2022年8月18日(木)Netflixで、韓国ドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』の最終話が配信された。
自閉スペクトラム症の弁護士、ウ・ヨンウが天才的な記憶力を武器にさまざまな事件を独自の視点で解決していく法廷ドラマ。出演しているキャストの魅力はもちろんのこと、「自閉スペクトラム症」という発達障がいを忠実に描き、きれいごとだけでなく真実をしっかり伝えているところが人気の要因だといえる。
最終話が配信されてロスに陥っている筆者が、改めて本作の魅力を語ってみたい。(以下、ネタバレあり)
主なキャストは下記のとおり。
ウ・ヨンウ(パク・ウンビン)自閉スペクトラム症の天才弁護士。大手法律事務所ハンバダに勤務
イ・ジュノ(カン・テオ)ハンバダの法律事務職員
チョン・ミョンシク(カン・ギヨン)ヨンウの上司で、ハンバダのシニア弁護士
チェ・スヨン(ハ・ユンギョン)ヨンウのロースクールの同窓生で、ハンバダ勤務の弁護士
トン・グラミ(チュ・ヒョニョン)ヨンウの親友
クォン・ミヌ(チュ・ジョンヒョク)ヨンウの同僚弁護士
ウ・グァンホ(チョン・べス)ヨンウの父
テ・スミ(チン・ギョン)大手法律事務所テサン代表弁護士
パク・ウンビンの類まれな演技力と美しさ
主人公のウ・ヨンウは、5歳の時に父親のグァンホがトラブルに巻き込まれているのを見て「傷害罪!」と叫んだ。それが彼女が初めて発した言葉だった。
それまで一言も言葉を発しなかったヨンウを心配した父は、医師から自閉スペクトラム症の傾向があると伝えられていた。ようやく言葉を発した我が子に喜びを隠せないグァンホだったが、さらに自身が所有していた法律書をヨンウがすべて暗記をしていたことを知り驚く。ヨンウは天才的な記憶力の持ち主だったのだ。
そんなヨンウは、まわりの人とはちょっと違うところがあるものの、その類まれな才能を活かし弁護士になった。かつて法律家を目指してソウル大学で学んでいた父親の代わりに夢を叶えたのだ。
しかし一つのことにこだわりを持ちすぎて時に饒舌になったり、まわりの空気を読めなかったり、時々他人の言っていることが理解できなかったりといった自閉スペクトラム症の特徴を持ったヨンウは、弁護士としてさまざまな壁にぶち当たることになる。
ヨンウを演じるパク・ウンビンは、視線を合わせない、同じ動作を繰り返すなど自閉スペクトラム症の特徴的な所作を見事に再現している。せりふの言い回しもかなり研究したと思われ、独特の話し方がとても印象に残った。特に好きでたまらない「クジラ」の話になるとものすごく饒舌になり、圧倒される。その調子で法廷でも、熱くなって熱弁をふるうこともしばしばだ。
ちょっと変わったところだけではなく、ドラマの中でウンビンのかわいらしさが堪能できるシーンも盛りだくさんだ。第2話『脱げたウエディングドレス』では、調査のためにウエディングショップをイ・ジュノ(カン・テオ)とともに訪れ、ウエディングドレス姿を披露するというサービスシーンがある。
仕事のためにカップルを装ったヨンウとジュノだが、ウエディングドレスを着たヨンウがあまりに美しく、ボーっとしてしまうジュノがとても良い。そしてそんなジュノの様子を見た時のヨンウの笑顔がたまらなく魅力的なのだ。
2人は物語が進んでいくにつれ、お互いかけがえのない存在となっていくが、思えばこの瞬間から2人の関係はスタートしていたのかもしれない。
ウンビンの類まれな演技力と美しさ、両方が味わえるのがこのドラマの醍醐味だ。
カン・テオの爽やかな笑顔にノックアウト
法律事務職員として、ヨンウを温かく見守るジュノは、もう一人の主人公といっても良いだろう。初対面の時からヨンウのことを特別な目で見ることなく、紳士的に対応する姿が印象的だ。回転ドアを通ることができないヨンウを助けたところが二人の初めての出会いだった。
それ以後、あらゆる場面でジュノはヨンウを助けるが、常にヨンウを弁護士として立てている。そしてヨンウが持つ独特の法律センスを尊敬し「僕もあなたのような弁護士に依頼したい」と値千金の笑顔で言ってしまうものだから、見ているこちらはあっという間に心を奪われてしまう。
ジュノは、ヨンウの同僚弁護士のクォン・ミヌ(チュ・ジョンヒョク)と同居しているのだが、ミヌが上昇志向旺盛で、ロースクールを首席で卒業し、独特の着眼点を持つヨンウに嫉妬をする一方で、ジュノはそういうところが全くない。
法律事務職員という立ち位置で仕事に対して真摯に向き合い、「弁護士の黒子に徹する」ことを誇りに思っているジュノ。そんなジュノは、ヨンウの突拍子もない行動や言動に、嫌な顔をせずに向き合っていく。
第4話『3兄弟の対立』で江華島へ出張した帰り、ヨンウの親友・グラミのすすめで夕日を見に寄り道をするジュノ。ここから二人の距離は少しずつ近づいていく。ジュノの包み込むような優しさが最初から最後まで失われないところが、このドラマの人気を支えた要因の一つといっていいだろう。
ヨンウを支える魅力的な3人の人物
成績優秀でロースクールを首席で卒業したヨンウだが、高校時代はいじめに合い、つらい思いを味わってきた。そんなヨンウを助けたのがグラミだ。グラミは勉強が苦手で、教室の一番後ろを陣取っているタイプ。「サイコ」というあだ名で呼ばれていたことを考えるとかなり問題児だったようだが、なぜかヨンウと意気投合。口は悪いけれど、常にヨンウを守り尊重する姿に微笑ましいものを感じた。
そして、ロースクール時代からヨンウのことを温かく見守ってきたスヨン。ヨンウは「春の日差しのような女性」と形容している。その言葉どおり、自閉スペクトラム症のことを理解しつつも、ヨンウが暴走しそうになるとさりげなく止め、仕事だけでなくプライベートでも力を貸していく。
ヨンウとスヨンの上司、チョン弁護士も、なくてはならない存在だ。当初は自閉スペクトラム症のヨンウに戸惑いながらも、彼女が持つ才能にいち早く気付き、弁護士として成長できるようにサポートしていく。
ジュノやこの3人の存在があるからこそ、ヨンウは孤独を感じずに日々生活できているのかもしれない。だからこそヨンウは最終話で「私の人生はおかしくて風変わりだけど、価値があって美しいです」ときっぱり言い切る。そんなヨンウの美しさと凛々しさに涙がこぼれてしまった。
Netflixシリーズ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』独占配信中
文・咲田真菜