演出家・桐山知也、亀田佳明 インタビュー「ぜひ前のめりになって観劇して」「面白い観劇体験になるはず」【インタビューVol.32】

(左から 亀田佳明、桐山知也)

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2025年2月15日(土)~ 2025年3月2日(日) 東京・シアタートラムにて、サイモン・スティーヴンス ダブルビル『ポルノグラフィ PORNOGRAPHY/レイジ RAGE』が上演される。

本公演は、世界の演劇界で注目されているイギリスの劇作家サイモン・スティーヴンスの戯曲『ポルノグラフィ』と『レイジ』を同じ演出家と同じ出演者により、ダブルビルで上演する。

出演者は亀田佳明、土井ケイト、岡本玲、sara、田中亨、古谷陸、加茂智里、森永友基、斉藤淳、吉見一豊、竹下景子で、演出は、2021年にKAAT神奈川芸術劇場でリーディング公演『ポルノグラフィ』を上演した桐山知也が手掛ける。

このたび本格的な稽古に入った2025年1月上旬に、演出を手掛ける桐山知也さんと出演者の亀田佳明さんにインタビューを実施した。読み込んだ台本を携え、稽古場の雰囲気や上演にかける意気込みについて語ってくださった。

――1月4日から稽古がスタートしたということで、まずは手応えをお伺いできますでしょうか?

桐山:面白いですね。俳優さんの声を聞くと思いもしなかったことや思っていた以上のものが返ってきてます。皆さんいろいろ考えてくださっているのですが、僕が全く逆のことを考えていたり、どういうふうにでも解釈できるシーンがたくさんあるので、皆さんが演じているのを見るのは非常に面白いし刺激的です。立ち稽古もすでに全部のシーンをやりましたが、2本の作品を同時にやる意味を見出している感じがします。

――稽古はどのような感じで進めていますか?

桐山: 読み稽古の時は、今日は『レイジ』だけ、今日は『ポルノグラフィ』だけ、と決めてやりました。立ち稽古になってから『ポルノグラフィ』は1シーンに1人か2人しか登場しないので、そのシーンをやったら、その後は皆で集まって『レイジ』をやる…と交互に稽古して、1日の作品を稽古するようにしています。

――亀田さんの役どころを教えていただけますか?

亀田:『ポルノグラフィ』のほうは、いわゆるテロの実行犯と思われる人の役でテロが行われた1日を演じます。『レイジ』では警察官の一人を演じるのですが、全体的に警察官の描かれ方が横暴なんです。その中で僕が演じる警察官は、そんな横暴な態度を取る仲間に対してちょっと抵抗感を持っている役どころです。なぜ抵抗感を持っているかという点についてはパーソナリティの部分に何かがある…と描いています。

『レイジ』は、役名に名前がついていなくて、僕が演じる役は警官2なんです。でも実はマイケルという名前があるんですよ。それなのに警官2という役名になっているのはなぜなんだろう…と思うのですが、台本の中に説明はないんです。

――警察官とテロ犯という真逆の立場の人を演じるわけですが、横暴に描かれている警察官ということで、暴力的というところでは共通しているのでしょうか?

亀田:そうですね。『レイジ』は、人生の岐路に立った時、右に行くか左に行くかで、人生がガラッと変わってしまうものだと言っているような気がします。テロの実行犯、警察官、どちらにもなる可能性があるという捉え方ができるでしょうね。人間には両面性があるのかなと思ったりします。

――桐山さんは亀田さんのそれぞれの役に対する解釈をどのようにお考えですか?

桐山:昨日、ちょうど『ポルノグラフィ』の亀田さんのシーンを初めてやったんですが、全幅の信頼を置いています。

亀田:(意外そうな表情で)…!

桐山:本当に! もちろん今まで読み稽古やインタビューでお会いした時にお話をさせていただいているので、役への解釈が違っていると感じたことはありませんでした。立ち稽古をして実際に見てみると、解釈はもちろんですが表現の仕方も、亀田さんと僕は同じ方向を向いている感じがします。とても嬉しくて頼もしいので、おまかせしよう! と思っています。

亀田さんがおっしゃっていたように、人生の岐路に立った時、右に行くか左に行くかで人生が変わってしまうということはあるかもしれません。例えば、朝誰かに話しかけられたことで人生が変わるかもしれないみたいなこと。あるきっかけでテロを実行してしまうかもしれないし警察官になったかもしれない…という考え方で観ると面白いかもしれません。

――今回11人のキャストがいらっしゃいますが、2つの作品で他のキャストの皆さんとは舞台上で関わりますか?

亀田:『レイジ』は出演者が同じ空間に立っている瞬間はあるかもしれないですが、そこまで濃い関わりはないです。ただ竹下(景子)さんと強いつながりを持って関わっていきます。

――竹下さんはどんな方ですか?

亀田:とてもフラットで素敵な方です。いつも稽古前にウォーミングアップをする意味もあってみんなでゲームをやったりするのですが、一緒に入ってくださいます。竹下さんはちょっと間違えちゃったりするかわいらしい一面もあるんですよ。

――稽古場はどんな雰囲気ですか?

亀田:皆さんの音色が全然違うんですよ。あっちからこんな声が聞こえてくる…みたいな。いろいろな声が聞こえてきて…。

桐山:特に『レイジ』は群像劇なので、いろいろな音色があってごちゃごちゃしていたほうがいいような感じがします。稽古をしていくうちにいい感じのごちゃごちゃになるのではないでしょうか。

――シアタートラムでこの作品を上演することに対して、亀田さんは何か楽しみがありますか?

亀田:シアタートラムは、ライブ感覚が非常に高い劇場だと思います。今回の作品は、舞台美術がかなり面白くて、お客さんがより物語の中に入れるように、演出的にもお客さんが近くなるような感覚があります。シアタートラムと本作はよく合っているような気がします。

――観客と近い分、すべて見られている怖さはあったりしますか?

亀田:大きい劇場でも結局はすべて見られているわけですから、そのあたりはあまり変わらないですね。

――2月15日が初日ですが、桐山さんから亀田さんに期待することは?

桐山:すでに期待以上のものを持ってきてくださっています。だから『レイジ』のほうで、もっと出番や他の人と接触する機会が増えるかもしれないですね。例えば、亀田さんのシーンが終わっても、舞台上に残って遠くから何かを見ているとか…。そうすることで2作品の大きな枠組みを作っていただけるかもしれないですね。

亀田:戯曲上は説明がされていないけれど、シーンをつなげて演じてみると、このカンパニーだからこそ見つかった、あの舞台美術だからこそ見つかった、桐山さんの演出だからこそ見つかった…というのが見えてつながってきます。

稽古場には、どう勘違いしても、どう変化してもそれはそれでいいじゃないですかと許してくれる寛容な雰囲気があるんですよ。「そんなことない」と言われるかもしれませんが(笑)僕はそんな風に感じています。

――亀田さんは、NHK連続テレビ小説『らんまん』に出演されるなど映像でも活躍されていらっしゃいます。舞台との違いはどんなところがありますか?

亀田:基本的には変わらないと思っています。もちろん細かい点で違うところはあるのでしょうし演技をする「筋肉」のようなものは違うと思いますが、基本は変わらないです。

ただ、舞台はやり直しがきかない点が面白いところだと思います。例えば誰かがせりふを間違えたときに、相手がどう返すかとか、お客さんもその一瞬のアクシデントを感じてくださいますから空気感も面白いんです。毎回違うステージになるのが舞台の醍醐味だと思っています。

――今回の作品もアドリブなどで、毎回違うステージになりそうですか?

桐山:『ポルノグラフィ』はアドリブが一切できないストイックなものにこれからの稽古を通じてなっていきます。『レイジ』は体力的にハードな舞台になるかもしれないので、微妙に立ち位置がずれたり、息の上がり方が違ったり、面白いことが起きてくるかもしれません。11人全員が舞台に登場する瞬間もあるので、1人の違いから変化や反応が生まれて面白くなると可能性もあります。どの作品もそうですが、稽古や本番の回数をこなすうちに感覚が研ぎ澄まされたり、落ち着いてできるようになったり、毎回違う感覚で観ていただけると思います。

――タフな公演で公演期間も長いですが、体調をキープするのに特別なことはされていますか?

亀田:よく食べてよく寝ることですね。喉のケアとか特別なことは何もしていないです。加湿器を置いたりもしましたが、部屋中がべちゃべちゃになって不快指数が上がったのでやめてしまいました(笑)。

桐山:僕は何もないですね…。昔は剣道、テニス、バレーボールをやっていたので、体を動かしたいと思いつつ20年以上動かしていません(笑)。あえていうなら睡眠時間が多いほうが稽古にスッと入れます。余裕を持って早めに稽古場に来て、気持ちを落ち着けてから稽古に入るように気をつけています。

――最後に公演への意気込み、来場される方へメッセージをお願いいたします。

亀田:稽古していてかなり刺激的な瞬間がいっぱいあって、何よりサイモン・スティーヴンスが書いた言葉というのがかなり痛烈に行き交うお芝居になると思います。見ていただいた方の中で、その方自身の画を描いていただけるような面白い観劇体験になると思います。気を楽にして観ていただけたらうれしいです。

桐山:この作品を2本同時に上演することは、世界初ですし今後あるかどうかもわかりません。ぜひそれを目撃していただきたいです。

稽古していて、2本同時にやる意味、今やる意味、出演される俳優の皆さんとやる意味が見えてきています。舞台で起きていることに刺激を受けて能動的に前のめりに観ていただけるとより豊かな体験になると思います。ぜひお越しください。

取材・文・撮影:咲田真菜

(左から 亀田佳明、桐山知也)
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サイモン・スティーヴンス ダブルビル『ポルノグラフィ PORNOGRAPHY/レイジ RAGE』公演概要

日程:2025年2月15日(土)~ 2025年3月2日(日)
会場:シアタートラム
料金:一般 8,000円 高校生以下 4,000円

演出:桐山知也

出演:亀田佳明、土井ケイト、岡本玲、sara、田中亨、
古谷陸、加茂智里、森永友基、斉藤淳、吉見一豊、竹下景子
スウィング:伊藤わこ、森永友基

お問い合わせ:世田谷パブリックシアターチケットセンター03-5432-1515
営業時間:10:00~19:00

公式サイト:https://setagaya-pt.jp/stage/16041/

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この記事を書いた人

国家公務員・一般企業勤務を経てフリーランスのライターになる。高校時代に観た映画『コーラスライン』に衝撃を受け、ミュージカルファンとなり、以来30年以上舞台観劇をしている。最近はストレートプレイも積極的に観劇。さらに第一次韓流ブームから、韓流ドラマを好んで視聴。最近のお気に入りはキム・ドンウク。

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