ブロードウェイ・ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』名曲の数々とダンスシーンに酔いしれる

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2019年8月19日(月)にブロードウェイ・ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』が、東京・豊洲のIHIステージアラウンド東京で開幕した。今回世界初の360°シアター版ということで、早速プレビュー公演を観てきた。

360°シアターというのは、客席がぐるりとセットに囲まれており、物語の展開に合わせて客席がゆっくり回転していくもの。セットが変わる時のいわゆる暗転する場面がないため、話が途切れることなく展開していくのがいい。『ウエスト・サイド・ストーリー』をIHIで上演すると聞いた時に「それはいいかも!」と感じたとおり、プロローグからこの劇場の特徴がうまく生かされ、ジェット団とシャーク団のダンスシーンに勢いがついていたように思う。

本作品はあまりにも有名だが、念のため物語の背景を説明すると、1950年代後半のニューヨーク・マンハッタン、多くの移民が住んでいたウエストサイドが舞台となる。夢と希望を求めてアメリカへ渡ってきた移民たちだが、ポーランド系移民のジェット団とプエルトリコ系移民のシャーク団は反目し合い、目を合わせればけんかをする敵同士だった。そんな中、元ジェット団のトニーとシャーク団のリーダーの妹マリアが恋に落ちてしまう。この二人の恋がうまくいくはずもなく、事態は悲劇へと向かっていく……。

この作品が初演されたのは1957年。62年も経っているが、いまだ色あせないのは、次から次へと流れてくる名曲の数々にうっとりするからだろう。「MARIA」「TONIGHT」「SOMEWHRE」など、レナード・バーンスタインの美しい曲の数々は何度聴いても胸にグッと迫ってくる。特に今回トニーとマリアを演じたお二人の歌唱力がとても高く、聴きごたえがある。

Photo: Jun Wajda

またうっとりするだけでなく、ダンスシーンも大きな見どころだ。ジェット団とシャーク団が体育館でダンスを繰り広げるシーンや、シャーク団の女性たちが「AMERICA」のメロディーにのって踊り歌うシーンは圧巻。いとも簡単に踊っているようにみえるが、じっくり観察してみると、ものすごいダンステクニックを駆使している。しかも歌いながらやってのけるというのは、「ブラボー!」の一言だ。実際「AMERICA」のあとには大きな歓声が沸き起こっていた。

Photo: Jun Wajda

今回特に感じたのは、この作品こそ来日公演で観るべきだということ。日本では劇団四季をはじめとして、宝塚歌劇団、少年隊PLAYZONEなどで上演され、どれも素晴らしかったが、そもそもなぜジェット団とシャーク団がいがみ合うことになったのかという、この作品の根底にあるものを、来日公演キャストが演じることでより深く理解できたような気がした。

Photo: Jun Wajda

もう一つ、この作品が古さを感じさせないのは、この物語で描かれている偏見や暴力が、今なお解決されていないという悲しい事実もあるのかも……と考えてしまった。

『ウエスト・サイド・ストーリー』は、現代版『ロミオとジュリエット』と言われるが、圧倒的に違うところはラストシーン。悲しみに嘆いても、そこから立ち上がるマリアのキリッとした姿を目に焼き付けてほしい。

Photo: Jun Wajda

来日公演は、2019年10月27日(日)まで。ぜひ360°シアターで上演される新たな『ウエスト・サイド・ストーリー』を観てほしい。

写真:オフィシャル提供

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