2018年・2022年に日本版キャストで上演され話題になった、ミュージカル『メリー・ポピンズ』が、2026年3-5月に東京公演(劇場:東急シアターオーブ)、5-6月に大阪公演(劇場:梅田芸術劇場メインホール)にて上演される。
■STORY
1910年のロンドン、チェリー・ツリー・レーンに住むバンクス家。一向に子守が居つかないこの家に、メリー・ポピンズが舞い降りてくる。魔法で部屋を片付けたり、カバンから何でも取り出したり不思議な力を持つメリーと、煙突掃除屋のバートと過ごす素敵な毎日に、子どもたちは大喜び。一方、父ジョージは銀行でのある融資をきっかけに、苦境に立たされてしまう。しかしこの出来事をきっかけに、バンクス家は家族の幸せを見つけ、それを見届けたメリーは、また空へ帰っていくのだった。
メリー・ポピンズ役は濱田めぐみ、笹本玲奈に加えて、朝夏まなとが新たに加わる。バート役は大貫勇輔、小野田龍之介に加えて、上川一哉の初参加が決定している。東京都内で歌唱披露イベントが開催された後、バート役を務める大貫勇輔さん、小野田龍之介さん、上川一哉さんへインタビューを行った。新たなメンバーを迎えて臨む再々演に向け、和気あいあいとした雰囲気でざっくばらんに思いを語ってくださった。
――歌唱製作発表会が先ほど行われ、盛り上がりましたね。まずは無事に終わった今の心境をお一人ずつお聞かせください。
大貫:(小野田のほうを見て)本当に名MCだなと思いました。すごく盛り上げてくださったので…。
小野田:(笑)。今回のイベントはクリスマスパーティーも兼ねていたので、皆さんにプレゼントもあったし、楽しんでいただきたかったですからね。
大貫:コング(桑田)さんもよく通る声で盛り上げてくださいましたしね。
小野田:コングさんの声を聞くとメリー・ポピンズが始まるな…という気持ちになります。
大貫:僕はめぐさん(濱田めぐみ)の声を聞くと「ああ、メリー・ポピンズが帰ってきた!」って思います。
小野田:確かにそうだね。メリーが歌う「Practically Perfect(何もかもパーフェクト)」を聴くと公演が始まるんだなと思うよね。
――初参加の上川さんはスポットライトが当たって、まるでディナーショーのように登場されましたが、いかがでしたか?
上川:緊張しましたね(笑)。今日は初めてお会いする方が多かったのですが、温かい雰囲気があったので楽しくできそうだと思いました。
小野田:メリー・ポピンズのカンパニーならではの温かみがありますよね。カンパニーだけでなく劇場にいらっしゃるお客様からも温かい空気を感じるのですが、それが今日の製作発表ですでに流れていた気がします。メリー・ポピンズも日本の演劇界に根付いてきたんだと思い、嬉しかったですね。

――皆さんはバート役を務められますが、今の時点でどのように演じていきたいですか?
大貫:この作品は4年ぶりの上演となりますが、僕はその間、いろいろな役を演じてきました。特に自分の中ではハリー・ポッターを1年間演じたのが経験として大きかったです。ロングラン公演は、自分のキャリアの中でかなり特殊だったのですが、その経験がめちゃくちゃ良かったんです。それを経て3回目のバートを演じる際に稽古場でどんなことを試せるか自分でも分からないですし、そこがすごく楽しみです。初演や再演のことはあまり考えずにフラットな状態で、いちからバートを作り上げていく気持ちでやれたらいいなと思っています。
小野田:この作品は初演から4年に1回上演されているんですが、俳優の人となりや素養がとても透けて見える作品だと思います。いろんな人生やキャリアを歩んできた方が集まっているので、それが透けて見える感じが楽しみです。
僕は初演で別の役をやっていて、再演で役代わりしてバートを演じました。僕が唯一、メインキャストの中でこの作品の全シーンに出たことがある俳優なんですよ。それが強みだと思います。テクニックとかそういうことじゃなくて、作品におけるバランスみたいなものはいろいろ見て勉強してきました。前回のバートから4年経ち、今の年齢でどうメリー・ポピンズと再会できるか、非常にワクワクしてます。
バートは労働階級の人間なので、年齢を重ねれば重ねるほど味みたいなものが出てくるのではないかと思います。若いとなかなか出しづらい部分があると思うので、人間的な部分が滲み出るといいなって思っています。
上川:僕はまず、高いところをどう克服するか…というところから始めないと(笑)。
――そういえば上川さんは、先ほどの製作発表で、高いところが苦手だとおっしゃっていましたね。
上川:そうなんですよ。製作発表が終わってから控室で、フライングは吊るされるからなんとかなるよ…と言われたのですが、バートは煙突の掃除屋ですからね。煙突は高くて狭いですし、恐怖心が増しますよね…。
大貫:煙突から出るからね。
小野田:煙突から出る時に「おっ!」ってなるからね。上川さん、レインボーブリッジを車で走るのが嫌なんだって。そうだとすると煙突のシーンは相当怖いよね。
――どうやって克服したほうがいいですか? 大貫さん、小野田さんからアドバイスは?
大貫・小野田:(声をそろえて)降板です(笑)!
上川:(笑)!
小野田:でもやってみるしかないですよね。
上川:実際にやってみて、アドレナリンを出すしかないかもね。
小野田:上川さんがミュージカル『リトルマーメイド』でエリックを演じた時、船のシーンはどうだったの?
上川:怖かった…。
小野田:あれで怖いんだ!
上川:自分が揺れるのではなく船が揺れているから、バランスがとれないし高さも怖かった。
小野田:そうしたら、上川さんが初日を迎えるまでに、僕と大貫さんで煙突を少しずつやすりでこすっておこうかな。少しずつ下がるように(笑)。でも上川さんの高所恐怖症宣言で、みんな「がんばれ!!」って応援していると思いますよ。

――ところでバートは不思議な魅力がある人だと思いますが、皆さんはどんな人だと思いますか?
大貫:初演と再演の時、バートがどういう人物かという設定を細かく決めていました。メリー・ポピンズが家庭教師になってくれて、それ以来バートはメリーにずっと憧れています。どこにいても自分というものがブレてはいけないと教えてくれたのがメリーなんです。この作品でバートは、メリーを助ける人物として存在しているのかなと思っています。
一方で、狂言回しといいますか、お客様へ物語を橋渡しする存在でもあり、傍観者でもあり、子どもたちやお父さんを変えていくピースのひとつでもあります。でも僕は基本的に、メリーを陰で支える人だと考えています。
小野田:バンクス家にメリーが来る時、なぜバートが出てきたのかという理由を考えるとわかりやすいと思うんです。バートは幼い頃、バンクス家のようにお父さんとうまくいかず、お母さんが塞ぎ込んでいる家庭の男の子だったんだろうなと思います。メリーと出会って彼女から生きる力・エネルギーみたいなものを感じながら、離れた後も彼女と出会った喜びや希望を胸に、家族と別れて自分の道を生きていきました。それでいろいろなことを経験し、人々に喜びを与えていく人生を歩んできた人だと思います。
ただ、メリーに会えない寂しさが実は芽生えていたんじゃないかなと思います。そんな時、メリー・ポピンズがまた会いに来てくれました。「あなたが子どもの時に過ごした家庭と似ているところがある」と連れて行ってくれたわけで、バートの感情的な部分にリンクすると思います。
だからバートがバンクス家のお父さんと二人で会話をする瞬間が、この物語の中でキーになると思います。バートは子どもの頃にお父さんに言いたかったこと、再会したら言いたいと思っていることをいろいろ抱えているのかもしれません。それと同時にバートは、ストーリーテラーの役割があります。パフォーマーではなく、普通の人であることがとても大事だと思います。異世界の人はメリーだけですからね。メリーがいる世界を一番楽しめるのがバートだからこそ、再びバートの前にメリーが現れたと思っています。
上川:僕はこれからどんどん役を構築していこうと思っているので、今お二人の話を聞くことが出来てすごく嬉しいですし、勉強になります。ここから何かを発見したり、共演者のみなさまと一緒に居ながら、自分の中で生まれてくるものがありそうで、それを一個一個見つけていきたいですね。
僕は以前からバート役をやりたいと思っていました。ここまで踊る役というのはなかなかないですからね。この作品を初めて観た時、皆さんがキラキラ輝きながら自由に踊って、心で動いている感じました。「ああ、こういう役をやりたいな」とすごく思ったんです。
でもいざ自分が演じることで、観た時に感じた楽しい気分がヒントになるかもしれないし、ぶつかる部分があるかもしれない。そのあたりは大貫先生と小野田先生にいろいろ話を聞いていこうと思います。
小野田:われわれバートチームは「見て学ぶ」システムですからね!
――「見て学ぶ」とは具体的にどのようになさるのですか?
小野田:ダブルキャストやトリプルキャストでは、ある程度稽古した後、チェンジしますよね。「こういう風にやるとこう見えるんだなぁ」とか、自分の役を他の人が演じているのを見て「あれはいいな。ちょっと盗んじゃおうかな」とか。周りがこういう感じだったらこう演じた方が正しいなと、トリプルキャストだとそういうことを冷静に見られる瞬間があるんですよ。
――トリプルキャストはメリットがたくさんあるんですね。
小野田:めちゃくちゃあると思います。
上川:それに心強いですよ。それぞれが全然違うバートになるでしょうし、シンプルに全員のバートを観たいなって思います。
大貫:メリーもトリプルキャストですし、他の役もダブルキャストですが、演じる方が変わると胸を打つセリフの箇所が違ったりするのが面白いです。それによって新たな気付きがあるんですよ。
小野田:忘れた頃にやってくる組み合わせもありますからね。「あなたはいつぶり?」みたいな…(笑)。
大貫:僕も何度かトリプルキャストで演じたことがあるけれど、全然一緒にならない人がいたしね。
小野田:極端な場合、稽古をしたことがない人と当たるときもありますからね。
――それは大変なのでは…?
小野田:めちゃくちゃ楽しいですよ! そういう時こそ自分をすべて捨てるんです。ある程度決まっていることがありますから、とにかく相手に集中できますし、自分についたアカが取れる感じが最高ですね。

――今回は新キャストの方が大勢いらっしゃいますが、楽しみなことはありますか?
大貫:僕はジョージ・バンクス役のお二人が変わったのが大きいと思っています。小西遼生さんと福士誠治さんで年齢がグッと下がりましたから、そこは大きな変化になると思います。バートはジョージ・バンクスとの絡みが結構深いので、どんな風に感じるのかなと今一番楽しみかもしれないです。
小野田:僕もジョージ・バンクス役のお二人が変わるところは、大きいと思いますね。
大貫:あとは子どもたち、ジェーンとマイケルね。
小野田:そして毎公演、メリーに再会する瞬間って言葉に表せないドキドキ感があるんです。このドキドキ感を尊敬や憧れに見せたいんですよ。
大貫:え? 今まで100%尊敬の感情でやってた? 恋心ゼロ?
小野田:うん。恋心はゼロ!
大貫:僕はちょっと恋心をいれていたよ。
小野田:僕の場合、恋心を10%入れてしまったら、30~40%の割合で表現してしまうからね。最初から憧れ100%マックスで演じてみて「あれ? もしかしてバートはメリーに恋をしてるんじゃない?」と見えたのなら、それはそれでいいかなと思っています。僕の場合、最初から恋心を入れると「見せちゃう」ことになるので、それは違うかなと。
大貫:メリーは保育園の先生みたいな存在だからね。具体的に結婚したいとかじゃなくて、憧れなんだけど、ちょっと好きっていうね。
小野田:そうそう! そしてやっぱりジョージ・バンクスですよ。初演から演じられてきた駒田一さんと山路和弘さんの印象がこびりついていますから。どういう風に変わっていくのか、それをシンプルに楽しんでいきたいです。
これまでのジョージ・バンクスより年齢が近くなったので、ひょっとすると同世代のパパ友みたいに見えちゃうかもしれないですよね。だからバートとしては、童心に帰る気持ちのふり幅を増やさないといけないのかなと思います。
上川:僕は誰との共演が楽しみというよりは、初参加組が新しい風となって経験者の方たちとどういう化学反応を起こせるか…というところですね。今回新しく生まれたカンパニーとして、いろんなシーンやキャストの組み合わせで面白いものがいっぱいできたらと思います。
――最後に今作のアピールポイントをお願いいたします。
上川:高いところに登れるようになった、僕の成長物語を観てください! という感じですね(笑)。そこに注目してください!
小野田:今日の製作発表会でもお子さんがいらしていましたが、この作品は、世代によって楽しみ方が違うんです。お子さんが観たら、メリーの魔法に「わーっ!」となってワクワクできるし、大人は忘れかけていたワクワクする気持ちを取り戻して、不覚にも涙してしまいます。そしてメリー・ポピンズの魔法は、感動すると同時にショーとしても非常に盛り上がります。前回はコロナ禍で、お客様にもいろいろな制限があった中で公演が行われました。今回は初演の時のようにナンバーが終わったら盛大に歓声を上げて手拍子、足拍子で盛り上がっていただきたいです。
大貫:再演時に息子が生まれたのですが、約4年の間子どもと向き合い2人目が生まれて、より父性が深まりました。「子どもたちのためなら何でもできる!」みたいな…。そういう気持ちになった以上、ジョージ・バンクスとのシーンで、気持ちが分かりすぎてしまうのでは…と心配になります。バートはドライな感覚でいなければいけませんからね(笑)。僕の父性が良いように作用するか悪いように作用するかわからないけれど、それは自分の中で楽しみな変化の一つです。今回、息子が初観劇すると思いますので、その点も楽しみに頑張ります!
取材・文・撮影:咲田真菜

ミュージカル『メリー・ポピンズ』公演概要

企画製作:ホリプロ/東宝
主催:ミュージカル『メリー・ポピンズ』製作委員会
東京公演:2026年3月28日(土)~5月9日(土)(プレビュー公演:3月21日(土)~27日(金)) 東急シアターオーブ
大阪公演:2026年5月21日(木)~6月6日(土) 梅田芸術劇場メインホール
<出演キャスト>
メリー・ポピンズ … 濱田めぐみ/笹本玲奈/朝夏まなと(トリプルキャスト)
バート … 大貫勇輔/小野田龍之介/上川一哉 (トリプルキャスト)
ジョージ・バンクス … 小西遼生/福士誠治 (Wキャスト)
ウィニフレッド・バンクス … 木村花代/知念里奈 (Wキャスト)
バードウーマン/ミス・アンドリュー … 島田歌穂/樹里咲穂(Wキャスト)
ブーム提督/頭取 … コング桑田/安崎 求 (Wキャスト)
ミセス・ブリル … 浦嶋りんこ/久保田磨希 (Wキャスト)
ロバートソン・アイ … 石川新太/DION (Wキャスト)
石川 剛、伊藤稚菜、岩下貴史、小形さくら、工藤 彩、熊澤沙穂、小島亜莉沙、小林遼介、今野晶乃、齋藤信吾、咲良、清水 錬、白山博基、高瀬育海、髙田実那、髙橋慈生、高山裕生、照井裕隆、東間一貴、中原彩月、長澤仙明、西村実莉、廣瀬喜一、福満美帆、MAOTO、水島 渓、吉岡慈夢、吉田玲菜(五十音順)
<公式サイト>https://marypoppins2026.jp
<公式X>@marypoppinsJP
●大貫さん
へアメイク:荒木由希子
●小野田さん
ヘアメイク:高原優子
スタイリスト:津野真吾(impiger)
●上川さん
ヘアメイク;浜香奈子
スタイリスト:綾部秀美

