相葉裕樹主演 ハジケ・る ポップコーン一座『テイ・る オブ ナイトメア』観劇感想

公開ゲネプロより 撮影:岸隆子

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2025年3月21日(金)~3月30日(日)東京・有楽町のI’M A SHOW(アイマショウ)にて、ハジケ・る ポップコーン一座『テイ・る オブ ナイトメア』~不思議の国の給仕係~が上演中だ。

愛をテーマに、岩崎う大(劇団かもめんたる)、池田テツヒロ、水川かたまり(空気階段)の脚本による3つのオムニバスストーリー、そしてブルー&スカイが手掛ける導入となるオープニング&エンディングは、日替わりゲストを迎えて上演。演出は加藤啓が担当する。

主演はミュージカルを中心に活躍する相葉裕樹。そして共演に須賀健太、丘山晴己、横山賀三、村上純(しずる)、坂田聡(ジョビジョバ)、オレノグラフィティ紫吹淳といった豪華なメンバーがそろった。

このたび3月22日(土)昼公演を観劇。その際の感想を述べてみたいと思う。

(以下、物語の内容に触れるため観劇前の方は注意してください)

「不思議の国のアリス」の世界観が漂う舞台に、どこか不思議な雰囲気が漂う紳士が客席に現れる。オープニング、闇の寸劇、エンディングで給仕係を演じる相葉裕樹だ。メインビジュアルで披露した衣裳を身にまとい、ゆっくりと客席に語りかける。相葉の語りは、どんな不思議な世界が待っているのだろう…と期待させるのに十分なものだ。

公開ゲネプロより 撮影:岸隆子

この怪しい館に迷い込むのが、旅人を演じる須賀健太とゲストが演じる「アリス」だ。筆者が観劇した日のゲストは広井雄士だったが、この役はゲストによって全く違う雰囲気になるのでは…と感じる。

公開ゲネプロより 撮影:岸隆子(左から 加藤啓、伊藤裕一、オレノグラフィティ

オープニングでアリスが穴に落ちてしまうところで舞台は暗転し、水川かたまり脚本のEpisode1とけろ魔法が始まる。全寮制の魔法学校に通う魔法使いの男子生徒スーガ(須賀健太)は、同じ部活の部長カエザ(横山賀三)と学友アイバル(相葉裕樹)に恋愛相談を持ちかける。ここまで聞くと青春ものに思えるが、なんと魔法学校の先生がかけた魔法によってアイバルがカエルの姿になり、せりふがすべてカエル語(?)なのだ。その魔法を解く方法がわからず困っている設定だが、主演の相葉をカエルにしてしまうとは、さすがかたまり…と筆者は心の中でつぶやいた。

公開ゲネプロより 撮影:岸隆子

魔法学校の校長先生役の紫吹淳の強烈なキャラクターも笑ってしまったが、やっぱりアイバルに目がいってしまう。物語の結末は、スーガの恋路の行方とアイバルが人間の姿に戻る方法がピッタリクロスし、すべてが回収され「なるほど~~」とうなってしまった。ちなみに筆者は空気階段のコントが好きで、今回の作品にもかたまりワールドが感じられ、大変満足した。

公開ゲネプロより 撮影:岸隆子

一つのエピソードが終わると、間に寸劇が入る構成になっている。先ほど穴に落ちたアリスが迷いこんだのは、不思議の国のアリスのような世界で、そこで繰り広げられるのは、ハートの女王(紫吹淳)と町の住人たちによる不条理劇だ。ここでも紫吹が強烈な個性を放つ。紫吹が宝塚歌劇団に在団中、筆者はかなりの頻度で劇場に通ったが、この方は退団してからのほうが魅力を発揮しているような気がする。今回のハートの女王、ハマり役だ。

公開ゲネプロより 撮影:岸隆子

そして、岩崎う大(かもめんたる)の脚本によるEpisode2 もう一人の僕がスタート。猟奇殺人事件の犯人として取り調べを受けている青年・丹羽(相葉裕樹)は、自分の主治医だった精神科医・ソノダ(丘山晴己)の一家を殺害した罪で逮捕される。丹羽の自白を得ようとする2人の刑事ナベ(須賀健太)とハン(坂田聡)だが、丹羽は「自分はやっていない。自分の中の別の人格が殺したのだ」と主張する。

公開ゲネプロより 撮影:岸隆子

取調室に座る丹羽を演じる相葉は、中性的で上品な雰囲気を醸し出しており、見とれてしまうほど美しい。Episode1のカエル姿から一変、ファンはワクワクするのではないだろうか。そんな丹羽を刑事として追い詰める須賀と坂田のコンビネーションが面白い。特に須賀は、ここまでさまざまな役で登場しているが、この刑事役が一番良い。

自分の中の別人格がやったと主張する丹羽に対して「じゃあ、その別人格を出して見てよ」というナベとハン。「そういうのってさ、人がいたらできないもんでしょ? 外にいるから出てきたら教えてよ」という2人のせりふが面白い。Episode1同様に、かもめんたるのコントで醸し出される独特の雰囲気が、この芝居にも感じられる。

すったもんだがあって、ようやく出てきた別人格はジグ(村上純)と名乗る人物。丹羽と違って下品な雰囲気があり、いくら別人格とはいえなんだか様子がおかしい。結末は意外なもので、こちらもななめ上をいくコント師、う大らしい仕上がりだった。

再び寸劇で、アリス(広井雄士)、村人(オレノグラフィティ)、ウサギ(加藤啓)が登場する。村人がウサギにマジックを見せ、その後アリスに対して無茶ぶりリクエストをする。ゲストによって違う反応が見られるので、楽しいシーンになるだろう。

最後は、池田テツヒロの脚本によるEpisode3 ミュージカル『戦士ルシアン』。王に忠誠を誓う将軍、ルシアン・エリアーデ(相葉裕樹)は、ルシアンを慕う部下のエルネスト(丘山晴己)と共に、異教徒との戦争に勝利し、祖国・ロンギニアに凱旋した。しばしの平和が訪れたかのようにみえたが、ロンギニアでは、若く美しい男たちの行方不明事件が頻発する不穏な動きがみられた…。

公開ゲネプロより 撮影:岸隆子

中世の騎士の衣裳をまとった相葉は、ミュージカルで本領発揮する。部下のエルネストを演じる丘山とのコンビネーションも抜群。2人の戦闘シーンはファンにとっては大いに盛り上がるのではないだろうか。歌とダンスがふんだんに盛り込まれており、短いながらもしっかりとしたミュージカルに仕上がっている。

王のアダム(横山賀三)と王妃のアンドレア(紫吹淳)の不思議な関係、頻発する若く美しい男たちの行方不明事件の謎など、ミステリアスな雰囲気を醸し出しながら物語が進行していくが、最後「えっ? なんで??」と笑ってしまうオチが待っていた。

エンディングは、ハッピーエンド版とミラクルエンド版の2種類があり、筆者が観劇した日はミラクルエンド版だった。出演者が勢ぞろいしどんなやり取りがされるのか、残り4公演を観劇される方は、ぜひ楽しんでいただきたい。

文・咲田真菜
写真:オフィシャル提供

公開ゲネプロより 撮影:岸隆子
目次

初日を迎えるにあたって、キャストコメント

相葉裕樹
いよいよ初日の幕が上がります。ここまでスタッフ、キャストの皆さんと力を合わせ、一つ一つ丁寧に作り上げてきました。クセの強いキャラクターたちが暴れまわる、不思議でハチャメチャな世界。そして、ついに物語はほぼ完成しました。ほぼ? そう、まだ足りないんです。この作品の最後のワンピースは客席に座る皆さんの「笑い声」。「え、なにこれ?」「なんでそうなるの?」「……いや、でもちょっと面白いな」「ぐふふふ」そんな、じわじわくる笑いがこの物語を完成させます。僕らも最後まで、この妙な世界にどっぷり浸かります。なので、皆さんも 「考えるより、感じる」 くらいの気持ちで、不思議な世界を一緒に楽しみましょう!

須賀健太
『テイ・る オブ ナイトメア』ついに開幕です!今日まで稽古を重ねてきましたが、一作品ごとに本当に違う世界観になっていて”オムニバスすぎるオムニバス”となっております。笑 更にここにゲストの皆さんのエネルギーが加わると思うと今からワクワクしております。不思議の国の世界をぜひお楽しみください! 劇場でお待ちしております!

丘山晴己
オムニバス作品に初挑戦します!個性的な世界観と素敵なキャストでお届けする本作は、コメディ要素がありつつも演劇としての魅力を大切にし、絶妙なストーリーの繋がりを楽しめる作品です。初日のお客様との化学反応が楽しみです!千秋楽まで全員で駆け抜けられるよう頑張りますので、よろしくお願いします!

横山賀三
お客様の反応が未知でとてもワクワクしています。コント、ミュージカル含め全く違った色を持った3つのコメディを新鮮な気持ちで楽しんで頂けたらと思います。稽古場ではニヤニヤが止まらない日々でした。僕自身も毎公演で生まれる空気を楽しんで千秋楽までぶつかっていこうと思います!!

オレノグラフィティ
本作はすべて『愛』をテーマにした物語だと、稽古初日と最終日に演出の加藤 啓さんが仰いました。悲劇と喜劇は表裏一体と言いますが、ポップで軽快なコメディにも、ダークで悲壮的なドラマにも、奥底には多種多様な『愛』が流れていることを感じていただける作品になったと思っております。人と人との繋がりを強く持たなければ、笑いも悲しみも産まれない。そして繋がるための大きな衝動は『愛』でしかないのだと、稽古を通して毎日訴えかけられておりました。あとは観ていただける皆様の『愛』と劇場で深く繋がれることを楽しみに、初日を迎えたいと思います。どうか日常の全てを忘れてお楽しみください。

村上純(しずる)
ばっち(相葉くん)が僕を指名で呼んでくれたこと、そしてそのお陰でこのカンパニーに参加させてもらえていることに、稽古期間を経て改めて心より感謝しています。キャスティングの時点でその作品の良さはほぼ決まってくる、みたいな考え方を見聞きしたことがあるんですが、まさにそれを今回の共演者の皆さんとの稽古を通して痛感しています。 振り返ると、スタッフさんも含め稽古場にいる全員が同じトーンで作品作りの楽しさを共有していたように思います。 おかげさまで変な遠慮など一切せず、皆さんとコミュニケーションを図れたと勝手に思っています。 そのベースとして、演者みなさんが各々個人で緊張感を持っていたから、根底でのお互いへのリスペクトが感じられたからだと思います。 その結晶として、本番ではお客さん皆さんに演劇でもコメディーでもコントでもない、恐らく観たことのない不思議で面白い舞台を届けられると思っています。

坂田聡(ジョビジョバ)
全ての稽古を終え充実してこの日を迎えました。素晴らしい作家陣の脚本を元に、稽古場で考え抜きました。バリエーションに富んだ楽しい作品になったと思います。前知識なく見ていただいても大丈夫です。とても楽しい仕上がりになったと思います。本番が楽しみです。さあどうなることやら。劇場でお待ちしております。

加藤啓
演出とウサギ役を担当します。相葉くんをはじめとするキャスト、そしてスタッフが、面白い作品にするために愉快に誠実にトライしてくれて、豊かな稽古の日々となりました。誰も見たことのない演技体を突然見せてくれたり、僕の意図を分かりやすくフォローしてくれたり、短期間で思わぬ変化をしたり、あるシーンの大きなアイデアを出してくれたり、嬉しい瞬間がたくさんありました。オムニバス公演なので、皆さん複数の役をやりますが、色んな人物を愛を持って生きてくれて、僕は稽古中ずっと飽きずに笑って心動かされてきました。さらに頼もしい日替わりゲストも登場します。本番が本当に楽しみです。是非観て下さい。

紫吹淳
今回、俳優・紫吹淳としてある意味初めての扉を開けております。今年の初仕事がテレビ朝日の池田テツヒロさん脚本の『家政婦のミタゾノ』から始まり又すぐにこの様な機会を頂き不思議なご縁を勝手に感じています。新たな扉を模索しながら開けたその扉が皆様にどう映るかドキドキです。お笑い、コントと全くわからない世界でもがきながら開けたその扉の先に何があるのか…。是非、その姿を沢山のお客様に劇場で見届けて頂けましたら幸いです。そして、その紫吹淳が皆様にどう映るのか…。こっそり教えてくださいませ~笑。その回答を聞くのも怖い気もしますが、この素敵なご縁を頂戴して私自身も楽しみながら公演に臨みます。劇場で…お待ちしております。

ハジケ・る ポップコーン一座『テイ・る オブ ナイトメア』公演概要

日程:2025 年3 月21 日(金)~3 月30 日(日)
会場:I’M A SHOW

脚本:岩崎う大(劇団かもめんたる)、池田テツヒロ、水川かたまり(空気階段)、ブルー&スカイ
演出:加藤啓
音楽:オレノグラフィティ

出演:相葉裕樹、須賀健太、丘山晴己、横山賀三、オレノグラフィティ、村上純(しずる)、
坂田聡(ジョビジョバ)、加藤啓、紫吹淳

日替わりゲスト:伊藤裕一、広井雄士、前川優希、鯨井康介、松田岳、spi、村井良大、上口耕平、平野良、内藤大希(出演日順)

チケット料金:12,000 円(全席指定) チケット発売日:3 月9 日(日)AM10:00

オフィシャルHP:http://tale-of-nightmare.com/

お問い合わせ:る・ひまわり info@le-himawari.co.jp
主催:る・ひまわり

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この記事を書いた人

国家公務員・一般企業勤務を経てフリーランスのライターになる。高校時代に観た映画『コーラスライン』に衝撃を受け、ミュージカルファンとなり、以来30年以上舞台観劇をしている。最近はストレートプレイも積極的に観劇。さらに第一次韓流ブームから、韓流ドラマを好んで視聴。最近のお気に入りはキム・ドンウク。

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