比嘉愛未インタビュー「誰もがきっと心に響くシーンがあると信じています」映画『親のお金は誰のもの 法定相続人』【インタビューVol.20】

比嘉愛未(撮影:友澤綾乃)

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2023年10月6日(金)より、映画『親のお金は誰のもの 法定相続人』が全国ロードショー公開される。

三重県・伊勢志摩を舞台に「相続」と「家族」をテーマにした本作は、母親の再婚相手と折り合いが悪い大亀遥海(比嘉愛未)と幼い頃から男にだらしない母親を憎んできた弁護士の城島龍之介(三浦翔平)が、大亀家で起こった相続問題で出会い、騒動に巻き込まれていく様子を描く。

2000年に施行された成年後見制度の問題点を描くなど、私たちにとって身近な問題に鋭く切り込み、笑いと涙で長年わだかまりを抱えていた家族が和解していく姿をみせていく。

このたび、大亀遥海役を演じた比嘉愛未さんにインタビューする機会に恵まれた。一見固い内容に思える本作になぜ出演を決めたのか、熱い想いを語ってくださった。

比嘉愛未(撮影:友澤綾乃)

「許しと愛」がテーマの作品で感じたことは?

――『親のお金は誰のもの 法定相続人』は、タイトルから固い作品に思えました。本作へ出演を決めたきっかけは何ですか?

比嘉愛未(以下、比嘉):脚本家の小松江里子さんが、私のデビュー作となったNHK連続テレビ小説『どんど晴れ』の脚本を書かれていて、そのご縁でずっと仲良くさせていただいていました。ただ、なかなかお仕事でご一緒する機会がなかったんです。ずっと「一緒に作品を作りたいね」という話はしていたんですが…。

そうしたら「いよいよ実現できそうだよ。愛未ちゃんで作りたい作品がある」と小松さんからお話があり、それが本作でした。田中(光敏)監督と小松さんがタッグを組むということで、私は台本をいただく前に「小松さんの作品だったらやります」とお答えしました。

その後台本をいただいて、テーマが盛りだくさんの作品なので、どう映像化するのかなと感じました。出演者がどのように演じていけば調和が取れるんだろうと。ジェットコースターのように進んでいく作品ですからね。

親子の確執、家族問題、成年後見制度の難しさなど、描いているテーマはものすごくディープです。そんな作品を田中監督は、静かで丁寧に世界観を描いていたと思いきや、急にドタバタコメディになって出演者が踊り出したり、そうかと思ったら最後は親子の絆が深まって感動したり…。作品が出来上がってすべて繋がったときに、全く想像できなかった世界観が広がっていて、とても刺激的でした。

――比嘉さんご自身もどういう作品になるか、想像できなかったんですね。

比嘉:もちろん物語の流れは全部把握していましたが、役者たちが命を吹き込んで、どういう相乗効果があるのかは想像できなかったですね。映画は自分の努力だけでできるものではないので、チームワークがどう作用するのか、特にこの作品では予測ができなかったです。

――W主演の三浦翔平さんとの共演は、いかがでしたか?

比嘉:翔平さんが演じる弁護士の城島龍之介と私が演じる遥海は、最初から最後まで対立しますが、2人は基本的に似てるんですよ。親への確執を抱えてて、2人ともそれによって自分らしい生き方をしてきませんでした。遥海は母親が亡くなったことをきっかけに故郷の三重県・伊勢志摩に戻って、そこで2人は出会います。

遥海は、三浦友和さんが演じる義理の父を憎んでいましたが、素直になって思いを伝えたときに、やっと彼女の人生が動き出します。翔平さんが演じる弁護士の城島もそんな遥海に影響されるんですよね。素直になれず、過去に蓋をしてしまったから問題解決できなかったのだと、城島自身も気付くのです。遥海を演じながら、城島を演じる翔平さんを見てすごく勉強になりました。

監督は、この作品は「許しと愛がテーマ」とおっしゃっていました。親子だから本音でぶつかって喧嘩しますし、甘えがあるので衝突が起きます。実は許し合うことができた流れの先に、本当の愛が生まれるんじゃないかと思いました。お互いに素直になって許し合えた心地良さが、安心感と愛情に変わっていくんだなって。監督はこの作品で、それを一番伝えたかったんだろうと思います。

――最後、比嘉さんと三浦友和さんの別れのシーンが、許し合った流れの先を描いていると感じました。自分に重ね合わせて涙する人もいらっしゃると思います。

比嘉:まさにそういう気持ちになっていただきたいんです。

比嘉愛未(撮影:友澤綾乃)

遥海のことが分かり過ぎて苦しい想いも…

――比嘉さんが演じる遥海に共感する人は多いと思いますが、演じる上で大変だったことはありますか?

比嘉:今回は役作りがものすごく難しかったんです。なぜなら、遥海は心を閉ざしているのでせりふ量が少ないですし、表情と空気感で表現しなければならない描写がありました。遥海が変わっていく姿をどう表現するのかが課題の一つでした。

そしてもう一つは、遥海の抱えてるトラウマや確執に近いものを私自身も経験していて、遥海のことが分かり過ぎて、自分の過去を掘り返す作業が苦しかったです。

高校時代、このお仕事を目指して上京したいと言ったとき、親に大反対されました。親子の縁を切るとかそこまでではなかったですが、子どもながらに「なんで私の夢を応援してくれないの!」とすごく思ってたんです。

半ば強制的に両親を説得して上京し、「絶対頑張る」というエネルギーが功を奏して、今こうしてお仕事をさせていただけるのですが、大人になった今だから分かることがいっぱいあります。あのとき両親が反対したのは、私を縛りたいのではなく愛があったからなんですよね。時間がかかりましたが、今では両親と良い関係性と距離感を保てています。

遥海を見てると、苦しかった時の自分と重なるんです。人間ってトラウマや傷、思い出したくないことに蓋をして、経験を積み上げていくじゃないですか。今回の役作りは、つらい経験をもう1回引っ張り出すような作業でした。

――演じる役に共感しすぎてしまうというのも、大変なんですね。

比嘉:遥海は「私は母親に捨てられた」と思っていたので、私のパターンとはだいぶ違いますけどね。でも遥海が「捨てられた」と思っていたことは、何年もかけて実は間違いだったと彼女は真実にたどり着きます。そこで思ったのは、真実は自分が見ることだけでなく俯瞰で物事を見ることで気付くことがあるんだなと。

この作品は、親子関係を主に描いていますが、実は人間関係にも当てはまると感じました。親子ですら分かり合うことは難しいのだから、周りの人に自分の価値観を押し付けたり、決めつけたりしてはいけないと思いました。もちろん自分の意思は大事ですけど、許し合って、相手を本当の意味で受け入れられたら、もっと生きやすくなるのではと思います。

比嘉愛未(撮影:友澤綾乃)

何を感じるのか、観る人にすべてを委ねた

――最後、三浦翔平さんと伊勢志摩の海を見ながら語り合う場面で、遥海のせりふに説得力がありました。お二人は今作ではやり取りが少なかったので、貴重なシーンでしたね。

比嘉:そうなんです。最後のシーンが、翔平さんと向き合った数少ないシーンだったと思います。

この作品は、翔平さんが演じる弁護士の城島の単独の描写が多かったし、遥海自身も単独の描写がたくさんありました。だからこそ出来上がった作品を観た時、すごく新鮮でした。自分が見た景色と彼が作り出した世界観が上手く混ざり合っていたんです。

馴れ合いじゃなくて、お互いに頑張ってきたものが、やっと最後のシーンで一緒になった感じがしました。良い作品を作るために一緒に頑張っていこうと手を取り合うのとはまた違う、こういう形の助け合いってあるんだと刺激的でした。

――三浦さんとのシーンは、最後に撮影されたのですか?

比嘉:最後の日に撮影しました。あのシーンのせりふは、私も生半可な気持ちや小手先で絶対に言えないと感じましたし、困難を乗り越えた人でなければ言ってはいけないと思いました。そうでなければ、彼に響かないと思うので、田中監督もそこにすごくこだわっていました。

比嘉愛未(撮影:友澤綾乃)

――伊勢志摩のロケはどのぐらいかけて撮影したのですか?

比嘉:1ヶ月ほぼ行きっぱなしで撮影しました。伊勢神宮は行ったことがあったんですけど、伊勢志摩は初めてでした。(自身の出身地である)沖縄と同じ海ですけど、また違う魅力がありました。山や島々が連なっている感じが見たことない景色で、とても静かなところです。

1ヶ月いた印象としては、ずっと変わらない景色を守りながら、海、島、人の全部が、無理なく調和してる感じで心地良かったです。ご飯もすごく美味しかったですね。素材が生き生きしているなと感じたので、環境って大事だなって思いました。

――この作品でアピールしたいところは、どんなところですか。

比嘉:観る方にすべてを委ねたいです。観る人それぞれの家庭環境、境遇、価値観があると思うので、きっとどこか心に響くシーンがあると私は信じています。「この作品はこうです!」とアピールする作品もありますけど、この作品は、観る方に寄り添いたいと思います。

成年後見制度の問題も提示してますし、相続や親子関係の難しさもテーマですが、それを全部受け止めなくてもいいと思います。例えば先ほどお話に出た、最後に、遥海と遥海の義理の父親が手を振る姿を見て、親に「会いたい」と思ったり思いを馳せたりするだけで、何かが変わると思うんですよね。もっと言えば「会いに行こうかな」とか、行動することで、親子の絆がまた深まるかもしれないですし…。何かポンと背中を押してくれる作品になっていると思います。

――この作品は、遥海のお姉さんを演じる松岡依都美さんと山崎静代さんなど、人間味のある人の姿を率直に描いているところもいいですよね。

比嘉:お二人ともかわいいですよね(笑)。絶対に必要なキャラクターですし、観る方の中には、お二人に共感する人もいらっしゃると思います。

出演者の皆さん全員が、お芝居を楽しんでいる感覚もこの作品のアクセントになっているんですよ。私や翔平さんの役ではそんなに弾けられなかったので、出演者の皆さんが作品の士気を上げてくれたのが本当に良かったです。

――最後にファンの皆さんにメッセージをお願いいたします。

比嘉:遺産相続の問題と思ってしまうと「ちょっと難しいのかも」と感じるかもしれませんが、全然そうではありません。この作品は、お金や親がきっかけになりますが、自分自身を許して愛してあげることが大事だよと言っていると思います。親の目線、子どもの目線、どちらで観ても何か共鳴してもらえる作品です。ぜひ劇場でご覧ください。

取材・文:咲田真菜
撮影:友澤綾乃
ヘアメイク:AYA
スタイリスト:後藤仁子

比嘉愛未(撮影:友澤綾乃)

映画『親のお金は誰のもの 法定相続人』

監督:田中光敏
脚本:小松江里子
主題歌:ビッケブランカ「Bitter」(avex trax)

出演:比嘉愛未 三浦翔平 浅利陽介 小手伸也 山崎静代 松岡依都美 田中要次
デヴィ夫人 内海崇(ミルクボーイ) DRAGONGATE
石野真子 三浦友和

エグゼクティブプロデューサー:橋爪吉生 
プロデューサー:東 友章 臼井正明 
アソシエイトプロデューサー:毛利万里

撮影:朝倉義人(J.S.C) 美術監督:若松孝市(A.P.D.J) 美術デザイン:神田 諭 (A.P.D.J)  装飾:柳澤 武 照明:守利賢一 録音・整音:藤丸和徳 編集:川島章正 スクリプター:松澤一美 題字:木積凜穂

協 賛/リファインホールディングス バッファロー イオン 三重県Honda Cars 麻布十番はなぶさ ネクイノ
後 援/三重県 志摩市 伊勢市 鳥羽市 南伊勢町 明和町 玉城町 度会町  協力/伊勢志摩コンベンション機構 伊勢志摩フィルムコミッション 

製作プロダクション:KickSmash21 クリエイターズユニオン 制作協力:シネムーブ 宣伝配給:イオンエンターテイメント ギグリーボックス

製作:「法定相続人」製作委員会(伊勢志摩活性化プロジェクト KickSmash21 エイベックス・ミュージック・クリエイティヴ クリエイターズユニオン 中京テレビ放送)

文化庁「ARTS for the future!2」補助対象事業

(C)2022「法定相続人」製作委員会

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この記事を書いた人

国家公務員・一般企業勤務を経てフリーランスのライターになる。高校時代に観た映画『コーラスライン』に衝撃を受け、ミュージカルファンとなり、以来30年以上舞台観劇をしている。最近はストレートプレイも積極的に観劇。さらに第一次韓流ブームから、韓流ドラマを好んで視聴。最近のお気に入りはキム・ドンウク。