カン・ハヌル&チョン・ソミン出演　『ラブリセット　30日後、離婚します』感想　ぶっ飛んだ2人の演技に注目

2024年3月29日

『椿の花咲く頃』のカン・ハヌルと『還魂』のチョン・ソミンが出演する映画『ラブリセット　30日後、離婚します』が、2024年3月29日（金）から全国ロードショーがスタートした。

『ラブリセット　30日後、離婚します』は、離婚を30日後に控えた夫婦が、交通事故で2人とも同時に記憶を失ったことで繰り広げられるラブコメディー。

自称知的でイケメンの弁護士で、何をするにもどんくさいノ・ジョンヨル（カン・ハヌル）と名家出身のお嬢様で映画プロデューサーだが、家事は一切できない破天荒なホン・ナラ（チョン・ソミン）。大恋愛の末に親の反対を押し切って結婚するも、価値観の違いに耐え切れなくなり離婚を決意する。

裁判所の調停で熟慮期間を経た30日後に離婚することが決まるが、その帰り道に交通事故に遭遇して2人とも記憶喪失になってしまう。愛した記憶も憎しみ合った記憶も全て消え去った2人は、なんとか記憶を取り戻そうとするが…。

カン・ハヌルとチョン・ソミンは、2015年公開の映画『二十歳』以来、8年ぶりの顔合わせとなり、テンポの良い掛け合いと振り切った演技で離婚寸前の夫婦役を
好演。カン・ハヌルは本作で「第10回韓国映画制作家協会賞」の主演男優賞を受賞するなど高い評価を得ている。

共演にチョ・ミンス、キム・ソニョン、ユン・ギョンホ、ソン・ヘナ、オム・ジユンら、日本でもおなじみのバイプレイヤーたちが、一癖も二癖もあるキャラクターで物語にコミカルな演技を繰り広げているのも注目だ。監督は『偉大な願い』、『色男ホ・セク』のナム・デジュン。

『ラブリセット　30日後、離婚します』感想（極力ネタバレなし）

注目の若手俳優、カン・ハヌルとチョン・ソミンが夫婦役を演じるということで、かなり楽しみにしていた作品だが、2人の振り切った演技にあっけにとられてしまった。

最初にチョン・ソミンが美しいウエディングドレス姿を披露。ところが相手はカン・ハヌルではなく一瞬「？」と思うのだが、挙式寸前でチョン・ソミンが演じるナラは逃げ出し、カン・ハヌルが演じるジョンヨルのもとに走る。その頃ジョンヨルは、友人たちと泣きながらやけ酒を飲んでおり、映画『卒業』のように花嫁を奪いに行こうと意気込んだ矢先にナラが店に飛び込んできたというわけだ。タイミングがいいんだか悪いんだかよくわからない2人だが、このシーンがその後の結婚生活を暗示しているといえるだろう。

大恋愛の末に結ばれた2人だが、金持ちの娘・ナラと堅実な家に生まれたジョンヨルは、結婚生活を通じてお互いの価値観の違いに激しく対立するようになる。その様子はもはや命をかけた戦いのようで、なかなかすさまじい。中でも調停のシーンは大きな見どころになるのだが、2人がお互いの欠点を罵り合いバトルになっていく様は見応えがある。愛し合って結婚したはずなのに、ここまで憎み合えるものかと思う反面「あー、なんか分かるな～」と共感して、深いため息をつく既婚者も多くいるのではないだろうか。

そんな2人にとって運命の分かれ道になったのが、調停後に遭遇した事故だ。2人で車に乗っていたら例によって言い争いになり、交通事故に巻き込まれてしまう。韓国ドラマではおなじみの乗っている車の横に、別の車が激突してくる交通事故シーンとなったわけだが、これほど交通事故シーンに笑った作品はあとにも先にもないと思う。この瞬間のカン・ハヌルとチョン・ソミンの表情に要注目だ。

大事故に巻き込まれたジョンヨルとナラだが、奇跡的に2人とも回復したものの、過去の記憶はすっかりなくなっていた。お互いが夫婦だったことも忘れてしまい、特にナラは、ジョンヨルの顔がタイプでないという理由で夫婦だったことを受け入れられない。

ナラの母親（チョ・ミンス）とジョンヨルの母親（キム・ソニョン）は、自分たちの子どもが記憶を失い、親のことも忘れてしまったことに深く傷つく。一緒に生活をさせれば記憶が回復するのではないかという担当医の助言で、もとの生活に戻るジョンヨルとナラ。実はナラの母親とジョンヨルの母親も犬猿の仲で、30日後にめでたく離婚する子どもたちを再び一緒に生活させたくなかったが、記憶を回復させるには仕方がないと諦めた。

記憶を無くした者同志の新たな生活は、静かに過ぎていった。もともとジョンヨルはナラの美しさに一目ぼれをし、ナラはジョンヨルの笑顔にときめいて結婚したため、再び惹かれ合っていくのは時間の問題だった。ふとしたことをきっかけにジョンヨルは記憶を取り戻すのだが、ナラは相変わらずの状態で、約束の30日後がとうとうやってくるのだが…。

カン・ハヌルとチョン・ソミンが、そこまでやるか！と口走ってしまうほどのぶっ飛んだ演技を見せてくれるだけでなく、ナラの母親を演じるチョ・ミンスの怪しげな雰囲気を醸しつつ笑えるせりふを連発する怪演と、ジョンヨルの母を演じる韓国ドラマではおなじみのバイプレーヤー、キム・ソニョンの嫌味な姑ぶりも際立つ。

エンディングはベタといえばベタだが、そこに至るまでがジェットコースターのようなシーン連発なので、それも良いだろうと受け入れられる。憂鬱な気分を一気に吹っ飛ばしてくれる映画となっているので、なんだか最近モヤモヤしているなーと感じている人は、劇場に足を運んでスカッとした気持ちになってみてはいかがだろうか。

文・咲田真菜