南沢奈央インタビュー 『2時22分 ゴーストストーリー』「私も客席で観たかった!と思うほど面白い作品」【インタビューVol.47】

2026年2月6日~3月1日 東京 シアタークリエにて、その後3月に愛知・大阪にて『2時22分 ゴーストストーリー』が上演される。

【STORY】
サムとジェニーの夫婦は、最近ロンドン郊外に古い家を購入し、リノベーションしながら住み始めたばかり。赤ん坊のフィービーと共に、幸せな毎日を送るはずだった。ある晩、友人のローレンとそのボーイフレンドであるベンをディナーに招待したジェニーは、毎日夜中の2時22分に2階の子供部屋のベビーベッドの周りを歩き回る音がすると打ち明ける。ジェニーはその音は幽霊だと信じているが、サムはそんなジェニーの考えを信じない。ジェニーはローレンたちに2時22分までこの家に留まり、何が起こるか一緒に見届けてほしいと頼む。やがて4人が迎える2時22分――果たして彼らを待ち受けるものとは……?

本作は、2021年8月にロンドンで初演されて以来、斬新なストーリーが話題を呼び、世界各地で上演されている大ヒット作だ。脚本を手掛けるのは、BBCでホラーのポッドキャストのヒット作を持ち、テレビ・ラジオ・舞台等の同ジャンルで受賞歴のある若手作家、ダニー・ロビンズ。そして日本版の演出には、読売演劇大賞・最優秀演出家賞、菊田一夫演劇賞など、数々の演劇賞に輝き、日本を代表する演出家の1人、森新太郎を迎える。

主人公サム役には、俳優、NEWSのメンバーとして幅広く活動し、作家としては2作連続直木賞候補になるなど、多岐に渡り活躍する加藤シゲアキ。その妻ジェニー役には、連続テレビ小説『わろてんか』のヒロインを務め、舞台ではミュージカル『ロミオ&ジュリエット』『アナスタシア』で主演として確かな歌唱力と表現力を披露する葵わかな

ローレン役には、ドラマ、映画、舞台と幅広く活躍し、『メディア/イアソン』(森新太郎演出)『No.9-不滅の旋律-』など難役・話題作に挑戦し着実にキャリアを重ねる南沢奈央、ベン役には、その独特の存在感で映像を始め舞台でも幅広く活躍し、『アルトゥロ・ウイの興隆』『ワタシタチはモノガタリ』での好演が記憶に新しい、松尾諭が務める。

このたび、ローレン役の南沢奈央さんにインタビューすることができた。現代劇で森とタッグを組む楽しみや、共演者の印象について語ってくださった。

――本作に出演が決まった時の気持ちをお聞かせください。

今回3回目ですが、森新太郎さんとご一緒できるのが楽しみです。これまで森さんとは、シェイクスピアやギリシャ悲劇といった古典作品でご一緒いたしました。今作は現代物の会話劇でしかもホラーです。森さんがどう演出されるのか楽しみです。

この作品はワンシチュエーションで、出演者の4人が本当に幽霊は出るのか、そもそもいるのかいないのかと議論します。それによって人間関係が少しずつ揺らいでいき、最後にびっくりするラストが待っています。実際に脚本を読んで「え? どういうこと? もう1回最初から読もう!」という気持ちになった作品なので、今からお稽古が楽しみです。

――ホラー作品ならではの伏線がたくさんあるのですか?

そうなんです。「あの時のことって何だったんだろう?」と思い、確認して「そうだったんだ!」と納得します。何度も読み返すと伏線がめちゃくちゃあるんですよ。1度ご覧になったら「もう1回観たい!」という気持ちになる作品だと思います。

――会話劇ということで、登場する4人の会話の応酬が観られるのでしょうか?

そういうパートもあります。加藤さんが演じるサムと葵さんが演じるジェニー夫婦には生まれたばかりの赤ん坊がいて、2階に子ども部屋があるという設定です。どちらかが2階へ様子を見に行くために抜けるシーンがあるのですが、その際に舞台に残るのは2人だったり3人だったりします。

私が演じるローレンはサムと20年来の友だちなので、2人になった時に昔話をしながら「実はそうだったのね…」という雰囲気になります。4人揃ったら幽霊がいるのかいないのかで議論になったり、それぞれの意見の方向性が食い違ったりもします。

物語の序盤はさりげない会話で、友だち同士のホームパーティーなのかな? という雰囲気ですが、実はそれぞれ心の底で抱えていたものがあり、次第にそれが出てきます。後半にかけて、4人の間に緊迫した雰囲気が漂います。

――お稽古はこれから始まるということ(取材日時点)ですが、共演者の印象をお聞かせください。

今日4人で初めて顔を合わせたのですが、すごく明るい感じでよかったです。4人一緒に撮影する時間がありましたし取材も受けたのですが、皆さん、明るくて! こういうホラーのお話で、重い雰囲気になるのは嫌だな…と思っていたのですが、加藤さん、葵さん、松尾さんは本当に楽しい雰囲気でホッとしました。

――今回カップルになるのは松尾さんです。いかがですか?

経験豊富な方ですので、すごく安心しています。ドラマで2回ほど共演させていただいたことがあるのですが、松尾さんのオープンな人柄にすごく安心できました。何をやっても受け入れてくれそうな懐の深さがあるし、ユーモアもお持ちなので楽しみで仕方がないですね。ただ、役の中ではローレンと松尾さんが演じるベンはあまり上手くいっていなさそうな雰囲気です。それも後半に向けて緊迫していく理由の一つになりそうです。

――南沢さんが演じられるローレンは心理セラピストという設定ですが、今の時点でどんな役作りをしようと思っていますか?

基本的にローレンは、感情的になって先走るタイプではありません。頭が良くて普段は精神的な病を抱えた患者さんと向き合っているからか、クールな人だと思います。でも2時22分に何かが起きるという心霊現象を聞いたり、それに伴うやり取りをしたりしていく中で、次第に感情的になっていきます。私としては、普段はサバサバと現実を見ている人なのに、だんだん変わっていく姿を見せられたら面白いのかな…と思います。

葵さんが演じるジェニーは、何かを心配したり感情が表に出たりする女性です。そんなジェニーとの対比も作れたらいいのかなと考えています。

――心理セラピストということで、ローレンは頑なに心霊現象を否定する感じがあるのかな…と思ったりもしますが、いかがですか?

ローレンには、怖いから幽霊の存在を否定したいという気持ちがあります。でもローレン自身も過去に心霊現象に遭遇した経験がある人なんです。彼女はそれに癒されたところもあるので、すべて悪い霊ではないと思っているタイプです。加藤さんが演じるサムは、頑なに幽霊はいないと言い張ります。その頑なさに対してローレンは「霊はいる!」と論破したい気持ちになっていくのかもしれません。

――南沢さんご自身は、霊の存在を信じますか?

どうだろう……? ホラーは苦手なので、幽霊は見たくないタイプなんですよ。でも見たくないからこそ想像しちゃって怖いです。昔、祖母の家の天井のシミを見て、何かが見えてくると勝手な想像をしたことがありました。目を背けたいけど、背けられないみたいな感じですね。

そういうところがあるので、ホテルに一人で宿泊するのは怖いですね。部屋に絵が飾ってあると怖いですし、ベッドの下に何かいないかチェックしたりして…(笑)。そういう時に限って、変な音が聞こえたりするんですよ。実際は何も体験したことはないんですけどね。

南沢奈央(撮影:咲田真菜)

――ところで演出を手掛ける森さんはどんな演出家ですか?

愛と情熱が大きい方です。稽古も妥協なく、できなければ何度でもやりますから体力が必要ですね(笑)。厳しいですけど、理不尽なことは一切ありません。「確かにそうだ!」と納得できることしか言われないので、信じて食らいついていきたい気持ちになります。今回もきちんとできるようになれば、絶対面白いお芝居になると思います。

シェイクスピアでご一緒した時のことですが、森さんは誰よりも早く稽古場にいらっしゃるんですよ。せりふもすべて覚えているので、こんなに作品のこと、役のことを考えてくれる演出家さんっているの? と思いました。ご自分でセットの中に入って、せりふを言ってイメージされているのを見ていると、私ももっともっとやらなければ! という気持ちになります。

――今回も森さんと話し合いをしながら進めていく感じになりそうですか?

そうですね。私が何かを提案すると結構面白がってくださいます。新しいことにどんどんチャレンジさせてくださいますし、一つに固めようとしないで、いろいろな可能性を残しながら演出してくださるのがすごくありがたいです。たまに「昨日言っていたことと違う」と思うこともありますが(笑)、そういうときは「昨日言ったことはやっぱり違ったわ」と訂正してくださいますね。

――そういう感じですと、シェイクスピアは大変だったのではないですか?

大変でした。劇場に入ってからも大きく変わっていきましたし、森さんは千秋楽まで妥協されない方です。より良くしたい気持ちで前に進むので、ゴールはないんだと森さんとご一緒するたびに思います。

――今回は現代劇ですから、先ほどのお話にもありましたけれど、これまでとは違った森さんの側面が見えてきそうですね。

古典は独特の言い回しがありますので、それをいかにお客さんに上手く伝えるか、飽きさせないで見せるかというポイントがありますが、今回は現代ものでナチュラルな会話です。

以前は「声を出す」「滑舌よく」ということが重要で、「ここで呼吸を入れて」「ここを低くして」と、まるで楽譜が用意されているかのように教えていただきました。今回はリアルな会話が求められるので、「ここで見せたいものは何か」ということを大切にされるのかなと思ったりしています。

――楽しみなような怖いような…というところでしょうか。割合としてはどんな感じですか

楽しみが大きいです! 今回もきちんと台本読みの時間を取られると思うので、この戯曲について、みんなで深く共有する時間が楽しみです。全員が集まれば同じ方向へすぐに向くと思います。

私自身の役で言うと、サムとは長年の親友だしジェニーとも友だちです。ベンは恋人だけどそんなに長い付き合いではない…というように、それぞれと関係しています。その関係性の中で、見せる顔が少しずつ違ったりするのを出せたら良いかもしれません。少人数で密なやり取りをしますので、言葉のニュアンスで関係性を表現したいです。

――ご自身が演じるローレンとの共通点、一方で全く理解できないところはありますか?

ローレンは怖くなったらひたすらお酒を飲むんですよ。私もローレンの立場になったらそうなりそうです。お酒も好きですし(笑)。怖いことや悩んでいること、考えたくないことがあるとお酒を飲んでしまうローレンの気持ちはよく分かります。

理解できないところは、ローレンはちょいちょい皮肉っぽくトゲのある言い方をするんです。たぶん過去に起きたことを全部覚えている人なのかもしれません。「昔こうだったよね」というように根に持つタイプなのですが、私はあまり過去に執着しないタイプなので、そこは全然違います。

――本作はスリリングなお話ですが、最近スリリングな経験はされましたか?

(しばらく考えて)私は山登りが好きで番組もやらせていただいているのですが、この間長野の2000メートルほどの山に登ったんです。そうしたら、思っていたより早くまわりが暗くなったので怖かったですね。山に詳しいガイドさんがいらっしゃったので安心でしたが、活発に活動する動物の気配があったりして、真っ暗な山は怖いと改めて思いました。

――本格的な山登りをされているのですね! 魅力は何ですか?

自然の中に行くだけで気持ちが浄化されるんです。そして、自分の足であんな高いところまで行けたんだ! という達成感もあります。作品が終わるごとに気持ちをリセットしに行く場所になっています。肉体的には疲れるけど、気持ちは本当にスッキリします。

南沢奈央(撮影:咲田真菜)

――作品の話に戻りますが、南沢さんご自身はゴーストに会ってみたいですか?

おじいちゃん、おばあちゃんであれば会いたいです。悪いことをするゴーストだけじゃないはずですし、おじいちゃん、おばあちゃんだったら守ってくれそうですから…。でも出てくる時は、驚かさないように出てきてほしいです。この作品でも言っているのですが、なんでゴーストは真夜中に出てくるの? って。お昼に出てきてくれれば、びっくりしないのに(笑)。

――改めて、本作への意気込みをお聞かせください。

密に作っていくことになると思うので、まずはキャスト全員で団結して、そして森さんとコミュニケーションを取って人間関係を築いていけば、おのずと立ち上がってくるドラマがたくさんあると思います。面白いことは間違いないので、それをより面白くしていくにはどうすればよいか、森さん、そしてキャスト全員で作っていくのが本当に楽しみです。私も客席で観たかった! って思うぐらい(笑)。

いろいろ衝撃を受ける作品ですし、シアタークリエでこの空気感を共有できるのは、劇場に来ていただくことの醍醐味の一つだと思います。2時22分が迫っているというドキドキ感を一緒に楽しんでいただきたいです。

取材・文・撮影:咲田真菜

『2時22分 ゴーストストーリー』公演概要

2026年2月6日~3月1日 東京  シアタークリエ

2026年3月6日~3月8日愛知東海市芸術劇場

2026年3月12日~3月16日大阪  SkyシアターMBS

【CREATIVES】
作:ダニー・ロビンズ
翻訳:徐賀世子
演出:森新太郎

【CAST】
■サム:加藤シゲアキ/物理学教授。作家
■ジェニー:葵わかな/サムの妻。小学校の教師で、生まれたばかりの娘フィービーを子育て中。
■ローレン:南沢奈央/サムの旧友で、心理セラピスト
■ベン:松尾諭/ローレンの新しいボーイフレンドで、建設業者
■ミラー巡査:岡崎さつき ■スターリング巡査:駒井健介

<公式ホームページ> https://www.tohostage.com/ghost-story/

スタイリング/加藤暢子
デパリエ ニュウマン新宿店 03-6380-5541


咲田真菜

国家公務員・一般企業勤務を経てフリーランスのライターになる。高校時代に観た映画『コーラスライン』に衝撃を受け、ミュージカルファンとなり、以来30年以上舞台観劇をしている。最近はストレートプレイも積極的に観劇。さらに第一次韓流ブームから、韓流ドラマを好んで視聴。最近のお気に入りはキム・ドンウク。

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