2025年8月6日(水)東京・日本青年館ホールにて、ミュージカル『コレット』が開幕する。20世紀初頭のパリを舞台に、信念を貫き自らの道を切り開いたシドニー=ガブリエル・コレットの波乱に満ちた人生をオリジナル・ミュージカルとして上演する。
波乱万丈な人生をたくましく生き抜くコレットを明日海りおが演じ、コレットの最初の夫・ウィリー役に今井朋彦、ストーリーの語り部の役割を担うベルトラン役にCLASS SEVENの大東立樹、コレットを支えるミッシー役に七海ひろき、コレットの2番目の夫・アンリ役に吉野圭吾、コレットと敵対するメグ役に花乃まりあ、そしてコレットの母親・シド役に前田美波里といった面々が名を連ねる。G2がオリジナル脚本・作詞・演出を手掛け、荻野清子による音楽で物語を紡ぐ。
初日に先立ち開幕直前取材が行われ、明日海りお 、今井朋彦、大東立樹 (CLASS SEVEN)、七海ひろき、前田美波里が登壇した。

舞台衣装に身を包み、笑顔で登場した5人。MCから初日を迎える心境や手応えを質問され、明日海は「新作のオリジナルミュージカルということで、いちから作り上げたものをようやく皆さまにご覧いただけるので楽しみです。今は安全確認をしながら、やりたいことができるように頑張りたいと思います」と語った。
続けて今井は「楽しみしかありません! この作品を良くするためにどうすればいいか、自分に何ができるかを全員が常に考えているカンパニーでした。プリンシパルもアンサンブルも関係なく、自分の意見を稽古場に持ち寄って話し合う稽古期間を過ごしてまいりました。その成果があらわれていると信じていますのでとても楽しみです」と答えた。
前田は「日本が誇る創作ミュージカルができたのではないかと、心から思っております。フランスが舞台ですが、いい形で日本語の良さが出ていますし、うまく世界観に入り込んでいただける作品だと思います」と自信を見せた。
大東は「スタッフさんもキャストの皆さんも素敵な方々で、たくさんのことを教えていただきました。身を委ねる気持ちで頑張ります」と応えたあと続けて「お芝居のことは全部今井さんが教えてくださいました!」と付け加えた。
そんな大東に対し今井が「やめてください。そういう嘘はいけません!」と笑顔で突っ込んだものの、大東は「イマイズムが入っています!」と気合の入った言葉で断言した。
七海は「早く皆さんにお届けしたいという気持ちでいっぱいです。ミュージカルということで、曲がフランスの雰囲気に合ったおしゃれな感じに表現されていると思います。コレットの心境の変化と合わせたお芝居の部分、そしてミュージカルの部分も楽しんでいただきたいです」と語った。
役作りで苦労したエピソードを問われると、明日海は「このミュージカルで起きることは、ほぼ実話です。『えっ? こんなことが起こるの?』と信じられないことばかりです。そんなコレットの半生を2時間半で描くので、展開がとにかく早い。普段の私の感覚だと全くついていけないので、気持ちの高まりみたいなものをいつもの3倍くらいでやらないといけないので、苦労しています。コレット自身も個性的ですが、まわりがあまりにも個性的でエネルギーがある人たちなので、コレットが普通の人にみえないように頑張っています。」と語った。
今井は「コレットの夫・ウィリーを演じますが、人に厳しく接したり辛く当たったりするのは、ほぼ地なので何の苦労もありませんでした!」と冗談まじりに語ったあと「役は自分一人で作るものではないので、舞台上で関わる方と場を作るつもりでやってきました。僕が演じる役がどういうふうに見えるか、感想を聞くのが楽しみです」と答えた。
今回3役を務める大東は「それぞれキャラクターがすごく濃いので、同じ人のようにならないように、分けて演じたと思っています!」としつつも「…どうだろう…??」と共演者のほうを伺うしぐさも。「語り部は、たんたんと話すイメージがあったのですが、G2さんから『ベルトランに関しては、語っている最中も感情を持ち合わせて言葉を発してほしい』と教えていただきました」と役作りについて、G2からアドバイスがあったことを明かした。
3役のうち大変だった役を問われると「うーん難しい! 全部大変だな…。一瞬出てくるピエールという役があるんですが、物語の中で新しい風を吹かせなければいけない役なんです。皆さんに『ピエール、やってるな』と思ってもらえるように頑張ります」と笑顔で語った。
七海は「私が演じるミッシーは、コレットを支えて愛する人物です。明日海さんとは宝塚歌劇団で同期なので、最初コレットと出会うシーンは、普段2人の間に流れるほわほわっとした空気にならないよう、きちんと『初めまして!』という雰囲気になるようにしています。一緒に舞台に立たせてもらえる喜びを感じながら、コレットと明日海りおさんという素敵な俳優さんを尊敬し愛し続けていく舞台にしたいです」と語った。
同期と同じ舞台に立つのは貴重なのでは…? と問われた明日海は「幼い時から自分のことを知ってくれていますし、絶対的な安心感があります。困ったことがあれば相談し合えるので、頼れる人がいるのは心強いです。カイちゃん(七海の愛称)の芝居の熱量がすごく刺さるので、毎回涙してしまうシーンがあります」と答えた。
大東は、以前から明日海に憧れていたといい「明日海さんが、宝塚歌劇団在団中にミュージカル『エリザベート』でルドルフを演じられて以来、ずっと見てきました。初めてお会いした時にガクブルしてアワアワしてしまったのですが(笑)、明日海さんは優しく接してくださいました。『昨日、何を食べたんですか?』という質問にも笑顔で返してくださるんですよ」と照れて大汗をかきながら、答えた。
実際に明日海と会った印象を聞かれると「心も含めてすべて透き通っている方ですね。フランクに接してくださるので、愛される人ってこういうことなんだ…と思いました」と答える大東に対し、明日海は「以前から私のことを知ってくださっていたことにびっくりしました。大東さんは会話の広げ方が上手だし、愛し方も愛され方もとても上手なので見習いたい」と褒めた。
最後に明日海から「G2さんがお一人で書き上げられた素敵なミュージカルに、(荻野)清子さんがパリらしい音楽を付けてくださいました。振付は藤林美沙さんがお一人で全部つけてくださって、みんなが一丸となって心を込めて作ってきたミュージカルです。コレットの世界をお楽しみいただければと思います。ぜひ劇場にいらしてください」と締めた。

ここからは、極力ネタバレを避けてゲネプロの模様をお伝えしよう。
19世紀末、フランスの田舎町で育ったコレットは14歳年上の人気作家ウィリーと結婚し、華やかなパリの社交界に足を踏み入れる。明るくはつらつとして好奇心と才気に溢れたコレットは、ウィリーの影響を受け、自身の青春時代を題材にした小説を執筆する。大ヒットしたものの、夫の著者名で出版されたために複雑な気持ちを味わう。
明日海が演じるコレットがとにかくかわいらしい。自由奔放で欲望のおもむくまま生きた女性というイメージから、ずるさが見え隠れするキャラクターかと思っていたため、少々意外だった。あまりに純真無垢なので、母親のシドが14歳年上のウィリーとの結婚を反対する気持ちもわかるような気がした。コレットはウィリーに献身的に尽くし、言われるがままゴーストライターとして才能を開花させていく

ウィリーを演じる今井はさすがの安定感で、女ったらしでずる賢いキャラクターを巧みに演じる。開幕直前取材でも語っていたが、ウィリーはさまざまな人物との絡みがある。舞台上で絡む人と一緒に役を作り上げたと言っていたように、明日海をはじめとした共演者との演技は、どれも見応えがある。特にコレットを追いやり、後釜に座ろうとするメグ(花乃まりあ)とのコンビネーションが素晴らしい。

男女のドロドロした関係が多く描かれる本作だが、コレットと母親・シドとの心温まるシーンも多い。母親から離れ、どんどん変わっていくコレットを心配して歌うシドに共感する人も多いだろう。コレットの真の理解者はシドであることに間違いはない。

激動のコレットの人生を紹介していく役割を担うのが、ベルトラン役の大東だ。透明感のある歌声と爽やかな笑顔に一瞬で魅了される。ウイットに富んだせりふもあり、3役の演じ分けも上手くできているので注目したい。

宝塚ファンにとってワクワクするのは、明日海、花乃、七海の並びだ。明日海が宝塚歌劇団花組トップスターだった頃、相手役を務めたのが花乃だが、今回は敵対する役で対峙する。花乃が演じるメグがコレットにかなり強気に出ていくところが見どころの一つだ。そんな2人の間に入る七海が演じるミッシーは、見た目とは違って少し情けないせりふを口にするので(…と筆者は感じた)、そのあたりも要チェックだ。

コレットを生きる明日海が、2時間半でどのような変貌を遂げていくか。ほぼ休むことなく歌い、演技し、ダンスをする明日海の熱演に拍手を送らずにはいられなかった。物語のラストが少し物足りない…と感じる人はいるかもしれないが、実在した人物を描くのならこういう終わり方もアリなのではないだろうか。

上演時間は、1幕約80分、2幕約70分(途中休憩あり)。8月17日(日)まで日本青年館ホールで上演。その後年8月21日(木)~8月24日(日)大阪・梅田芸術劇場メインホールにて上演される。
取材・撮影・文:咲田真菜
ミュージカル『コレット』公演概要

【脚本・作詞・演出】G2
【音楽】荻野清子
【出演者】明日海りお
今井朋彦 大東立樹 (CLASS SEVEN) 七海ひろき
吉野圭吾 花乃まりあ
前田美波里
大月さゆ 可知寛子 中西勝之
辰巳智秋 小林遼介 コイタ奈央美 りんたろう 伊宮理恵 ユーリック武蔵 蛭薙ありさ
【開催日程・会場】
2025年8月6日(水)~ 8月17日(日) 東京・日本青年館ホール
※ロビー開場:開演45分前/客席開場:開演30分前
☆…アフタートーク
8月 6日(水)18時00分回…登壇:明日海りお・七海ひろき・花乃まりあ・前田美波里
8月13日(水)18時00分回…登壇:明日海りお・今井朋彦・大東立樹・吉野圭吾
・チケット料金(税込):S席 14,500円/A席 9,500円※未就学児入場不可
・問い合わせ先: 公演事務局https://supportform.jp/event(平日10:00~17:00)
2025年8月21日(木) ~ 8月24日(日) 大阪・梅田芸術劇場メインホール
※ロビー開場:開演45分前/客席開場:開演30分前
☆スペシャルカーテンコール:大阪公演初日・大千穐楽を記念してキャストよりご挨拶
・チケット料金(税込):S席 14,500円/ A席 10,500円/B席 6,500円※未就学児入場不可
・問い合わせ先: キョードーインフォメーション0570-200-888 (12:00~17:00 ※土日祝休み)
【企画・製作・主催】ミュージカル『コレット』製作委員会
●公式HP: https://musical-collet.com/
●公式X:@musical_collet