ミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』観劇レポート

『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』

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2022年9月25日(日)~9月30日(金)Bunkamuraオーチャードホールで上演されたミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』。東京公演が千秋楽を迎えたが、9月29日(木)昼公演を観劇してきた。

ストーリー(ホリプロ・公式サイトより引用)

二千年の歴史を誇る北斗神拳の修行に励んでいたケンシロウ(大貫勇輔)トキ(小西遼生)ラオウ(福井晶一/永井 大)の三兄弟。南斗の里から来たユリア(平原綾香/May’n)、そのお付きのトウ(AKANE LIV)とともに成長していく三兄弟の中から師父リュウケン(宮川 浩)は末弟のケンシロウを次の伝承者に選んだ。折しも世界を覆う核戦争によって文明社会は崩壊し、人々は弱肉強食の時代を生きることとなった。ケンシロウはユリアとの愛を育み共に荒廃した世界を生きていこうとした日、南斗のシン(植原卓也/上田堪大)にユリアを強奪され、胸に七つの傷を刻まれる。絶望の中放浪の旅に出たケンシロウは、たどり着いた村で出会った二人の孤児バット(渡邉 蒼)リン(山﨑玲奈/桑原愛佳)と共に旅を続ける。一方ラオウは世紀末覇者・拳王を名乗り、世界を恐怖で支配しようとしていた。ケンシロウは女戦士マミヤ(清水美依紗)が治める村の用心棒レイ(三浦涼介)と共にラオウによって牢獄カサンドラに囚われたトキを救出するが、その後ユリアが失意の中でシンの居城から身を投げたことをラオウから知らされる。ケンシロウはラオウとの闘いの末に壮絶な最期を遂げたジュウザ(伊礼彼方/上川一哉)をはじめとする愛すべき仲間や強敵(とも)たちの哀しみを胸に、世界に光を取り戻すべく救世主として立ち上がるのだった。  

最初に申し上げておくと、筆者は『北斗の拳』を1ミリも知らない。本公演は出演者に惹かれて観劇を決意したのだが、原作を全く知らない筆者でも十分理解できる、分かりやすい内容だった。

ケンシロウを演じた大貫勇輔は、期待どおりの素晴らしいパフォーマンスだった。2018年に上演された『REON JACK3』で初めて大貫を見た時、「ものすごいバネを持ったダンサーだな…」と感嘆したものだったが、本作ではそのバネを活かした素晴らしいパフォーマンスで、華麗に闘うシーンをキメていた。そして暴力が支配する絶望的な世界で、救世主として成長していく姿を力強く繊細に演じ、役者として度量の広さも垣間見れた。

ユリアを演じた平原綾香は、さすがの歌唱力を披露。昨今はミュージカル出演も増えた平原だが、やはりこの人の歌は独特の輝きがある。大貫とのデュエットでは、平原が声量を圧倒してしまうのでは…と懸念したが、息の合ったきれいなデュエットにうっとりした。

今回初参加となったトキを演じる小西遼生。公演後のアフタートークで「ビジュアルがトキそのもの!」と共演者から絶賛されていたが、歌の見せ場も多く、何よりもケンシロウを想い自ら犠牲になる献身的な姿が涙を誘う。

そしてラオウ役を演じている福井晶一。『レ・ミゼラブル』のジャン・バルジャン役が印象的なので、今回のようなヒール役は新鮮だ。歌はもちろんのこと、恵まれた体格を活かした武闘シーンも美しく、馬に乗って登場するシーンはヒールなのにも関わらず、神々しくもあった。『北斗の拳』を1ミリも知らない筆者でさえ知っている「我が生涯に一片の悔いなし」という名せりふとともに昇天していく姿には、大きな拍手が送られていた。

個人的には、レイを演じた三浦涼介にくぎ付けになった。『マタハリ』でその独特のビジュアルだけでなく美しい歌声で、筆者にとって気になる俳優の一人となったが、今回のレイも存在感抜群だった。

リュウケン役・宮川浩の冒頭の歌が少し弱々しかったことや、ジュウザ役の伊礼彼方が思っていたほど見せ場が多くなかったことなど、残念に思うところはあったが、石丸さち子の演出は、原作ファンも原作を知らない人にも配慮したものになっていたと感じた。

「アタタタ!」「お前はもう死んでいる」などのせりふが出ると、原作ファンと思われる人たちから拍手が沸き起こったことも、とても興味深く感じた。

本作はこのあと、2022年10月7日(金)~10月10日(月祝)キャナルシティ劇場(福岡)で上演される。ぜひ原作を知らない人も、いつもとは少し違った雰囲気のミュージカルを楽しんでほしい。

文・咲田真菜

『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』

■原作:漫画「北斗の拳」(原作:武論尊 漫画:原 哲夫)
■音楽:フランク・ワイルドホーン
■演出:石丸さち子
■脚本・作詞:高橋亜子

■キャスト

ケンシロウ: 大貫勇輔
ユリア:平原綾香/May’n(Wキャスト)
トキ:小西遼生
ジュウザ:伊礼彼方/上川一哉(Wキャスト)
シン:植原卓也/上田堪大(Wキャスト)
マミヤ:清水美依紗
トウ/トヨ:AKANE LIV
リュウケン他:宮川 浩
レイ:三浦涼介
ラオウ: 福井晶一/永井 大(Wキャスト)

バット: 渡邉 蒼
リン:山﨑玲奈/桑原愛佳(Wキャスト)

リハク他:中山 昇
ダグル他:宮河愛一郎
青年ラオウ他:一色洋平
青年トキ他:百名ヒロキ
フドウ他:澄人
ミスミ他:齋藤桐人
岩瀬光世
輝生かなで
坂口杏奈
LEI’OH
小板奈央美
柴田実奈
島田惇平
野間理孔
森内翔大
熊野義貴(スウィング兼)

邵 治军 (シャオ・ジイジュン)
黄 凱(ホワン・カイ)
陳 健国 (チェン・ジェングゥオ)
蔡 晓强 (ツアイ・シャオチャン)
李 悦  (リ・ユエ)
王 思蒙 (ワン・スメン)

<東京公演>
期間:2022年9月25日(日)~30日(金)(公演終了)
会場:Bunkamuraオーチャードホール
主催:ホリプロ/ 博報堂DYメディアパートナーズ/染空间 Ranspace/イープラス

<福岡公演>
期間:2022年10月7日(金)~10日(月祝)
会場:キャナルシティ劇場
主催:九州朝日放送/キャナルシティ劇場/サンライズプロモーション東京
協力:キョードーマネージメントシステムズ
お問い合わせ先: キョードー西日本 0570-09-2424(11:00~17:00日・祝休)
http://www.canalcitygekijo.com/performance/25232
企画制作:ホリプロ

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この記事を書いた人

国家公務員・一般企業勤務を経てフリーランスのライターになる。高校時代に観た映画『コーラスライン』に衝撃を受け、ミュージカルファンとなり、以来30年以上舞台観劇をしている。最近はストレートプレイも積極的に観劇。さらに第一次韓流ブームから、韓流ドラマを好んで視聴。最近のお気に入りはキム・ドンウク。

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