ミュージカル『アニー』藤本隆宏、須藤理彩、愛原実花 インタビュー 【インタビューVol.34】

(左から愛原実花、藤本隆宏、須藤理彩)

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2025年4月19日(土)~ 5月7日(水) 東京・新国立劇場 中劇場にて、丸美屋食品ミュージカル『アニー』が上演される。本作は、1977 年にブロードウェイのアルヴィン劇場(現ニール・サイモン劇場)で誕生したミュージカル。以来世界各地で上演され、現在は米国各都市でのツアー公演が行われている。日本公演は1986 年、日本テレビが主催で上演をスタートして以来、約196 万人もの人たちに心温まる深い感動を与え続けている国民的ミュージカルとなった。今年、アニーは40 年目を迎える。

今年も演出は、テンポが良く現代的な演出で好評を博している山田和也が手掛け、主役のアニー役 は丸山果里菜(まるやま・かりな)小野希子(おの・きこ)、新生アニーの2 人と元気いっぱいな子どもたちを支える大人キャストに藤本隆宏、須藤理彩、愛原実花、赤名竜乃介、浜崎香帆といった豪華なメンバーが集結した。

このたびアニーの運命を大きく変えるウォーバックスを演じる藤本隆宏さん、アニーをいじめる孤児院院長・ハニガンを演じる須藤理彩さん、ウォーバックスの秘書・グレースを演じる愛原実花さんに、製作発表会が終わった直後にお話を伺うことができた。昨年に引き続き出演する藤本さん、須藤さんと今回初参加となる愛原さんが、本作への意気込みを笑いの絶えない雰囲気の中、語ってくださった。

――まずは製作発表会が無事に終了した今のお気持ちをお聞かせください。

藤本隆宏(以下、藤本):「始まるんだな」という気持ちと今年は40年目だからなのか、今日の製作発表会は昨年に比べるとピリッとした感じがしましたね。

須藤理彩(以下、須藤):ピリッとした雰囲気の中、一人だけふざけちゃいました(笑)。和気あいあいを合言葉に、みんなと一緒に「エイエイオー!」という気持ちで向かったので…。昨年から引き続いて出演するのが藤本さんと私の2人だけで、アニーの2人をはじめとした子どもたちと大人キャスト3人が初めてです。でも製作発表会が始まる前からキャスト同士でいろいろなお話をさせていただいて、いい雰囲気でステージに向かうことができました。

愛原実花(以下、愛原):製作発表会の前に皆さんとお話をさせていただいて、かなり緊張がほぐれました。そして製作発表会でアニー2人の「Tomorrow」を聞いて、感動でうるっとなってしまいました。

須藤:私も2人の歌唱を聞いて「スタートがこのレベルなのか…」とびっくりして、少しプレッシャーがかかりました。本当に素晴らしかったです。

藤本:アニーを演じる2人は、今春5年生になるんですよね。どちらかが1歳年上だったり、身長差があったり、声質が違ったりするんですが、今年は良い意味で2人とも幼い感じがして、アニーが歌う「Tomorrow」がぴったりなんですよ。

――藤本さんと須藤さんのお二人が続投ということで、続投にあたっての意気込みをお伺いしたいのと、愛原さんについては宝塚の先輩方が演じられてきた役を演じるにあたっての意気込みをお聞かせください。

藤本:8回目のウォーバックス役ですが、こうして続けてオファーをいただけるのはすごくありがたいことです。とはいえ、ずっと続いてきた歴史のある作品なので、それを継続していくためにどうするかを考えています。毎年アニーが変わりますから1回1回が新鮮な気持ちでやらなければいけない作品です。そういう気持ちを常に持って演じていきたいです。

須藤:去年は私が新たに入るということで「この人はどれくらいできるのかな」という気持ちが皆さんの中にあったと思います。昨年に引き続いて出演させていただけるのは、ある程度お墨付きをいただいたからこそだと思いますので、それを超えなければいけないプレッシャーがあります。

去年は最後まで、ハニガン、ルースター、リリーの3人で歌う「イージーストリート」のハーモニーがなかなかうまくはまらなかったんです。この曲は、それぞれ違う音程なので、すごく難しいんですよ。千秋楽のステージに立つ直前まで音合わせをして、課題を残してきました。

公演が終わってすぐにボイストレーニングを始めて、どこまで自分が成長しているのか実際に歌ってみなければわからないのですが、一つ段階を上げていくための努力をして準備をしてきました。去年よりもパワーアップできる武器を増やしたいと思っています。

――昨年の須藤さんのハニガンを拝見しましたが、とてもナチュラルですごくよかったです。

須藤:本当ですか? ありがとうございます! 手探りの状態だったんですが「こういうハニガンをやりたい」という目標を決めずに真摯に台本と向き合いました。そして子どもたちと一緒にアイデアを出しながら役作りをしていきました。

例えば子どもたちが、いきなりちょっかいを出してきたりするんですよ。そうすると(演出の)山田さんが「今のいいね! タイミングをもうちょっとずらしたら絶対ハニガンさんやり返してくるから」と子どもたちにアドバイスをして、芝居を広げてくれました。今年はまた違うアイデアがでてくると思うので、新しいハニガンが生まれたらいいなと思います。

――愛原さんは、出産後の復帰作ということで、どのようなお気持ちで臨まれますか?

愛原:より多くの子ども達に見てほしいミュージカル『アニー』に参加させていただくことで復帰できるのが、本当に幸せだと改めて思いました。

――どんなグレースを演じたいとお考えですか?

愛原:多くの宝塚出身の方々が演じられてきた役であり、歴代のグレース役の皆さんが練り上げて来られた役だと思いますので、バトンをしっかりと受け止めて演じつつ、皆さんにご相談しながら私らしいグレースをいきいきと演じていきたいと思います。そして何よりアニーが一番魅力的にみえるように寄り添い、支えるグレース役を作れたらと思っています。

須藤:ハニガンとグレースは最初から対峙しますが、意外にハニガンはグレースに踊らされるんですよね。本来だったらハニガンは誰に対しても「なんだよ!」みたいに突っかかっていく雰囲気がありますが、グレースは上手くかわして、あっという間にアニーを連れて行ってしまいます。敏腕秘書で、一番芯の強い方かもしれないです。

―――藤本さんと須藤さんからみた愛原さんの印象、そして愛原さんから見たお二方の印象をお聞かせいただけますか?

須藤:今回愛原さんとは初共演なんですが、愛原さんに対して真面目な印象があったんですが、なんというか…(言葉を選びながら)

藤本:言いたいこと、分かるよ(笑)。

須藤:はい! 言葉を選んで言いますよ(笑)。こっち寄りでした!(笑)。これで伝わりましたか?

藤本:(笑)一緒ですね! 僕はNHKのドラマでご一緒したことがあって、同じシーンはなかったのですが、ご挨拶させていただきました。でもこうやってきちんと話すのは初めてで…。

愛原:ポンコツです(笑)。

藤本:(笑)ホッとしました。

須藤:なんだか楽しくなりそうですよね。

――グレースのイメージとはちょっと違う雰囲気を愛原さんは持っていらっしゃるんですね。

須藤:そうですね。

藤本:でも舞台に立ったら分からないですよ。ビシッとなって「立ち位置が違いますよ」「音が外れていますよ」とおっしゃるかも(笑)。

須藤:「ここの間、取り過ぎていますよ」とかね。怖い!(笑)。

――お二方からこのようなお話がありましたが、愛原さんはいかがですか?

愛原:私は一方的にお二人のことを見ていましたので、今日は本当に緊張していたんです。舞台って今まで積み重ねてきたものがお客様に一瞬で伝わりますし、子どもも犬もいる舞台で、復帰作ということに不安はありましたね。でもお二人と楽しくお話できてホッとしたところに、アニー2人の「Tomorrow」があったので、涙腺が緩んでしまいました。

須藤:お母さんになって聞く「Tomorrow」は、全然違いますよね。もちろんアニーの2人はプロの役者だからなおさらというところもありますが、子どもが持つピュアな声って魅力があるしすごい力になります。実際に母になってそれをすごく感じるようになりました。

――今年のアニーお二人に対して、期待することや楽しみなことは何でしょうか?

藤本:ピュアなままで演じてほしいと思います。それくらい純粋な感じがしますし、舞台慣れしてないところが良い魅力として出ているからです。先ほどの製作発表会でも、2人が緊張しているところが良かったですよね。我々もそういうところを大事にしながら2人に接して、作品を作り上げていきたいと思います。遠くから見守るような感じでやっていきたいです。

須藤:私は、山田さんの演出と稽古場の空気の作り方がすごく好きなんです。山田さんの中で「これはやってほしい」という決まりごとはあるんですが、例えば「こういうことをやりたい」といえば、まずやらせてくれる方です。それを見て「これはハマったね」とおっしゃる時もあれば「キャラクターから外れちゃったね」とおっしゃる時もあります。

大人キャストだけじゃなくて、子どもたちにも同じように接してくださいます。子どもたちもやらされているということより、自分たちで積極的に役を作ってる雰囲気があります。

私は子どもたちと接する機会が多いので、自由さや緊張感の中でものびのびとやれる環境を、私も提供できたらと思います。

愛原:宝塚音楽学校の時に、演劇の先生に言われてすごく心に残っているのが「どんなに大人がいい芝居しても、出てきたら負けちゃうのは犬と子どもだよ」という言葉です。アニーは子どもも犬も出ていますので、そういう意味では、ただ居てくれるだけで幸せな作品ですよね。私も居てくれるだけで幸せだという環境を一緒につくっていけたらと思います。

藤本:アニーのお二人に期待することに加えて、須藤さんの話もしますが、須藤さんって素敵なんですよ。アニーに出演している人は、ミュージカル経験者だったり、私も含めミュージカルで育ってきた人だったりが多いんです。そうすると、どうしても型に囚われて芝居してしまうのですが、須藤さんはそうじゃなくて、ハートで芝居をする方です。野球でいうと、最初は170キロくらいで投げるものの、コントロールが悪い感じなんです。

須藤:(大爆笑)

藤本:ところがだんだんそれがストライクゾーンに入ってくるので、山田さんも目から鱗だったようです。須藤さんは型にとらわれないハニガン像を作られたので、我々も楽しかったし、そういう雰囲気になったところが素晴らしかったですね。

須藤:ハニガンは、他のキャストと住む世界が違うギャップが上手くハマったと思います。それこそ「N.Y.C」のように、みんなでうわーっと盛り上がり、お客さんもうわーって拍手しているのが、見ていて羨ましかったです。

私が演じているハニガンをはじめとして、ルースターとリリーは、3人で頑張ってもそこまで盛り上げられません。でも私たち3人には底辺の世界で生きている闘争心がありますから、そこがうまくハマったと思います。

実は歌の稽古の時に、山田さんや歌唱指導の先生に「上手くなられちゃうとキャラクターが崩れちゃうから上手くならなくていい」って言われたんですよ。ハニガンさんの乱暴さが消えてしまいそうだから…って。

藤本:須藤さんは、毎回違う生きた芝居をされるから、見ていて楽しいんですよ。

愛原:ハニガンさんはキュートなところがありますし、本当の悪役じゃないですからね。

須藤:褒めすぎです~~。めっちゃハードル上がるからやめて(笑)。

藤本:(笑)。お客さんを最初にグッとつかむのは、ハニガンさんですからね。『アニー』がトニー賞を受賞した時、主演女優賞を取ったのもハニガンさんを演じた方ですからね。とても大事な役なので、それを見ながら我々も準備している感じです。

(左から愛原実花、藤本隆宏、須藤理彩)

――それぞれ演じられる役について、自分自身に似ているところはありますか?

藤本:僕はあまりないですね。ただ寂しがり屋なところがあるので「Something was Missing」の「全て掴んできたけどもダメなところがあって…」という歌詞には共通する部分があり、思いを込めて歌えます。前半のウォーバックスは自分自身があまり持っていない要素があるので、そこは頑張って役を作り上げている感じです。

須藤:ハニガンは自分ではしっかりやってるつもりなのに、子どもたちにちょっかいを出されて全て見抜かれているところがありますし、グレースとの対峙の話で出てきましたがいいように踊らされて利用されてるところもあります。そういうところが私にもあるな…と思います。

プライベートで「ちゃんとした親にならなきゃ!」と思いながら、子どもたちから「いいよ。分かっているから無理しなくて」と言われています。ちょっと抜けたところがハニガンに共感できます。

愛原:グレースのように一見しっかりして見えそうなので、責任者を任せられたりするのですが、ふたを開けたらひどいっていうことが多いので…。

藤本:(爆笑)

愛原:私が子どもの頃に『アニー』を観た時、最初はグレースがちょっと怖そうにみえたんです。でもどんどん印象が変わっていったので、そういうところが似ていると思います。

藤本:グレースは3枚目のところもありますからね。

――最後に『アニー』を楽しみに劇場へいらっしゃる方へメッセージをお願いいたします。

藤本:今年は40年目という記念の舞台です。新たなキャストもいますし、ぜひ楽しみに観に来ていただきたいです。

須藤:観に来てくださった方が、また観たいと思うのが一番の成功につながると思います。公演期間中にまた観たいと思ってもらえる、そしてずっと続いている作品なので来年も観たいと思ってもらえる作品にしたいです。

愛原:激動の時代に、強い心で成長していくアニーの姿を見て、観に来てくれる方々がどんな気持ちになって下さるんだろうと楽しみです。今こんな時代だからこそ、それでも頑張って明日こそ…と願う作品を、2025年バージョンで作れたらいいなと思っています。

取材・文・撮影:咲田真菜

丸美屋食品ミュージカル『アニー』公演概要

Annie2025©NTV

日程:2025年4月19日(土)~5月7日(水)
会場:新国立劇場 中劇場
※東京公演の他、上田、大阪、金沢、名古屋公演あり

出演:丸山果里菜、小野希子、藤本隆宏、愛原実花、赤名竜乃介、浜崎香帆、須藤理彩 他

演出:山田和也

チケット一般発売:2025年2月15日(土) 10時~
公式HP:https://www.ntv.co.jp/annie/

東京公演主催/製作:日本テレビ放送網 協賛:丸美屋食品工業

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この記事を書いた人

国家公務員・一般企業勤務を経てフリーランスのライターになる。高校時代に観た映画『コーラスライン』に衝撃を受け、ミュージカルファンとなり、以来30年以上舞台観劇をしている。最近はストレートプレイも積極的に観劇。さらに第一次韓流ブームから、韓流ドラマを好んで視聴。最近のお気に入りはキム・ドンウク。