山崎大輝インタビュー『星の降る時』「観に来てくださった方の明日に繋がる作品。ぜひ劇場へ!」【インタビューVol.36】

山崎大輝(撮影:咲田真菜)

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2025年5月10日(土)~6月1日(日) PARCO 劇場にて、パルコ・プロデュース 2025『星の降る時』が上演される。

イギリスのかつて栄えた炭鉱町を舞台に、変わりゆく社会と折り合いをつけようともがく家族をイギリス気鋭の劇作家ベス・スティールが情熱的かつユーモラスに描いたヒューマンドラマの傑作『星の降る時 Till the Stars Come Down』。

2023 年英国ナショナル・シアターで上演し、深い人間観察と巧妙な劇構成が絶賛された。2024 年度「ローレンス・オリヴィエ賞」BEST PLAY にノミネートされた話題の新作戯曲を小田島則子の翻訳、栗山民也の演出でいち早く上演する。

▼ストーリー
イギリスのかつて栄えた炭鉱町に生まれ育った三人娘。今では二人の娘を持ち相変わらず倉庫勤務の長女ヘーゼル(江口のりこ)と、町に嫌気をさして実家を遠く離れていた次女マギー(那須凜)、そしてポーランド移民と恋に落ちた三女シルヴィア(三浦透子)。今日は三女の結婚式。母親代わりの叔母キャロル(秋山菜津子)と共に、パーティの準備をしている。早くに妻を亡くしたが、三姉妹を守ってきた父親トニー(段田安則)、その兄とは長年に渡る絶縁状態の叔父ピート(八十田勇一)、移民に職を奪われ失業状態の長女の夫ジョン(近藤公園)も久しぶりに顔を合わせ、三女の夫マレク(山崎大輝)を迎えて祝いの宴が催されるが…人生で最も幸せなはずの一日が、問題をはらんだ家族間の扉を開けてしまうことになり…果たして家族は再び向き合い、新しい朝を迎えることができるのか…

本格的な稽古が始まる前の3月下旬、三女シルヴィアの夫・マレクを演じる山崎大輝さんに合同取材を行った。出演が決まったときに気持ちや作品への意気込みについて語ってくださった。

山崎大輝(撮影:咲田真菜)

――出演が決まった時の気持ちをお聞かせください。

山崎大輝(以下、山崎):この作品は2年前にイギリスで上演されて、今回日本で初めて上演されます。素敵なキャストの皆さんと共演できるすごく光栄な機会をいただいたと思いました。そして再び演出の栗山民也さんと一緒に作品を作らせていただけるのが、うれしい気持ちとともに怖いな…とも思いました(笑)。

――再び栗山さんと作品を作るのが、うれしいと同時に怖いとおっしゃいましたが、どんな部分が怖いのでしょうか?

山崎:台本を読ませていただいた時に、登場人物が勝手に動き出していく様子が伝わってきました。そのため一瞬、登場人物の気持ちが分かったような気になるんですけど、多分そんなことないんだろうな…と(笑)。栗山さんに演出をつけていただくと、自分が考えていたことと全然違う方向に行くことがよくあります。そういう意味で怖いし、自分の解釈が違っていた恥ずかしさがあります。

栗山さんは、僕があまり考えていなかったような部分にフォーカスしてくださいますし「そういう見え方もあるのか」と新しい気付きをくださいます。ディスカッションをさせていただいたこともありましたし、人間から滲み出るものを栗山さんが使ってくださることもあるし、いろいろです。実力派の皆さんとの共演にも怖さがありますが、すべてをさらけ出していこうと思っています。

――栗山さんと交わした印象的な言葉はありますか?

山崎:2021年上演のミュージカル『スリル・ミー』で初めて栗山さんとご一緒させていただいたのですが、この作品は2人芝居で100分間誰も介入しない作品で、栗山さんは「ショーケースの中で、2人だけの関係性でいきたい。観客のことは全く関係がない」とおっしゃっていました。あとは「表現をするな」と言われました。栗山さんと出会うまでは、無意識のうちに表現をしていたんだなというのに気付かされましたし、その言葉をもらったときに、俳優という仕事の面白さに改めて気付きました。

――「表現をするな」は、具体的にどういう意味なのでしょうか?

山崎:自分を良く見せたいと思って気取ることってあるじゃないですか。例えばカメラの前に立った時に斜に構えたり、自分の内側の部分をさらけ出せずに取り繕ったりしてしまうことです。『スリル・ミー』では、そういうことを一切しなくていい、二人が分かればそれでいいとをおっしゃいました。僕が思っていたことと真逆のことでしたが、その言葉の良さにどんどん気付いていきましたね。

山崎大輝(撮影:咲田真菜)

――今回演じられるマレクは三浦透子さんが演じるシルヴィアの夫です。三浦さんに対してはどのような印象を持たれていますか?

山崎:ビジュアル撮影の時にご挨拶をしたのが初対面でした。お芝居も歌も素敵で、素晴らしい女優さんだという印象があります。

――三浦さんと一緒にどういう芝居をしていきたいと思いますか?

山崎:稽古前ですしどうなるかわからないのですが、僕の役は他の登場人物とちょっと違ったポジションで異分子だと思うので、そういう部分を掛け合わせていきたいと思っています。

今回演じるマレクと僕はそんなに年が離れていませんし、舞台となる時代背景は、現在からそんなに遠くはない。会話のキャッチボールの仕方や人の話を聞いているようで聞いていない部分も理解できます。ただ、マレクはポーランドからの移民ということで、少したどたどしい感じでせりふを言う部分があります。それを今後どのように演じていくのかが楽しみです。

――今回は歌のシーンがあるようですが、その点はいかがですか?

山崎:もともとの台本に歌のシーンがあって、日本版で残るのか残らないのかどうなんだろうと思っていました。台本を開いたら「うわっ!残ってる!」と思ってビクッとしました(笑)。

――「うわっ!」というのはどういうお気持ちで…?

山崎:やるんだ!! というびっくりした気持ちですね。この歌が引き金になりますから、そういう役目を任されたんだなと思いました。

――ミュージカル俳優さんの中には、歌がないストレートプレイでは「ここで歌があれば…」と思うことがあるとおっしゃいます。歌で表現できるメリットは何だと思いますか?

山崎:僕はお芝居をしていて「ここで歌があれば…」という気持ちになったことがあまりないんです。今回は久しぶりのストレートプレイなので、台詞でいろいろ仕掛けられるのがすごく楽しみですし、マレクはちょっと空気が読めない人なので、パンチの効いた人物を表現する役割を歌でできるかもしれない楽しみがあります。

山崎大輝(撮影:咲田真菜)

――マレクの魅力はどんなところだと思いますか?

山崎: 欲に忠実なところだと思います(笑)。この作品の登場人物はすべて欲に忠実ですが、マレクは群を抜いて忠実で、そこがいいですよね。「こうしたい!」みたいな自分勝手な考え方がいいなと思います。シルヴィアのお父さんのトニーから「マレク」の名前が出てこなかっただけで、プンプン怒るところも面白いですね。

――ご自身はマレクと似ているところはありますか?

山崎:僕は根拠がある、ないに関わらず「これだ!」と思ったものにはアクセル全開で立ち向かえるので、そういう点は似ているかもしれません。

――先ほどシルヴィアのお父さんのトニーから「マレク」の名前が出てこなかったことでプンプン怒るシーンについて言及されましたが、ご自身にもそういう面がありますか?

山崎:マレクの気持ちはわかりますが、僕はどっちかというと我慢するなぁ…と思いますね(笑)。

――三姉妹については、共感できる部分はありますか?

山崎:もちろんあります。三姉妹が今まで積み重ねてきた家族という形が、台本を通して伝わってきました。一方で家族の関係が修復できなくなっていき、この世の終わりみたいな感じなのにとりあえず踊っているというのも、今を生きていてすごくいいなと思いました。

――三姉妹の中で誰が一番魅力的だと思いますか?

山崎:(うーん…と悩んで)やっぱり江口のりこさんが演じられるヘーゼルかな…?信じられないし信じたくないし、本当に自分勝手で…(笑)

――出演者全員がエゴを出しまくるお話ですけれども「僕エゴイストだな」と思う時はありますか?

山崎:結構ありますね。僕は基本的にマイペースで、マイルールがあるタイプなんです。例えば1時間用意されてますと言われたら1時間キッチリ欲しいんです。残りの5分は何か別のことを…とかいわれると「やめてよ! 5分でやることがあったのに!」と調子が狂うな…と思ってしまいますね(笑)。

仕事の面では、自分自身が方向性を決めていい立場であれば、納得がいかないと「嫌です」とはっきり言います。

――今回ご自身の役でこういうところを特に注目して見てほしいというのはありますか?

山崎:今まで演じてきた役とは全然違うタイプの役ですし、イギリスでは体型がどっしりとした感じの方がマレクを演じられていたので、僕が演じることでニュアンスが少し変わってくるかもしれませんが、そこは自分の武器として活かせたらいいなと思ってます。

――ファンの方へメッセージをお願いします。

山崎:イギリスのお話ですが、現代の日本でも起きている出来事だと思います。ちょっとしたボタンの掛け違いで、人の醜い部分が見えて「滑稽だな」と思って笑ってもらってもいいと思います。この作品には「今という時間を楽しまなきゃ損」というメッセージも込められています。どんなことがあっても人生は続いていく…。観に来てくださった方の明日につながっていく話だと思いますので、ぜひ劇場にいらしてください。

取材・文・撮影:咲田真菜
スタイリスト:内田考昭 (A-T)
ヘアメイク:林美由紀

山崎大輝(撮影:咲田真菜)
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パルコ・プロデュース 2025『星の降る時』公演概要

作=べス・スティール
翻訳=小田島則子
演出=栗山民也

出演=江口のりこ  那須凜  三浦透子  近藤公園 山崎大輝 八十田勇一/
西田ひらり 佐々木咲華  下井明日香/秋山菜津子 段田安則

公式サイト:https://stage.parco.jp/program/tillthestarscomedown
ハッシュタグ=#星の降る時

企画・製作=株式会社パルコ

日程=2025 年5 月10 日(土)~6 月1 日(日)
会場=PARCO 劇場(渋谷PARCO 8F)
入場料金(全席指定・税込)=マチネ:11,000 円 ソワレ:10,500 円
※未就学児入場不可

チケットに関するお問合せ=サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(平日12:00~15:00)
公演に関するお問合せ=パルコステージ 03-3477-5858 https://stage.parco.jp/

▼地方公演
山形公演:2025 年6 月8 日(日) やまぎん県民ホール
兵庫公演:2025 年6 月12 日(木)~6 月15 日(日) 兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール
福岡公演:2025 年6月21 日(土)~6 月22 日(日) キャナルシティ劇場
愛知公演:2025 年6 月27 日(金)~6 月29 日(日) 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール

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この記事を書いた人

国家公務員・一般企業勤務を経てフリーランスのライターになる。高校時代に観た映画『コーラスライン』に衝撃を受け、ミュージカルファンとなり、以来30年以上舞台観劇をしている。最近はストレートプレイも積極的に観劇。さらに第一次韓流ブームから、韓流ドラマを好んで視聴。最近のお気に入りはキム・ドンウク。

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