山口乃々華、奥村佳恵、和田琢磨出演 ミュージカル『SERI~ひとつのいのち』開幕 ゲネプロレポート

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conSept 新作ミュージカル『SERI〜ひとつのいのち』が、2022年10月6日(木)東京・博品館劇場で初日を迎えた。

本作は、倉本美香氏による『未完の贈り物(2012年刊)』が原作のミュージカル。両目ともに眼球がない障がいを持って生まれた娘・千璃(せり)の誕生にまつわる医療裁判、繰り返される手術など、千璃自身が感じたかもしれないことに想像を巡らせ描かれていく。

タイトルロールの千璃役を務めるのは山口乃々華。千璃の母・美香を演じるのは奥村佳恵。そして二人を支える父・丈晴役は、和田琢磨が務める。

初日挨拶に山口、奥村、和田が登壇。鮮やかなブルーの衣装に身を包んだ山口は「ワクワクしています。時間をかけて丁寧にお稽古してきたので、早く皆さんに観ていただきたい気持ちでいっぱいです」と弾ける笑顔で語った。

母親役の奥村が「この作品をお客様にやっと届けられるということで、うれしい気持ちでいます」と語ると、父親役の和田は「とても温かい作品に仕上がっています。多くの方に千璃の生きざまを知ってほしい」と意気込んだ。

作品の中で一つだけアピールしたいシーンは? との質問に山口は「無言劇に注目してほしいです。せりふを言わずマイムで表現しているのですが、日常のにおいや空気感が伝わると思います」とのこと。

奥村は「チームワークを見てもらいたい!」と座組の結束力をアピールし、和田は「山口さんが演じる千璃ちゃんの身体表現に注目してほしい。言葉がなくても生きることに対しての情熱をすごく感じます」と熱く語った。

取材会は、3人の仲の良さが垣間見れる和気あいあいとした雰囲気で進行。「愛されていると感じる瞬間は?」という質問に珍回答(?)をした和田を、山口と奥村が全力でフォローする楽しい場面も見られた。

最後に代表して山口が「この作品には、人との支え合いや愛されているからこそ自分が存在できること、そして楽曲にも素敵なメッセージが詰め込まれています。ぜひ劇場にいらしてください」と挨拶した。

その後、ゲネプロ(公開通し稽古)が行われた。

キャスト全員が円になってさまざまな音を奏でるところから舞台はスタート。やがて本作の表題曲「SERI~ひとつのいのち」の大合唱となり、これから始まる物語への期待が高まる。

そして、初めての子どもの誕生にワクワクする若い夫婦、美香と丈晴のシーンへうつる。ニューヨークで出産をする夫妻からは、不安よりも早く子どもに会いたいという喜びに満ちた気持ちが圧倒的に大きいことが分かる。そんな二人の様子を、これから生まれようとしている千璃が見つめている。

しかし生まれてきた子は、両目ともに眼球がない障がいを持っていた。出産に立ち会った産婦人科医・オオクボは逃げるようにその場を立ち去り、看護師たちも動揺している。すべての人に祝福をされて生まれてくるはずだった我が子が、こんな形で好奇の目にさらされるなんて…と美香は激しく落ち込む。ここから美香と丈晴の戦いが始まるのだ。

もともと前向きな性格で、友人からも「パーフェクトな人」と言われていた美香は、障がいを持った娘・千璃を大切に育てていこうと決心するが、子育ては想像以上に厳しく、少しずつ疲弊していく。その様子を奥村と和田は無言劇で表現していくのだが、笑顔だった美香が無表情になっていく様子を、奥村は丁寧に演じ、そんな妻を切なく見つめる和田も印象的だった。

千璃を演じる山口は、奥村と和田に寄り添うようにして、千璃の心情を身体表現で見せる。夜泣きのシーンは身体全体をバタつかせ、激しい音を鳴り響かせる。その音に反応するかのように美香は戸惑いの表情を見せながら千璃をあやす。

そんな日々が続く中、やっと千璃が笑顔を見せた瞬間のシーンが美しい。それまでとは違った山口の笑顔が美しく、また伸びやかなダンスが、千璃のこれからの人生を明るいものにしていくのだと表現しているように見えた。そして美香の驚きながらも喜ぶ姿は、観るものの胸を熱くさせる。

丈晴を演じた和田は、包容力があり、前向きで明るい夫を生き生きと演じていた。美香を献身的にサポートし、千璃のために何が一番良いことなのかを真剣に考える。夫としても父親としても、最高の男性なのではないだろうか。和田にぴったりハマっていると感じるのは、柔らかな雰囲気と聞いていて心地よい声色にあるのかもしれない。

美香と丈晴は、千璃を巡ってさまざまなことで意見が対立するものの、最終的に主治医だった産婦人科医・オオクボを訴えることを決意する。

無責任で無神経な医師、オオクボ(植本純米)と美香と丈晴の訴訟をサポートしていくミラー弁護士(樋口麻美)は、対照的な存在として描かれている。ミラー弁護士を演じた樋口は、劇団四季時代に数々のヒロイン役で拝見してきたが、弁護士という重厚な役を演じながらも軽快なダンスシーンをいくつもこなし、大活躍だった。

苦悩しながら、娘・千璃と一緒に成長していく美香と丈晴。そんな家族3人の奮闘を美しい生演奏とともに堪能できる本作。障がいを扱っているので重いシーンがあるものの、光を感じられる作品であることは間違いない。

そしてもう一つ付け加えるなら、ぜひ本公演のパンフレットも手に取ってほしい。読み応えのあるキャストインタビューが美しい写真とともに載っており、原作者・倉本美香氏のメッセージも掲載されている。

ミュージカル『SERI〜ひとつのいのち』は、東京・博品館劇場で10月16 ⽇(⽇) まで上演。その後、大阪・ 松下IMPホールで10 ⽉ 22 ⽇(⼟) 〜 10月23 ⽇(⽇) の日程で上演される。

ミュージカル『SERI〜ひとつのいのち』

東京 2022年10月6日(木)~10月16日(日) 博品館劇場
大阪 2022年10月22日(土)~10月23日(日) 松下IMPホール

原作:倉本美香『未完の贈り物』
脚本·作詞:高橋亜子
作曲·音楽監督:桑原まこ
演出·振付:下司尚実

出演:山口乃々華 奥村佳恵 和田琢磨
植本純米 小林タカ鹿 樋口麻美 辰巳智秋 内田靖子 長尾純子 小早川俊輔

公式サイト:https://www.consept-s.com/
公式Twitter@consept2017
公式Instagram@consept2017

取材・文・撮影:秋乃麻桔

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