2025年2月21日(金)~ 2025年3月2日(日) 新国立劇場 小劇場にてMMJプロデュース公演『しばしとてこそ』が上演される。
<STORY>
いつの頃か、学校制度における〈卒業〉は自分自身決断する行事となっていて、高校の3年制はもはや標準的なガイドラインでしかない時代。
ダイチ(阿久津仁愛)・ミツル(押田 岳)・タクロウ(坪倉康晴)の仲の良い3人組は、いよいよ3年生の終わりが近づいたある日、卒業のタイミングを自由に選べる〈N学年〉にそろって進級し、「もう少しだけ……」と、〈やり残したこと〉に一緒に挑戦してから卒業することを決意する。
……恐る恐る足を踏み入れた〈N学年〉の教室にいたのは、年齢不詳の生徒から30代、40代、50代……最年長は60代の生徒。そして、混沌とする教室で翻弄される若い担任教師。ダイチたち3人だけでやり遂げるはずだった大切な〈卒業イベント〉に、なぜか次々と介入してくるこのクセ強なクラスメイトたち。
彼らはなぜ卒業しないのか?そして、それぞれの「卒業」への思いと選択とは―?
オリジナリティ溢れる発想・展開・台詞が魅⼒で、ノンストップコメディの⻤才・⼤歳倫弘(ヨーロッパ企画)と第31 回読売演劇⼤賞3 部⾨受賞、新時代の総合芸術の旗⼿・⼩沢道成が、初タッグで新国⽴劇場に初進出する。
本作は「卒業」のタイミングを選択する自由が、高校の学校制度の中に存在している世の中があったら?…という物語。3年で卒業せずに“N学年“に進級することを自ら選択する仲の良い3人組の高校生役を、映像に舞台にと活躍目覚ましく、人気と実力を兼ね備えた阿久津仁愛、押田 岳、坪倉康晴が演じる。
このたび初日を約1週間後に控え、⼤歳倫弘さんにインタビュー取材をする機会に恵まれた。作品に対する想いや自身がどのような高校生だったかについてもざっくばらんにお話いただいた。

――初日まであと1週間ですが、この作品がどのように仕上がるか、期待感などのお気持ちを教えてください。
⼤歳倫弘(以下、⼤歳):稽古の状況は動画等でお知らせいただいているので、いい感じに仕上がっているなと感じています。ここからどこを詰めていくんだろうと思っています。(演出の)小沢さんはもっと先の理想的な形を考えていらっしゃると思いますが、僕から見ると「ここはこういうふうにするんだ!」という発見がありますし、すごいなあと感じています。
――「なんとなく学校のお話がいいと思うんです」という小沢さんの意見で始まったという今回の企画ですが、具体的にお二人でどのように作り上げていきましたか?
⼤歳:小沢さんは美術をやられている方なので、画から入られるタイプの方なんです。具体的に今書きたい画や、僕の過去作の台本を読んでくださった時に思い浮かんだのが学校だったそうで、そこがスタートになりました。「自由に考えていきましょう」と小沢さんに言っていただけるのはいいなあと思ったので、そこに乗っからせてもらいました。なぜ学校という画が思い浮かんだのかを2人でディスカッションしていくうちに、小沢さんは僕の過去作からノスタルジーを感じるとおっしゃったんです。ノスタルジーといえば学校…という発想なのかもしれません。
――ノスタルジー=学校という発想になるのは、小沢さんも大歳さんも高校時代に何かしらやり残したものがあったからでしょうか?
⼤歳:この作品は、高校時代にやり残したことをもう1回やる話ですが、実は小沢さんも僕もそういう想いが無いんですよ。無いということはそういうものを残さないように、当時すごく意識して生活していたと思うんです。「やり残したことをこのまま持って大人になるとまずいぞ」というのを感覚として持っていたのかもしれません。今回のように2人でコラボする作品は「お互いこうだよね」という共通項があった方がいいと感じました。小沢さんと僕の共通項がそこなので、それを広げていったら面白いという話になりました。
――演出家としての小沢さんはどんな方ですか?
⼤歳:僕も演出をやりますが、小沢さんは役者さんもやられてる方なので、より深く役者さんらしい稽古の進め方や気持ちの作り方にアプローチできる方だと思いました。僕は全体のしつらえを見て判断して進めていくタイプなのですが、小沢さんは「こうするにはこういうプロセスが必要だよね。そしたらここでもう一間入れた方がやりやすくない?」という具体的なアプローチをするんです。役者に寄り添った演出をされる方だと思って、自分にはない部分なのでうらやましく見ていました。
でも役者に寄り添いすぎると引いた目で全体を見られなくなりますが、小沢さんはそこのバランスもものすごく調整がお上手です。ズームと引きをパパパっとすごい速度でやられるので、器用な方だなあ…と思います。
――物語の中心となっていく3人の男性、阿久津仁愛さん、押田 岳さん、坪倉康晴さんの仕上がりはいかがですか?
⼤歳:読み合わせの時から、すでに役を作り上げてくださっていたので、いい感じにいけるんじゃないかなと思っていました。その印象のまま、出来上がってきた感じがします。3人は、思春期ならではの感情を体現できる方たちです。そういう難しいところをお客さんに伝えられるお芝居をされているので、台本を読み込む力やこちらの意図をパッとつかめてる方たちだと思っています。偉そうな言い方になってしまいますが、安心した気持ちで3人を見ています。
――3人と絡んでいく他のキャストですが、個性的なメンバーがそろいました。ヨーロッパ企画の中川晴樹さんもいらっしゃいますが、他のキャストへの思いについてお聞かせください。
⼤歳:ヨーロッパ企画のメンバーである中川さんは、いつもより面白そうにやっている感じがします(笑)。自分の書いた本で楽しそうに演じてくださっているのはうれしいし、面白がってくださっているのがありがたいです。
――先ほど高校時代にやり残したことはないとおっしゃっていましたが、大歳さんはどんな高校生でしたか?
⼤歳:高校生活が楽しくなりすぎないように意識していた高校生だった気がします。大人になって「高校時代が一番楽しかったな」と言っている方をテレビで見たりしますが、それは良くないな…と思っていました。楽しいことをしすぎないようにセーブしていて、例えば絶対この年まではカラオケに行かないとか、友人の家には泊まらないとか、レクリエーションを全部封印していました。それらのレクリエーションの解禁日をずらしていけば、高校時代が楽しくなり過ぎないのではないかと考えていました。
――どういうお気持ちからそうなったんですか?
⼤歳:中学生、高校生は親からもらったおこづかいで楽しいことをするので、楽しいに決まっているんですよね。そうなると楽しさが爆発しちゃうと思ったので、友だちと遊ぶのを控えたし、大学に入学するまで女性と付き合わないようにして、楽しいと思えることを小刻みに出すようにしていきました。そして、人生で一番楽しい想い出が10代に集中してしまうのは、ちょっと悲しいと感じたんです。大人になってから「高校時代に戻りたい」というネガティブな感情が出ないようにわざとそういう行動をとっていましたが、当時の同級生には全く理解されませんでしたね(笑)。
――大歳さんの心境が理解できる高校生はなかなかいないかもしれませんね。同級生からはどう思われていたのでしょうか?
⼤歳:みんながどう思っていたかは分かりませんが、多分浮いていたような気がします。自分自身では浮いてるとは思っていませんでしたが…。同級生と久しぶりに会って昔の話をすると「浮いてたよ」と言われます(笑)。
――本作のようにN学年があったら、大歳さんは進級すると思いますか?
⼤歳:N学年に進級しないような生活をしたと思います。進級しちゃったら超楽しそうだけれど楽しさだけで進級すると怖いので、近寄らないようにして怯えながら生活をしたでしょうね。
問題なのは、仲良し5人組のうち4人がN学年に行くとなったら、自分も進級してしまいそうな点です。仲良しの1人がN学年に進むなら「頑張って!」と声をかけて済むと思うのですが、4人となると自分だけ逆方向へ行けるかどうかは自信がないです。そういう状況になったら、何かしら理由をつけてN学年に進みそうな気がしますね。自分のこういう気持ちは、今回の作品に反映されていると思いますし、そこが芝居の肝になっています。
――この作品をどういう方に見ていただきたいですか?
⼤歳:僕と小沢さんは同い年で、僕たち自身の学生時代への目線が強く出ている作品なので、当時の同級生が観てくれてどう思うか一番気になるねと2人で話しています。個人的には、高校時代に「楽しくなり過ぎないようにしている」と言った時に「何言ってるの?」と笑っていた友だちに対して「僕のほうが合っていたじゃん!」と言えたら最高ですね(笑)。どっちが合っていたり間違っていたりという問題ではないんですけど…。
この作品は、放課後帰るまでの20分ぐらいの時間を使って、教室の後ろでやっていた遊びの延長のような劇になればいいなと思っています。その時間は、学校から次の場所へ行くまでのロスタイムだと思うんですよ。そういう時間がずっと続くような劇になればいいという目標で作りました。稽古場の動画からは、そういう空気感がよく出ていたので満足しています。
――劇場へ行こうかどうか悩んでいる方に向けて、メッセージをお願いします。
⼤歳:高校時代にやり残したことがあるという思いを少しでも持っている方には、いい具合に刺さる劇だと思っています。高校時代にこれをやっておけばよかった、あれをやっておけばよかったと思っている人がいらっしゃったら、ぜひ劇場にいらしてください。観劇したら持って帰れるものがありますと伝えたいです。
そして現役の高校生が観てくれたらどんな感想を持ってくれるのか…も興味があります。もしかしたら「やり残したことなんてないし、毎日めちゃくちゃ楽しい」「早く大人になりたい」など、全然違う意見を持っているかもしれませんよね。それはそれで楽しみです。
取材・文:咲田真菜
大歳倫弘(おおとし・ともひろ)プロフィール

1985年7⽉30⽇⽣まれ。兵庫県出⾝。
2005年、ヨーロッパ企画に参加。以後、作家として、ラジオの構成や、ドラマ・映画の脚本を数多く⼿がける。また、舞台の脚本・演出も⾏っており、2009年から「ヨーロッパ企画 イエティ」名義で、プロデュース公演を定期的に上演しているほか、外部プロデュース公演でも活躍。近年の主な作品に、【映画】『たぶん杉沢村』(23・原作・脚本)、『にがくてあまい』(16・脚本)【ドラマ】『ポケットに冒険をつめこんで』(23・TX・脚本)、『こっちむいてよ美和子さん』(23・Hulu・脚本)、『真夜中にハロー!』(22・TX・脚本)、『お⽿に合いましたら。』(21・TX・脚本)【舞台】『ブラック・コメディ』(24・上演台本・演出)、『あいつが上⼿で下⼿が僕で』(23・脚本・演出)、『結婚しないの!?⼩⼭内三兄弟』(21・演出)、『ナナマルサンバツ THE QUIZ STAGE』シリーズ(21・19・18・脚本・演出)などがある。
公式HP: https://www.europe-kikaku.com/staff/ootoshi-tomohiro/
MMJ プロデュース公演『しばしとてこそ』公演概要
【公演日程】2025年2月21日(金)~3月2日(日)
【会場】新国立劇場 小劇場
【作】 大歳倫弘(ヨーロッパ企画)
【演出・美術】 小沢道成
【出演】阿久津仁愛 押田 岳 坪倉康晴 小島梨里杏 富山えり子 中川晴樹
/安西慎太郎 池津祥子 大鷹明良
【チケット料金】S席:¥9,800 A席:¥7,800 カジュアルシート:¥2,800
※カジュアルシートは当日券のみの販売。詳細は公式HPにて。
【一般チケット】発売中
【公式HP】https://mmj-pro.co.jp/shibashitotekoso/
【公式X】@shibashitote
【お問合せ】メディアミックス・ジャパン https://www.mmj-pro.co.jp/contact/stage/
【企画製作】株式会社メディアミックス・ジャパン(MMJ)