の方の鑑賞はできません。

9月5日(木) あきた芸術劇場ミルハス(秋田県秋田市) 2回公演
9月12日(木)、13日(金) 札幌文化芸術劇場hitaru(北海道札幌市) 4回公演
9月19日(木)、20日(金) NHK大阪ホール(大阪府大阪市) 4回公演
9月27日(金) サンポートホール高松(香川県高松市) 2回公演
10月3日(木) 市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本県熊本市) 2回公演

ニッセイ文化振興財団(日生劇場)は日本生命保険相互会社の協賛により、これからの社会を支える児童・青少年の「豊かな情操」や「多様な価値観」を育むために、多彩なジャンルの優れた舞台芸術に触れる機会を幅広い年代の児童・青少年に無料でご提供する「ニッセイ名作シリーズ」を、日生劇場はもとより全国の劇場で展開し、事業開始からの累計招待者数は800万名を超えています。2024年度は、日生劇場でミュージカル『ジャック・オー・ランド ~ユーリと魔物の笛~』、また、全国で物語付きクラシックコンサート『アラジン・クエスト』と音楽劇『あらしのよるに』を上演いたします。
ニッセイ名作シリーズ:https://www.nissaytheatre.or.jp/outline/business/masterpiece/

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この記事を書いた人

国家公務員・一般企業勤務を経てフリーランスのライターになる。高校時代に観た映画『コーラスライン』に衝撃を受け、ミュージカルファンとなり、以来30年以上舞台観劇をしている。最近はストレートプレイも積極的に観劇。さらに第一次韓流ブームから、韓流ドラマを好んで視聴。最近のお気に入りはキム・ドンウク。

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