山本一慶、大湖せしるインタビュー「笑いとともに生きる意味を感じて」ロマンティックコメディ『さよなら、チャーリー』【インタビューVol 22 】

(左から)大湖せしる、山本一慶

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2024年2月16日(金)~2月25日(日)池袋あうるすぽっとにて、ロマンティックコメディ『さよなら、チャーリー』が上演される。人妻との浮気現場をその夫に見つかり撃ち殺された主人公のチャーリーが、女性に転生したことで始まる奇妙な物語。ウィットに富んだ会話で面白く楽しい気分になる一方で、死をきっかけにさまざまな人間関係が浮き彫りになっていくファンタジックコメディだ。

このたび主人公のチャーリー・ソレルを演じる山本一慶さんとチャーリーと不倫関係となるラスティ・メイヤリングを演じる大湖せしるさんにインタビューを行った。ロンドンコメディ『Run For Your Wife』やミュージカル『憂国のモリアーティ』で共演し、絶大な信頼を寄せあう2人が今作でどのような作品を作り上げようとしているのか。稽古前の意気込みを和気あいあいとした雰囲気の中で語ってくださった。

目次

チャーリー役は厳しい戦いになるけれど、面白い挑戦!

――出演が決まった時の心境をお聞かせください。

山本一慶(以下、山本):お話を聞いて、難しい役だと思いました。男性が女性になるって面白いと思いましたが、内容を知れば知るほど、これまで圧倒的に女性の方がこの役を演じてきた理由が分かりました。身体は女性だけど、心が男性から女性になっていく様を描くのは、女性が演じたほうが伝わるものが多いのかもしれないと思ったんです。

でも、男性が女性になった戸惑いは、男性が演じることによって説得力が増すと思います。ですから厳しい戦いになりつつも、面白い挑戦になると感じています。

――ビジュアルが公開されていますが、本当にお綺麗ですよね。

山本:いやいや恥ずかしいですね。 でも舞台上ではもっと綺麗だと思います!(笑)

――大湖さんはいかがですか?

大湖せしる(以下、大湖):お話をいただいて、ざっとあらすじを読ませていただきましたが、これは面白いぞと思いました。作品に興味が湧いただけでなく、出演されるキャストの皆さんの名前を聞いて「これはもう面白くなるに違いない」と。以前、共演させていただいている方もいらっしゃるので、オファーをいただいて「はい!」と即答しました。

心に染みる人間ドラマが魅力 「女性同士」のやり取りに期待

――お二人は『Run For Your Wife』で共演されていますよね。私も拝見しましたが、その時は、奇妙な感じでしたけどご夫婦の役でした。

山本:確かに『Run For Your Wife』では、夫婦役でしたけど普通の夫婦ではなかったですね。

――今回はいわゆる不倫をしちゃうという設定ですが…。

山本:男女というカテゴリ―の中で、すべて網羅してきた感じですね。

大湖:普通の関係がない!ぶっ飛ばしていますよね(笑)

――今回のような関係の役柄は、どのように感じていますか?

山本:チャーリーは魅力的な女性に目がないので、僕もそうやって生きたいなって思います(笑)。チャーリーのように生きられたら、さぞ楽しいんじゃないかなって。 でも今回せしるさんが演じるラスティは、アレキサンダー・メイヤリングを演じるルー(大柴)さんの奥さんですからね。僕はとてもじゃないけど、ルーさんの奥さんに手を出す勇気はないですね!!(一同笑い)

大湖:ルーさんは、『Run For Your Wife』でご一緒させていただきましたが、その時は、私がルーさんを煙たがる役でした。今回夫婦になるということで二人の間柄が進展したな…と思いましたね。

――確かに『Run For Your Wife』で演じていた大湖さんとルーさんのイメージを知っていると、笑ってしまいますね。

大湖:面白いです! ただ今回はルーさんと直接せりふを交わすシーンはあまりないんですよね…。

山本:見たかったな…。

大湖:私もルーさんに「旦那様~」という感じを出したかったんですけどね。

山本:僕はそんなルーさんに殺されてしまうんだけどね(笑)。

――思わず笑ってしまうシーンもあれば、心に染み入るシーンもたくさんあり、登場人物の心が揺れ動きますよね。そういうシーンをどうやって演じていこうと思っていらっしゃいますか?

山本:この作品はチャーリーの死をきっかけに、チャーリーに関わった人の心が揺れ動くんです。そういう人間ドラマが魅力だと思います。

そして素直になるというのが隠れたメッセージなのかなと思っています。チャーリーは女性に転生したことで、まわりからどのように思われていたのか知る機会が与えられます。チャーリーが生きている間に知らなかったこと、気付かなかったことを彼自身が直接知ることで、自分の生きた痕跡と向き合うことができます。実際にはありえないことだけれど、それがすごく僕は染みるんですよ。

まわりからの言葉を聞いて、チャーリーは最後、お酒の力を借りて本音をぶちまけますが、そこに至るまで、人間ドラマを感じさせてくれるところが僕は好きですね。

大湖:まだお稽古前で、台本を頭の中に入れているところですが、出演者の皆さんは、それぞれ舞台上で生まれてきた感情をすごく大事にされる方たちです。一慶くんも(ジョージ・トレイシーを演じる井澤)勇貴くんもそういうことができる人たちだから、すごく楽しみです。

チャーリーは数々の女性を泣かしてきたバチが当たっちゃって女性になってしまったんですけど、でもそれは神様からのプレゼントだったと思います。物語の最後になると、私が演じるラスティもチャーリーの存在が大きかったんだろうな…とだんだん分かってきます。出演しているみんなにとって「この出来事は必然だったんだ」と思えるような作品にしていきたいです。

山本一慶

――今作でお二人は会話のやりとりが多いですし、女性同士のやりとりになるのがファンの皆さんにとって新鮮だと思いますが、いかがですか?

山本:確かに新鮮ですよね。僕は『夏の夜の夢』で女性を演じたことがありましたが、今回は心が男性から女性になっていく過程を踏んでるので、女子トークになりきらない段階があるのが複雑だと感じています。ただ、チャーリーは心の中で「うわー!すげー!なんか全然違う一面を見てる!」って驚いていると思いますから、単純に山本一慶としてそれを楽しめばいいのかなと思います。

――お稽古はこれから始まるとのことですが、女性になる一慶さんについてどんな期待がありますか?

大湖:台本を毎日読んでいるのですが、稽古場に入ったらどうなるのか想像したりしています。

山本:やりづらいだろうね。

大湖:でも『モリミュ(『憂国のモリアーティ』)で、私の役は男性だったけど、やりづらかった?

山本:ない。女性が男性になるのは意外と受け入れやすいし理解できるんですよ。でも男性が女性になる異質さを感じるんですよね…。

大湖:でも一慶くんは繊細な部分がすごくあるから、その部分を生かしてできそうな気がします。

大湖せしる

盟友・井澤勇貴としっかり芝居ができる喜び

――ジョージ・トレイシーを演じる井澤勇貴さんですが、本作ではキーパーソンとなり、めちゃくちゃ大変な役ですね。

山本:一番大変な役だと思いますよ。僕は井澤さんとは何度も共演して、一緒に過ごす時間が長いんですけど、あまり二人でせりふを交わしたことがなかったんです。今回は、井澤さんと会話をして、シーンがどんどん転がっていくので、ようやくお芝居を二人でできるなと思っています。物語の最初、ずっと二人で喋るシーンがありますが、このやりとりが二人でできるのが嬉しいと思いました。

――導入部分のお二人の会話は、その後の舞台の流れを決めてしまいそうな気がします。

山本:本当にそう思いますね。二人の会話があまりにも他愛もないので「面白くなるかな?」と思ったんですよ。でもそれが逆によい効果を出していると思っています。男性が女性になる話って、異質じゃないですか。60年程前、この作品が上演された当時「男性が女性に転生するってSFみたいな話? 」と思われたかもしれないですよね。

でも冒頭の他愛もない日常会話が続くことによって、その異質感が現実感に置き換えられると僕は思ったんです。この会話がしっかり現実味を帯びていくことによって、ジョージは女性になったチャーリーを受け入れて、受け入れたあとに思い出話をしていく…。これがお客さんに対して「これは現実なんだよ。現実に面白いことが起きたんだよ」と誘っている感じがします。

だからこの二人のしょうもない会話が、すごく意味のある大事な会話だと思っています。

山本一慶

――大湖さんも井澤さんとは長い会話がありますよね。

大湖:私は『モリミュ』で共演して、会話は少ないけれどずっと二人で場面を演じていることが多かったんです。何かしらパートナーとして組んでやってたので、勇貴くんとは安心感でやっていけるだろうと思っているので、多分何をやっても大丈夫な気がします。

山本:井澤さん、海外戯曲の作品に出演するのは初めてなんだって。

大湖:えー! 本当に?

山本:ほんと! 僕もさっき聞いて「えっ!」ってびっくりしたんですよ。

大湖:合うと思う。

山本:ね! 井澤さんのファンにとっても新たな一面が見られる作品になるのではないかと思いますよ。

この作品を通して、生きる意味を感じてほしい

――ところで、本当に1日だけ女性になってしまったらどうしますか? 大湖さんも1日だけ男性になってしまったらどうしますか?

山本:なんだろう…。やることがないからナンパ待ちします! ナンパしてくるやつを蹴散らそうと思います(笑)。

大湖:じゃあ私は、ナンパしまくります!(笑)。

山本:お互い当たっちゃって、僕が蹴散らしちゃうかもしれないね!

大湖せしる

――お稽古はこれから始まりますが、どのように役を演じていくか、構想はありますか?

山本:最初にチャーリーが女性に転生してしまうシーンは、女性が演じるよりも男性が演じたほうがより信ぴょう性が増すと思います。まさに今「いや、女性になるのは無理だよ。僕は男だよ」って思っていますから。だからよりリアルに人を引きつけられるんじゃないかと思います。容姿に関しては、メイクさんに頑張っていただいて…(笑)。

あんまり女性にならなきゃ! と考えず、山本一慶が同じ体験をしているような感覚でいいのかなって思います。最初に言いましたが「素直になる」ことが、この作品のメッセージだと思うので、チャーリーが素直になっていく様を見せるためには、僕が素直にお芝居をすればそこに到達すると思っています。

大湖:ラスティは、気持ちの動きや感情がすごく繊細で細かいんです。ちょっとした見えない部分をいかにせりふや動きで伝えられるか…ですね。劇場も大きいわけではないので、お客様と近いからこそ、目の動きなどで伝えられることがたくさんあると思います。

そして、演じているときに生まれることがたくさんあると思うので、共演者の皆さんの感情を一つひとつキャッチして、ラスティとして生きていきたいです。後半、彼女はとても揺れ動くので、女性の方に共感していただけるのではないかと思います。大切な部分がちゃんと伝えられるように、繊細に作っていきたいです。

――最後に、ファンの皆様に見どころとメッセージをお願いします。

大湖:めっちゃくちゃいいカンパニーになると思っています。観終わったあとに、何か持って帰っていただける感情や思いが届けられるように、1公演ずつ大事にします。そのためにお稽古がんばります!

山本:単純に何も考えずに観ても面白いと思います。この作品は死を題材にしていると思っていて、それをダイレクトに伝えるとちょっと怖いけれど、ロマンティックコメディにすることで、すんなり笑いとして受け入れて、家に帰ったらふと死について考えてしまうと思います。

死を題材にしているけどコメディにしている、だからこそお客さんの中にスッと入ってきて、また考えさせられる…。このプロセスが作品の魅力だと思っています。コメディを通して、改めて皆さんが生きる意味を感じていただけたらなと思います。ぜひこの作品を楽しんでください!

インタビュー・文:咲田真菜
写真:山副圭吾

(左から)大湖せしる、山本一慶

ロマンティックコメディ『さよなら、チャーリー』公演概要

作 :ジョージ・アクセルロッド
訳 :小田島恒志
演出:岡本さとる
製作:アーティストジャパン

日程:2024年2月16日(金)~2月25日(日)
劇場:池袋あうるすぽっと
出演:山本一慶、井澤勇貴/大湖せしる、神谷敷樹麗、枝元萌、柳内佑介/ルー大柴

料金:S席8,500円 A席7,500円(税込・全席指定)
チケット発売中

公式サイト:https://artistjapan.co.jp/goodbye-charlie2024/
公式エックス:https://twitter.com/aj_gbc2024

取り扱い:アーティストジャパン、チケットぴあ、イープラス、ローソンチケット 
お問い合わせ:アーティストジャパン 03-6820-3500 https://artistjapan.co.jp/

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この記事を書いた人

国家公務員・一般企業勤務を経てフリーランスのライターになる。高校時代に観た映画『コーラスライン』に衝撃を受け、ミュージカルファンとなり、以来30年以上舞台観劇をしている。最近はストレートプレイも積極的に観劇。さらに第一次韓流ブームから、韓流ドラマを好んで視聴。最近のお気に入りはキム・ドンウク。

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