2025年2月15日、イギリスの劇作家サイモン・スティーヴンスの『ポルノグラフィ PORNOGRAPHY』と『レイジ RAGE』の２作品を同時上演するという画期的な挑戦を果たした舞台が、シアタートラムで開幕した。世田谷パブリックシアターが主催する本公演は、気鋭の演出家・桐山知也により、同じ出演者が2作品を１幕と２幕に分けて一挙に同時上演するというチャレンジングな企画だ。
サイモン・スティーヴンスは、20年間に約30本もの戯曲執筆や、リリック・シアターのアーティスティック・アソシエイト及びロイヤル・コートのアソシエイト・プレイライトを務めるなど、イギリス演劇界を担う劇作家の一人。
『ポルノグラフィ』は、演出の桐山氏が2021年にKAAT神奈川芸術劇場でリーディング公演として上演し、大好評を博した作品だが、今回『レイジ』と共に、サイモン・スティーヴンス作品のダブルビルとして、新たに演出し上演することになった。『ポルノグラフィ』『レイジ』の2作品をこのように連続で上演することは、世界でも初めての試みとなり、それを知ったサイモン自身も当初は驚き、その後、深く納得したという作家お墨付きの企画でもある。
『ポルノグラフィ』は、五輪開催決定に沸くロンドンを舞台に、2005年7月に発生した地下鉄・バス連続爆破テロ事件を題材に書かれた作品。被害者やその周辺の人々・実行犯など様々な人々の日常生活を、7つのオムニバス形式で描き出す。
『レイジ』は2016年にハンブルグにて初演。2015年から16年へと移り変わるイギリスの都市・マンチェスターの混沌とした大晦日の模様を捉えた、ジョエル・グッドマン撮影の写真から想を得た群像劇となる。
演出の桐山は、名だたる演出家の作品に演出助手として参加し、厚い信頼を得てきた。一方で、文化庁の新進芸術家海外研修制度でベルリンに留学した経験を活かし、ブレヒトやシェイクスピア、チェーホフなどの翻訳劇のほか、古典劇から新進作家の戯曲まで幅広く演出を手掛けるなど精力的な活動を続けている。
桐山による緻密でエッジの効いた演出を、強力なスタッフ陣と共に、11名の魅力的なキャスト陣が、シアタートラムの空間を巧みに使ったアクティングエリアを縦横無尽に往来しながら具現化していく。
2005年を舞台にした『ポルノグラフィ』、そして10年後の2015年を舞台にした『レイジ』、そして更に10年が経過した2025年の今。我々は何を手にし、何を失ってしまったのか!？ ぜひ、劇場で体感し、見届けてほしい。
開幕コメント
・桐山知也【演出】
初日が開きました。劇場中に緊張感が漲る「ポルノグラフィ」から一転してとてつもないエネルギーが爆発する「レイジ」のダブルビルが、今晩（2月15日）、観客の皆さんに立ち会って頂きようやく完成しました。作者のサイモンさんも驚いた2作品の連続上演ですが、今この2025年に、この出演者とスタッフだからこそ創ることの出来た2つの作品、というか2つで１つの作品には、理屈を超えた何かが沢山ありました。それが何なのかを目撃しに是非シアタートラムにお越し下さい。お待ちしています。
【出演】
・亀田佳明
試行錯誤を繰り返してきた稽古場でした。桐山さんとキャスト、そしてスタッフのプランや関わりが思いがけない発見につながり、非常に新鮮な毎日でした。最終リハーサルではポルノグラフィの緊張感、レイジの混沌の中の躍動感に演者ながら興奮を覚えました。お客様にどのように感じていただけるのか、これも楽しみのひとつです。
・土井ケイト
ついに初日開けました！！！初日をやってみて痛感することは、人間がそのまま何も装飾（武装）されないまま裸で舞台に立ってる感覚だということ。骨組みのまま、粗々しく、繊細に、ただ素朴に生きることを問いていこうと思います。役とかキャラクターとか性とか何も境界線がない世界。一緒に呼吸したお客様が何を受け取るか、感じるかとても楽しみです！千穐楽までよろしくお願いいたします！
・岡本玲
幕が開きました。観劇くださった皆さまに心から感謝申し上げます。淡々と進む中にも体温を、混沌の中にも優しさを感じていただけたら嬉しいです。言葉の力を信じること、目の前の相手を信じること、お客さまとの繋がりを信じること、偽らず生きることを諦めないこと、人間としての胆力を試されている気がします。最後まで真摯に頑張ります。劇場でお待ちしています。
・sara
稽古で座組一丸となって積み上げて来た世界に、お客様が交わり、どんな景色が見えるのか。ワクワクドキドキしています！シアタートラムの静謐な空間で、この作品の持つ内なる激しいエネルギーを存分に感じていただけるよう、精一杯努めたいと思います。千穐楽まで、よろしくお願いいたします。
・田中亨
戯曲から浮かんでくる無数のアイデアと、それらを自由に試させてくれた温かみのある稽古期間でした。今は無事開幕できたことにホッとしています。千秋楽まで誠実に貪欲に、向き合っていけたらと思います。劇場でお待ちしております！
・古谷陸
無事に本番を迎えて改めて得たものがあります。それはこの舞台は皆様に一方的にお届けするという類のものでなく、この作品の世界を舞台上と客席の垣根を越えて共有するということに意義や魅力が生じてくるという一体感です。これからの公演、どんな方々と何を共有できるのか楽しみでなりません。
・加茂智里
初日を迎える事が出来ました事を心より感謝申し上げます。お伝えしたい事が全て台詞の中にございます。サイモン・スティーヴンスさんの心を精一杯お借りして懸命にシアタートラムに立ちますので、是非劇場にお越しくださいませ。
・森永友基
まずは、誰一人欠けることなく、全員が揃って無事に初日を迎えられたことを何より嬉しく思います。とても難解で、手がかりも少なく、いかようにも解釈することができる二つの戯曲ですが、座組全体で丁寧にディスカッションを重ね、稽古を重ね、私達なりの答えを持って上演に臨んでおります。それがお客様にどう受け止められるか、非常に楽しみです。静と動が同居するアナーキーな世界観を、どうぞお楽しみ下さい。
・斉藤淳
沢山の方々のチカラが結集して、初日の幕が開きました。ご来場頂いた皆様、本当にありがとうございました。当然の事ですが、お客様の存在があって初めて作品が産声をあげます。その事を強く実感させられる作品です。これからご来場頂く皆様と、どんな時間を一緒に過ごす事が出来るのか、どんな作品がその日は産まれるのか、毎公演とても楽しみです。シアタートラムでお待ちしています！
・吉見一豊
初日開幕！今回の2本立ての企みとその配役のせいで……演じる役すべてが愛しい！面白いことになりました。皆様、ありがとうございます！
・竹下景子
お客様をお迎えして濃密な初日の幕が開きました。緊張と興奮と喜びがまだ身体の中を渦巻いています。桐山知也さんを中心にした最高のスタッフワークの下、亀田佳明さんはじめ共演の皆様とともに高低差8m近くのこの空間をどこまで自分のものにできるか。私の山登りは始まったばかりです。
サイモン・スティーヴンス ダブルビル 『ポルノグラフィ PORNOGRAPHY／レイジ RAGE』公演概要
【日程】2025年2月15日(土)～3月2日(日) シアタートラム
【作】サイモン・スティーヴンス
【翻訳】小田島創志（『ポルノグラフィ』） 髙田曜子（『レイジ』）
【演出】桐山知也
【空間構成】木津潤平【照明】横原由祐【音響】稲住祐平【衣裳】加納豊美
【ヘアメイク】鎌田直樹【アクション】渥美博【演出助手】戸塚萌【舞台監督】大垣敏朗
【プロダクションマネージャー】勝康隆【制作】田辺千絵美、豊島勇士
【プロデューサー】浅田聡子 【世田谷パブリックシアター芸術監督】白井晃
【宣伝美術】秋澤一彰 【宣伝写真】山崎伸康
【宣伝スタイリスト】加納豊美 【宣伝衣裳提供】ヨーガンレール 【宣伝ヘアメイク】鎌田直樹
【出演】亀田佳明、土井ケイト、岡本玲、sara、田中亨、
古谷陸、加茂智里、森永友基、斉藤淳、吉見一豊、竹下景子
【スウィング】伊藤わこ 森永友基
【チケット料金（全席指定・税込）】
一般8,000円 高校生以下4,000円
※劇場友の会、アーツカード、U24割引あり ※託児サービスあり ※車椅子スペースあり
※未就学児はご入場いただけません
【チケット取扱い】
世田谷パブリックシアターチケットセンター 03-5432-1515（電話・窓口10-19時）
※発売初日は電話のみ
世田谷パブリックシアターオンラインチケット https://setagaya-pt.jp/（要事前登録、24時間受付）
※チケットぴあ、イープラス、ローソンチケット、カンフェティでもチケット取扱いあり
【お問い合わせ】世田谷パブリックシアターチケットセンター 03-5432-1515（電話・窓口10時-19時）
【主催】公益財団法人せたがや文化財団
【企画制作】世田谷パブリックシアター
【後援】世田谷区
【企画協力】KAAT 神奈川芸術劇場（『ポルノグラフィ』）
【公式HP】https://setagaya-pt.jp/stage/16041/
▼作品概要
◆第一幕【PORNOGRAPHY ポルノグラフィ】
2005年7月6日、2012年に開催するオリンピックの地にロンドンが採択された。その翌日、祝賀ムードにわくロンドンで、地下鉄・バスの連続爆破テロ事件が起きた。舞台は都市で生活する人々の事件前と事件後の日常生活を、7 つのオムニバス形式で描きだしていく。子供を抱えるキャリアウーマン、女性教師につきまとう男子生徒、近親相姦に陥る男女、久しぶりに再会した元教え子と大学教授、孤独を愛する老婦人、そして爆破事件の実行犯と思しき男。地下鉄ホームの黄色いラインで隔てられるかのような生と死。だれもが都会の喧噪の中で孤独をかみしめている。
◆第二幕【RAGE レイジ】
一幕で地下鉄ホームに引かれた黄色いラインは、二幕では規制線と化している。舞台は、大晦日のイギリスの主要都市、マンチェスター。アンモラルな製宴を繰り広げる市民と、“取り締まり”の名の下に行われる警察の蛮行。街が徐々に狂乱の渦にのみ込まれていく中で、新年へのカウントダウンが始まる。ハッピーニューイヤー！だが、祝賀ムードは一転。人種差別、バイオレンス、愛欲が開放されていく。でもこの狂気の世界の向こうにこそ、真実の救いがあるのかもしれない・・・。大晦日という、ボーダーラインを越えていく都市空間を舞台に、現代社会の縮図があぶりだされていく。
