石川雷蔵インタビュー「わずかな時間でも記憶に残る俳優になりたい」 舞台『SHELL』で高校生・咲斗役に挑戦【インタビューVol.19】

石川雷蔵

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2023年11月11日(土)~11月26日(日)KAAT神奈川芸術劇場 ホール、2023年12月9日(土)、10日(日)京都芸術劇場 春秋座にて、舞台『SHELL』が上演される。倉持裕杉原邦生が初タッグを組む新作舞台となり、人間の「貌(かたち)」とは何かをめぐる摩訶不思議な青春ファンタジーだ。

このたび、本作で舞台初出演を果たす石川雷蔵さんにインタビューをする機会に恵まれた。舞台出演が決定した時の気持ちや意気込み、プライベートについても語ってくださった。

石川雷蔵

初舞台に向けて、怖さを上回るワクワク感が

――今作が初舞台となりますね。出演が決定したときの率直なお気持ちをお聞かせください。

石川雷蔵(以下、石川):とりあえず(ガッツポーズをして)「よし!よし!よし!」というのが一番でした(笑)。ただそのあとに台本をいただいて「怖い」という気持ちが出てきました。初舞台なので、舞台で演じることは未知の世界ですから、できるのかどうか怖いな…と。

今日初めて上演する劇場(KAAT神奈川芸術劇場 ホール)に来たのですが、こんなに大きいところでやるのかと…。きちんと演じられたら気持ちいいんだろうなという想像が膨らんで、頑張ろうとギアが一つ上がり、さらにテンションが上がりました。怖い気持ちはまだありますが、ワクワクのほうが大きくなってきましたね。

――石川さんが演じられる咲斗は、とても重要な役どころだとお見受けしています。まだ稽古前とのことですが、どのように演じようと思ってますか?

石川:まだ出演者のどなたとも顔を合わせていないので、「こう演じるんだ」と深く考えないようにしています。それが正解かどうかは分からないですけど、稽古が始まる前に自分の中で(役のイメージを)固めちゃうと、なかなか抜け切らない気がするんです。稽古が始まって「もっとこうしてほしい」と言われたとき、臨機応変に対応ができなくなっちゃうのが怖いんです。

咲斗はこんな感じの子だろうなとイメージして、テンションもこんな感じでいこうというのは決めていますが、出演者のみんなと合わせて、さらに指示をもらった中で、合わせていこうと思っています。

――年齢的に近い高校生の役ということで、イメージはしやすいかもしれないですね。

石川:確かに気を許した友だちと一緒にいるときのテンション感は想像しやすですね。ただ今回の役は、女性の中に男が1人ポツンといる状態なんですよ。僕自身、そういう経験があまりなかったので、そこをどうしようかなというのは台本を読みながら考えています。

――演出を手掛ける杉原邦生さんとは、すでにお会いしているとか…?

石川:杉原さんとは、一度ご挨拶するためにお会いしました。舞台の演出家ということで厳しい方なのかな…と想像していたのですが、台本を読みながら分かりやすくいろいろと教えてくださいました。緊張して最初は固かったんですが、だんだん慣れて自分が出せたかな…と思います。まだ不安と楽しみな気持ちが半分半分ですが、とにかくひきずり降ろされないように、しがみついてやっていこうという気持ちでいます。

石川雷蔵

不登校をきっかけにオーディションにチャレンジ

――デビューは中学校2年生とのことですが、俳優になろうと思ったきっかけは何でしたか?

石川:中学1年生の時、学校が嫌で不登校になってしまった時期がありました。本当に勉強が嫌いで、学校へ行くけれど部活だけ出て帰る日々が長く続きました。さらに幼稚園から不登校になるまでの間、僕はずっとサッカーをやっていて、将来はサッカー選手になるという夢がありましたが、上には上がいて、クラブチームに行く実力がなくサッカーを諦めたんです。

その様子を見ていた母親が「このままでは、やばい」となったみたいで、「スターダストさんのオーディションに申し込んだよ」と言われました。母親に言われるがまま動画を撮って、会場へ行って、しかも合格したら10万円もらえると聞いて「頑張ろう!」となって…(笑)、そうしたら受かったという感じです。

――どんなオーディションだったんですか?

石川:あまり記憶にないんですけど、集団面接みたいな感じで、いっぱい大人がいて…。僕は何もわからない田舎の子どもだったので、「うちの事務所で好きなタレントさんいますか?」と質問されても「なんという名前の人がいるんだっけ?」と考えているような感じでしたね。

――この世界で「やってみよう!」と決心したきっかけはありましたか?

石川:最初、スターダストの新人や若手で構成されたアーティストグループ「EBiDAN」 に参加させてもらいました。僕は幼稚園のときにダンスをやっていたので、EBiDANの活動は踊ったりできて、とても好きでした。

そんな中、お芝居の仕事をいただく機会があって「できる! 大丈夫でしょ!」という感覚で臨みました。その時は何も知らなかったので…。

でも実際に芝居をやってみると、この仕事の奥深さを痛感しました。僕は最年少だったんですが、すごいベテランの方ですら、監督に「これはどうかな」と質問しながら演技をしていらっしゃったんです。その時に「大丈夫でしょ!」というマインドでいたらダメだと気付きました。

この仕事でお金をいただくなら、タラタラやっている場合じゃない、これができなかったら何もできないと感じて、そこでスイッチが入りました。演じることについていろいろ考えるようになったら、この仕事はすごく面白いし、奥深い。しかもどれだけ頑張っても自分に満足することはなくて、もっともっとやらなきゃって追求できるものをようやく見つけたような気がしました。

――芝居をして、具体的にどういうところが楽しかったですか?

石川:自分と違うキャラクターになれるというのもありますが、どのキャラクターにも自分と似てるところがあると感じています。自分と考え方が似ているところを探したり、どんなに考えても分からない時は、いろんなジャンルのドラマや映画を見たり、引き出しを増やすようにしたら分かるようになってきました。

全然違う自分になれるというよりは、自分がなれる人間のストックを増やしていく…みたいなところが面白いです。「自分が知らない世界の人たちを見てみたい」という探究心みたいなものが、子どもの頃からありました。そういうわんぱくな心というか、ウキウキしてる感じを思い出させてくれる仕事だと思っています。

――今回演じる咲斗は、ご自身と共通点はありますか?

石川:咲斗は「ザ・普通の思春期の高校生」という感じですよね。台本のト書きで咲斗の行動がいろいろ書いてあるんですが「なんて分かりやすい、かわいい高校生なんだ」と思いますね。

そういうところは多分僕も咲斗と同じだと思うんです。顔に全部出ちゃうタイプで、嬉しかったらニコニコしてるし、例えば電車で面白い動画を見ていたら、知らないうちに口角が上がっていたりしますし(笑)。

自分で言うのもなんですけど、まわりから「憎めないよな…」と言っていただいたことがあるので、咲斗もなんだかんだ憎めないヤツなので、似ているような気がします。

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本名「石川雷蔵」への想いとは?

――ところで、石川雷蔵さんという名前はものすごいインパクトがありますが、芸名なんですか?

石川:本名なんですよ!

――本名ですか! ご両親が昭和の名優・市川雷蔵さんのファンだったとか?

石川:まさにそうです。市川雷蔵さんが大好きなんです。父がいつも時代劇を見ていて、僕が生まれた時に「苗字が石川だし、名前は雷蔵がいいんじゃないか」と。最初、祖父や祖母にめちゃくちゃ反対されたみたいです。「キラキラネームの反対で、シワシワネームじゃないか」みたいな(笑)。

でも僕はこの名前をすごく気に入っていて、自分の名前が嫌だなと思ったことは一度もないですね。なんかかっこいいし。

石川雷蔵は本名だからこの名前で仕事をさせていただいていますが、どうしても市川雷蔵さんの顔がチラつくじゃないですか。「自分は自分」と思っていますが、名前に恥じないようにしなければいけないというプレッシャーはありますね。名前のおかげで自分を鼓舞できます。

――名前のお話が出たので、少しプライベートなお話も伺いますね。趣味は筋トレと伺っています。どのぐらいのペースでなさっているんですか?

石川:実家暮らしなのですが、自宅にトレーニングの機械を全部揃えました。ベンチ、ダンベル、バーベル、懸垂バー、アブローラー、電動のバイクです。自宅だったら「今、筋トレしなきゃ!」と思った瞬間にできますからね。基本的に毎日トレーニングしています。

筋トレと一緒に食生活の管理をしていたんですが、最近は暑さでバテないようにごはんをたくさん食べていたら、筋トレで消費できるカロリー量をオーバーしちゃったので、体重が増えてヤバイです(笑)。

――散歩もお好きなんだとか? とても健康的ですよね。

石川:ロケでいろんなところに行ってお仕事するのですが、現地解散だったら送迎のバスには乗らずに近くの駅まで歩くことが多いです。また、地方で泊まりの仕事があれば、夜ブラブラ歩いて散策したり、朝起きたらウォーキングしたりしていますね。

石川雷蔵

わずかな時間でも記憶に残る俳優になりたい

――将来、どんな俳優になりたいですか?

石川:いいバイプレイヤーになりたいです。

もちろん主役ができたらすごいですし、かっこいいと思いますけど、映画を観ていると、脇を固めている俳優さんがいるからこそ、こういう空気になっているんだと感じることが多いんです。

「この人、何秒間しか出ていないのに、めちゃくちゃ記憶に残った」と、少しの時間でも作品に色濃く味を残せる俳優さんって、かっこいいなと思うんですよ。

主役ができたら素晴らしいですし、やりたいですけど、最終的にはどんなに限られた時間でも記憶にきちんと残る俳優になりたいです。

――最後にファンの方に、初舞台に臨む意気込みなど、メッセージをお願いします。

石川:今は、不安とワクワクが半々ぐらいで複雑な気持ちではあるんですけど、初舞台だし周りは先輩しかいないので、引きずり落とされないように必死にしがみついて何とか食らいついて、精一杯悔いのないように頑張りたいと思います。

この作品は、絶対にひとり一人に刺さるものがあると思っています。僕たちは、観たお客さんに1回で伝えられるように頑張りますので、ぜひ楽しみに待っていて、劇場にお越しいただければと思います。

取材・文・撮影:咲田真菜

石川雷蔵

KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『SHELL』

日程:2023年11月11日(土)~2023年11月26日(日)
会場:KAAT神奈川芸術劇場 <ホール>

作:倉持裕
演出:杉原邦生
音楽:原口沙輔

出演:石井杏奈、秋田汐梨 /
石川雷蔵、水島麻理奈、成海花音、北川雅、上杉柚葉、キクチカンキ、香月彩里 /
近藤頌利、笠島智、原扶貴子 /
岡田義徳 /
藍実成、秋山遊楽、植村理乃、小熊綸、木村和磨、古賀雄大、出口稚子、中沢凜之介、中嶋千歩、浜崎香帆

京都公演:12月9日・10日(日)京都芸術劇場 春秋座

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この記事を書いた人

国家公務員・一般企業勤務を経てフリーランスのライターになる。高校時代に観た映画『コーラスライン』に衝撃を受け、ミュージカルファンとなり、以来30年以上舞台観劇をしている。最近はストレートプレイも積極的に観劇。さらに第一次韓流ブームから、韓流ドラマを好んで視聴。最近のお気に入りはキム・ドンウク。