U-NEXTで独占配信中の韓国ドラマ『あなたが眠っている間』。この作品は、2017年に韓国SBSで放送されたドラマで、夢で見たことが現実に起きてしまう報道記者の女性、ナム・ホンジュ(ぺ・スジ)と同じように予知夢を見る新米検事、チョン・ジェチャン(イ・ジョンソク)、そしてある事故をきっかけに2人と知り合った警察官、ハン・ウタク(チョン・ヘイン)の3人が、未来を変えるべく奔走する姿を描く。
本作の演出を手掛けたオ・チュンファンは、現在ディズニープラスで配信中のイ・ジョンソク主演ドラマ『ビッグマウス』でも演出を手掛けているが、テイストの違う作品として見比べてみるのも楽しいだろう。(以下、ネタバレあり)
「予知夢」を軸にシリアス&コメディーをうまくミックス
ぺ・スジが演じるホンジュの見た夢が現実になってしまうというエピソードから物語が始まる。会ったことがない人が夢に登場し、その人物が事故に遭遇して亡くなってしまう場面を見て飛び起きる…ということを繰り返してきたホンジュ。かつては自身の父が事故に巻き込まれて亡くなる夢を見て、それが現実になったというつらい思い出がある。見た夢を一つひとつ記録していたホンジュだが、ある日最愛の母を失う夢を見て動揺する。
イ・ジョンソクが演じる新米検事・ジェチャンは、弟のスンウォン(シン・ジェハ)とともにホンジュの家の前に引っ越してきた。ホンジュは夢で抱き合った男性がジェチャンその人だったことに動揺する。そしてジェチャンもまた予知夢を見る人物だった。
ジェチャンとホンジュが見た予知夢によって、不慮の事故で命を失うことを免れたウタクも、ジェチャンに関する夢を見るようになっていた。
この3人は、お互いに助け合った過去があったため、助けてくれた人にピンチを知らせるため予知夢を見るようになったというわけだ。こうして3人がタッグを組み、これから起きるトラブルを未然に防ぐべく奔走する。予知夢を巡るストーリーは、シリアスな展開も多く、胸に突き刺さるものがいくつかある。実際にこのような能力があったらたまったものではないな…とホンジュ、ジェチャン、ウタクに同情してしまうこともしばしばだ。
しかしシリアスな物語の中にも、コメディー要素をふんだんに取り入れている演出に救われる。ジョンソクが検事役ではあるものの、どこか抜けた3枚目風のキャラクターに仕上がっているところが面白い。
またジョンソクの先輩検事であるイ・ジグァン(ミン・ソンウク)、シン・ヒミン(コ・ソンヒ)らをはじめとした漢江地検の同僚たちが個性豊かなキャラクターを演じていて、物語の良いスパイスになっている。
イ・サンヨプが陰険な弁護士を熱演
物語の最初から最後まで、悪人を貫きとおすのが、弁護士、イ・ユボムを演じるイ・サンヨプだ。ホンジュの恋人として登場し、人当りが良く爽やかな印象で登場するが、とんでもない腹黒人間だということが明らかになっていく。
ジェチャンとは因縁があり、ユボムはジェチャンが中学生の頃、家庭教師として勉強を教えていた。その時に金を目当てに成績表を偽造するという悪事を働いており、その罪をジェチャンになすりつけていたのだ。久しぶりにユボムと再会したジェチャンは憂鬱な気分になるのだが、このユボムがしつこくジェチャンの邪魔をすることになる。
韓流ドラマに登場する悪人は、とかくえげつなことをする人物が多いが、ユボムも例外ではない。検事をやめて弁護士になってからは、金のためならどんな仕事でも引き受けているのだが、一方でそんな自分を責め続けるところもある。ユボムがなぜここまで落ちてしまったのか、そのバックグラウンドは明かされなかったが、本作の中で間違いなく大きな存在感がある役だ。
運命によって引き寄せられたジェチャンとホンジュ
幼い頃に脱走兵が引き起こしたテロ事件により、バスの運転手だった父を亡くしたホンジュ。やがて父を殺した脱走兵が、警察官だったジェチャンの父も殺していたことが明らかになる。
世間でも大きくニュースとして取り上げられた2つの事件。同時に葬儀が行われていた会場で、2人はかつて会っていたのだ。信じられないような運命的な再会で、2人はお互いに惹かれ合っていく。
そこに絡んでくるのが、ホンジュに対してひそかに好意を抱くウタクだ。しかしウタクは決して2人の邪魔をせず、優しく見守る。彼自身のホンジュへの思いは、静かに自分の心の中だけにとどめ、そうしたウタクの優しさにグっとくる人も多いことだろう。
物語の終盤、実はジェチャンとホンジュをつないでいる人物がもう一人いることが分かる。この人物とのエピソードは胸に迫るものがあり、物語のラストは賛否両論分かれるだろう。しかし筆者は、オ・チュンファンらしい演出なのでは…と納得している。
韓国ドラマ『あなたが眠っている間に』は、U-NEXT独占配信中。
文・咲田真菜