イ・ジェフンが命がけの疾走をみせる 映画『脱走』ジャパンプレミアムレポート

(左から)ク・ギョハン、イ・ジェフン、イ・ジョンピル監督

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2025年6月20日(金)から映画『脱走』が、新宿ピカデリー他で全国ロードショーされている。

ストーリー
軍事境界線を警備する北朝鮮の部隊で、まもなく兵役を終える軍曹ギュナム(イ・ジェフン)は、自由を求め韓国への脱走を計画していた。ついに脱北を決行しようとするが、部下の下級兵士ドンヒョク(ホン・サビン)に先を越されてしまい、失敗してしまう。更にギュナムの幼馴染で、保衛部少佐のヒョンサン(ク・ギョファン)は、脱走兵であるドンヒョクを捕まえた英雄としてギュナムに祭り上げられてしまい、前線からピョンヤンへと異動させようとする。迫る脱走のタイムリミットは、たったの2日間。ギュナムは、ヒョンサンの目を盗んで再び軍事境界線を目指して、決死の脱出を試みるが、予期せぬ困難が立ちはだかる! 果たしてキョナムは、生き延びることが出来るのか!?

命がけの脱北を試みる軍人・ギュナム役を、「シグナル」「復讐代行人~模範タクシー~」で人気のイ・ジェフンが熱演する。

主人公を容赦なく追撃する軍少佐ヒョンサン役を、「D.P. -脱走兵追跡官-」のク・ギョファンが演じており、エリート軍人の葛藤を見事に表現する。

さらに、『このろくでもない世界で』のホン・サビンや、「ナビレラ -それでも蝶は舞う-」で人気急上昇中のソン・ガンが、ヒョンサンの人生に決定的な影響を与えるキーパーソン役として出演を果たしている。

映画公開に先立ち、6月17日(火)新宿・ピカデリーにてジャパンプレミアイベントが開催された。抽選応募で当選した観客が詰めかけた会場に、イ・ジェフン、ク・ギョファン、イ・ジョンピル監督が登壇……するはずが、舞台に現れたのはイ・ジョンピル監督のみ。

MCを務めた古家正亨氏が監督に向けて「監督! イ・ジェフンさん、ク・ギョファンさんがいませんが、脱走しちゃいましたか?」と問いかける。戸惑い気味に「わかりません…」と答える監督だが、「ここだよ!」と日本語で叫ぶ声が!そちらを見るとイ・ジェフンとク・ギョファンが笑顔で手を振っていた。思いがけず客席から韓流スターが登場し、会場は熱気に包まれる。

舞台に登場したイ・ジェフンが「はじめまして、私はイ・ジェフンです。よろしくお願い致します」、ク・ギョファンは「こんにちは、ク・ギョファンです」、イ・ジョンピル監督「私はイ・ジョンピル監督です。Thank you very much」と挨拶をすると、大きな拍手に包まれた。

イ・ジェフン(撮影:咲田真菜)

2024年のファンミーティング以来の来日となったイ・ジェフンは、「撮影やファンミーティングでは、日本に訪れていましたが、映画公開に合わせて来日するのは初めてです。劇場で皆さんにお会いできて、とてもワクワクしています。客席をいっぱいにしてくれて、本当にありがとうございます。夢のようです」と観客に向けてお礼の言葉を述べた。

ク・ギョファン(撮影:咲田真菜)

2019年に開催された大阪アジアン映画祭以来の来日となったク・ギョファンは、「日本の観客の皆様にご挨拶ができ、そして映画をお届けできて、とても嬉しいです。皆さんにとってステキな時間になってくれると嬉しいです」と、はにかむような笑顔を見せながらコメントした。

イ・ジョンピル監督(撮影:咲田真菜)

イ・ジョンピル監督は、「2か月前に札幌に行ったんですが、行ったことは無いのですが寒さが北朝鮮と似ているのかなと思いました。今日東京に来ましたが、暑くてちょっと違うなと感じました。映画は疾走感があり、スピーディーに展開されますので、皆さん楽しんでいただければと思います」と笑顔で語った。

ここからは、事前にSNSで募集した質問コーナーに入った。本作は、イ・ジェフンが脱北を目指してひたすら走るシーンが多い。さぞかし辛い撮影だったのではないかと考えたファンから多く寄せられた質問は「撮影で辛かったり、大変なシーンで脱走したくなったときはありますか?」というもの。キャストそれぞれが、ネタバレを避けて語った。

イ・ジェフンは「タイトルにもありますように、ある場所から抜け出すための瞬間が描かれています。とにかくずっと走り続けているんですね。走っている瞬間は、今にも息が止まりそうなんです。このまま息が止まってしまうのではないかと思う瞬間が、ずっと撮影中ありました。まるで自分の限界を突破している様な、そんな瞬間が多かったんです。脱走者として捕まってしまえば、それは死を意味します。とにかく生きるために、走り続けていたんです。私を撮影するために車で追いかけてきたんですけど、その車に負けてたまるかと全速力で走るんです。でも 2本足でずっと走り続けていくわけですが、車より早く走ろうとは思っていても、それは難しいことでした。本当に極限・限界に挑戦しながら、ずっと走っていました。その時の感情というのが、この映画にしっかりと込められていると思います。あんなにも大変な思いをして、息が止まりそうな思いを抱えながら全力疾走した作品は、僕にとって最後になるんじゃないかなと思っています」と語り、過酷だった撮影エピソードを語った。

一方で、エリート軍少佐ヒョンサン役のク・ギョファンは「イ・ジェフンさんが、自分の限界を突破して走り続けている時、私は車の中にいながら、ずっと撮影をしていました。あまりにも申し訳なくて辛かったです」とコメントしながら、手でハンドルを握るパフォーマンスをしていた。

映画では敵対するが、とても仲が良いク・ギョファン(左)とイ・ジェフン(撮影:咲田真菜)

今、この場から脱走したいほど日本に来て行ってみたい場所ややってみたいことは? との質問にイ・ジョンピル監督は「沖縄に行ってみたいと思います。私は映画監督ですので、人がどのように暮らしているのか、生きているのか気になるんですね。そして観客の皆さんのお家に行ってみたいです(笑)」と答え、笑いをとった。

ク・ギョファンは「古風なカフェに立ち寄って、そこで時間をずっと潰しながら、街中歩いている人たちをずっと眺めてみたいです」と、いかにも彼らしいアートな表現をした。

イ・ジェフンは「昨年撮影で静岡に訪れていて、今年は福岡、長崎、奈良に訪れており、長く撮影で滞在していました。考えてみますと、撮影や仕事で辛くなったり、何か息苦しくなったりした時には、いつも日本のことを考えていたような気がします。馴染みのある場所ですし、一言で言えば、日本はパラダイスのような場所です。なぜならばどこに行っても、コンビニがあるからです」とのコメントに会場中がわいた。

カメラ目線でおどけた表情をしてくれたイ・ジェフン(撮影:咲田真菜)

ここでイ・ジョンピル監督は補足をしたいと言い「我々は映画制作人なので、本当に映画が大好きなんです。この『脱走』を完成させて到着した場所、たどり着いた場所というのは、まさにこの映画館です。観客の皆さんの前に立ちたかったので目的地にたどり着いたという感じです。これ以上脱走したとしても、他の所に行きたいとは思いません」と見事なコメントをし、会場から大きな拍手が沸き起こった。

MCの古家氏が「監督、さすがです! 補足がなければ沖縄で終わっていましたからね」と語りかけると、照れたように笑う姿が印象的だった。

この後、サプライズ演出で俳優・竹中直人氏からのコメントが映像で届けられた。イ・ジェフンと交流があるという理由で今回メッセージを送ってくれたという。

イ・ジェフンは、「詳細なお話はできないですが、近いうちに皆さんにご覧いただける、とある作品で共演をさせていただきました。小さい時に『Shall we ダンス?』という作品で、初めて竹中直人さんのことを知りました。『のだめカンタビーレ』といった数多くの映画やドラマの出演作を拝見してきました。いつも竹中さんの演技を見ながら、お腹を抱えながら笑っていたんです。私たちに喜怒哀楽を伝えてくれる俳優さんだと思っていて、とても印象深い方です。そんな憧れの竹中さんと共演できて、とても不思議な感覚を覚えましたし、現場では笑いが絶えませんでした。ぜひ皆さんもこの作品に期待していただければと思います。また映画『脱走』をご覧いただき、サプライズメッセージをお送りいただけたことを、心から感謝申し上げます」と感謝の言葉を述べていた。

イベントも終わりの時間が近づき、3人に対して日本の観客に向けたメッセージを求めた。

イ・ジェフンは「日本の劇場で皆さんとお会いできて、私はこの時間を一生忘れることができないと思います。いつも旅行をしていろいろな国に行くたびに、現地の映画館に行っているんですね。東京でも、これまでインディペンデント系の映画館やシネコンにも伺いました。映画館を訪れる度に、“いつかこの映画館で、自分の作品が上映されたらどんなにステキだろう”と思っていました。劇場のストアに出演映画のパンフレットが並んでいたり、映画を見るために足を運んでくださっているお客さんがいたり…。これほど大きな幸せな瞬間というのは、実際にあるんだろうかと考えていました。まさに今この瞬間、その夢が実現しました。本当に本当にありがとうございます。とても幸せに思います。ぜひ皆さんには、映画『脱走』を楽しんでご覧いただけたら嬉しいです。そして映画を、たくさん愛していただけたら嬉しいです。皆様どうかお元気でずっと幸せに暮らしてください。ありがとうございます」と優しさがあふれるコメントを残してくれた。

ク・ギョファンは、「ある場面を映像で記録することがありますが、目で記録して忘れられない瞬間というのもあると思います。まさにこの瞬間を僕はずっと記憶して、思い出として残したいと思います」と語り、カメラのシャッターを押すジェスチャーをしながら可愛らしい声で「カシャッ」というと、会場からうわ~かわいいとの声が上がった。

イ・ジョンピル監督は、「この映画は、北朝鮮の人が主人公だと思って見始めているうちに、観客の皆さん自身の物語でもあることを感じて欲しかったです。国籍やイデオロギーを超え、幸せを求めて暮らす人々に向けて、メッセージを伝えたいと思いました。皆さんは本当の幸せを求めて、“脱走をしている脱走者”だと私は思っています。足を運んでくださいまして、ありがとうございました」と作品をアピールした。

ハートマークを作るク・ギョファン(左)とイ・ジェフン(撮影:咲田真菜)

このあとのフォトセッションでは、笑顔でハートマークを作るなど、和やかな雰囲気で行われた。このあと3人は客席を練り歩きファンサービスをしてイベントは終了した。

筆者はイ・ジェフンとク・ギョファンのサービス精神旺盛な姿に驚いた。イ・ジェフンは「フィンランド間借り暮らし」で見せた素の姿から、きっとフレンドリーな方だろうと思っていたが、まさにそのとおり。カメラを向けると何度もカメラ目線で笑顔を見せてくれるのは、長いライター生活でない経験だった。

そしてクールで癖のある役を演じることが多いク・ギョファンは、良い意味でギャップがあった。会場に集まったファンを優しく見つめるところや、イ・ジェフンとの仲の良さを見ていると、プライベートでは本当に優しい「ヒョン」なのだと感じた。

映画『脱走』は、90分間息つく暇もないぐらいの疾走感で物語が展開していく。イ・ジョンピル監督が言うように、本当の幸せを求めて脱走をするイ・ジェフンとク・ギョファンがたどり着く先を見届けてほしい。

取材・撮影・文:咲田真菜

(左から)ク・ギョハン、イ・ジェフン、イ・ジョンピル監督(撮影:咲田真菜)
目次

映画『脱走』

2025年6月20日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー

監督:イ・ジョンピル『サムジンカンパニ―1995』

出演:
イ・ジェフン「復讐代行人~模範タクシー~」
ク・ギョファン「D.P.-脱走兵追跡官-」 
ホン・サビン『このろくでもない世界で』
ソン・ガン「ナビレラ〜それでも蝶は舞う〜」 

挿入歌「ヤンファ大橋」:Zion.T

2024年/韓国/韓国語/カラー/94分/シネスコ/5.1ch/原題:탈주/字幕翻訳:朴澤蓉子/提供:ツイン、Hulu/配給:ツイン
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公式HP:dassou-movie.com
公式X:@dassou_movie

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この記事を書いた人

国家公務員・一般企業勤務を経てフリーランスのライターになる。高校時代に観た映画『コーラスライン』に衝撃を受け、ミュージカルファンとなり、以来30年以上舞台観劇をしている。最近はストレートプレイも積極的に観劇。さらに第一次韓流ブームから、韓流ドラマを好んで視聴。最近のお気に入りはキム・ドンウク。

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