劇団SHOW特急『真田十勇伝-令和元年-』 迫力ある殺陣と丁寧な人間描写で物語に引き込まれる

「インタビュー・おすすめ舞台」

劇団SHOW特急第12回公演『真田十勇伝-令和元年-』が2019年9月4日(水)から8日(日)まで、東京池袋のあうるすぽっとで上演されている。当サイトで脚本・演出を手掛けている伊達謙一さん、劇団SHOW特急の工藤そのかさん、客演の弘山和華乃さん(以下、敬称略)をインタビューさせていただいた縁で、赤文銭の初日公演を観劇することができた。

本作品は、関ケ原の戦い後から大坂夏の陣までの真田幸村と彼を支えた10人の兵たちを描いている。「歴史は苦手だから…」と腰が引けてしまう人もいるかもしれないが、話題となったNHK大河ドラマ『真田丸』を見ていない筆者でも、すんなり物語が頭に入ってくる非常に分かりやすい脚本だった。

この公演で印象的だったことは2つ、殺陣の迫力と人物描写の丁寧さだ。真田幸村をはじめとする真田家の人々、真田家が忠誠を誓う豊臣家の人々、敵方の徳川家康、そして幸村を命がけで守る十勇士たち。登場人物は多いが、それぞれのバックグラウンドが丁寧に描かれている。そして殺陣は「きちんと斬られている」と言うと変な表現だが、最近は舞のような殺陣が多い中、泥臭い殺陣らしい殺陣を見ることができ迫力がある。

キャストそれぞれに注目してみると、真田幸村を演じた木村敦はとにかく立ち姿が美しい。ミュージカル『テニスの王子様』に出演した時は、手足の長さから「ダビデ」と呼ばれていたそうだが妙に納得。美しさだけでなく殺陣の切れもよいし、若い頃の少し頼りない幸村と父・昌幸亡きあとのたくましくなった幸村をうまく演じ分けていた。

真田昌幸を演じた金すんらは、家臣たちの信頼を集める真田家当主を重厚に演じていた。幸村を信じ、家臣を思い、時には厳しく叱責する姿は理想の当主そのものだ。劇団四季時代に『ライオンキング』でスカーを演じていた金を見ているので悪役の印象が強かったのだが、今回の役で一気にイメージが変わった。

十勇士たちにもそれぞれ物語がある。初演、再演で真田幸村を演じた伊達謙一は、今回十勇士の一人、由利鎌之助を演じている。インタビューで「一番自分のイメージに合っている」と言っていたが、その言葉どおり生き生きと演じる姿が印象的。豊臣を守るため大坂へ向かうかどうか幸村に問われる時に「負けると分かっている戦に行く意味が分からない」と正直な気持ちを吐露する。そんな人間臭い姿に、筆者は一番共感できたかもしれない。

反対に「ただひたすら真田家を守るため」に命をかける穴山小助を演じる工藤そのかは、どこまでもピュアだ。自分の生きる道は幸村を守ることと信じて疑わず、しかし自分と意見が違う者、例えば鎌之助に対しても優しい気持ちで接する姿は美しい。

真田家が命をかけて守ろうとする豊臣秀頼の母・淀君を演じる弘山和華乃は、とことん嫌な女に徹していた。最後の最後で母親らしい姿が垣間見えるが、そこに至るまでのヒステリックな姿は同じ女性としてため息が出てしまい、秀頼に心の底から同情してしまった。

物語の最後、散っていく十勇士たちにホロッとする。戦いながら「やっぱりこんなところ、来るんじゃなかったなあ」と嘆いたり、愛する人に会いたいと素直に言う十勇士の姿を描くことが「人間を描きたい」という伊達のこだわりなのだと感じた。

この公演は2時間半休憩なしで上演される。残り4公演でチケットはほぼ完売とのことだが、もしかしたら当日券が手に入るかもしれないので、劇場へ行ってみてはどうだろうか。

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