2024年5月5日(日)~7日(火)東京・浜離宮朝日ホール 小ホールにて、音楽劇『海の上のピアニスト』リーディングが上演される。
原作はイタリアの音楽評論家でもあるアレッサンドロ・バリッコが1994年に一人芝居として書いた戯曲で、豪華客船の中で生まれ、生涯一度も船を降りることのなかった天才ピアニスト・ノヴェチェントの人生を、親友のトランぺッターが一人で語るという形式で書かれたシンプルな作品。1998年に日本でもヒットした映画タイトルとしても知られている。
人生における数々の名言が散りばめられ、読み手のイマジネーションが膨らむその原作を、ノヴェチェントとトランぺッターの二人芝居に加え、全編ピアノの生演奏の音楽劇として2018年に初演。今作では音楽劇のイメージをそのままに、音楽と言葉が融合するリーディング作品として新たにリメイクし上演する。
開幕目前、トランぺッター役・吉野圭吾とノヴェチェント役の宮原浩暢に、稽古場にて話を聞いた。
――本格的な稽古が始まったところでお話を伺います。稽古の手応えはいかがでしょうか?
吉野:突き詰めれば突き詰めるほど、何度も稽古をやりたいね。
宮原:本当にそうです!まだまだ(セリフを)言いやすくなるんだろうなと思うんですけど、限られた稽古時間で、自分の中で掘り下げられるところは掘り下げたいなと思っています。朗読劇だけど動きが色々あるのでそれに慣れて、早く読むことに全力でいきたいですね。
吉野:読みながら歩くって難しいんですよ! 本から目を放せないし、でもその場所に行かなきゃいけなくて。
宮原:ト書きに“上手に動く”とあって読んでいたら、その先には“階段の横”って書いてあって行かなきゃと(笑)。音や照明が決まっていたら自分の中で歩幅を考えたりするんですけど、思ったよりも難しさを感じています。
吉野:(セリフを)覚えちゃってたら気持ちでいけるんだけど、本から離れられないから難しいですね。思いっきり全身で表現できないから声優さんってすごいなって。
宮原:声に個性を持たせながら感情も入れてセリフを言うっていうのは、すごいなと思います。
吉野:リーディングだとセットなどシンプルで必要なものだけがある感じなので、その中でいかに想像してもらえるか、っていうところですよね。
――おふたりの美声が重なる稽古場でした。仕上がりが楽しみです。
宮原:圭吾さんの声のトーンとか、1回目読んだ時と2回目が違ったりとかして、役者さんは芝居を変えるじゃないですか。それがすごいなと思っています。もちろん探りながらやっているんだろうけど、そう来たか! みたいなことがあって。早く自分も追いつかないと。
吉野:今回初共演で初めてお会いして、ちょっとお話しただけでもう見えたというか、素敵な方ですごく自分と相性がいいと勝手に思ってます(笑)この作品を作っていく上で気が合うというか、なんか見えたって思いました。
宮原:わ~そう言ってもらえるのは嬉しいですね。
――吉野さんはトランぺッター役ですが、ほかのキャラクターもあり、さらにモノローグ、語りなど多くの役割があります。
宮原:そうですよね。ナレーションみたいな感じで語りながら急に役として喋ったり、基本は圭吾さんの語りで物語は進行していきます。
吉野:歌のところはちょっと覚えたいですね。いいのか悪いのかわからないけど、歌になると、ちょっとホッとしません?(笑)
宮原:わかります(笑)
吉野:この本の先にある世界をもっと表現できたら素敵だなって思いながらやって…うん、ダメだなって反省したりね(笑)
――本番が楽しみです。稽古ではお互いどんな印象をお持ちですか? 見どころについてもお聞かせください。
吉野:のぶにいの印象は、すごいノヴェチェントと被るんです。自分の世界があるんだなって、もう立っているだけで、ああノヴェチェントがいるって思います。
宮原:わ~自分で読んでいて声のトーン変わらないな~とか思いながら、もっとうまくできないかな、感情が動かないかなと試行錯誤しながらなんですけどね。圭吾さんはストーリーテラーとして進行させていく中で、対決するジェリー・ロール・モートン役とか、ジャズピアニストの感じを声で表現したりとか、すごく面白いですね。優しい声のトーンの語り、キャラクターを出すところ、それが本当に多彩で魅力ですし、見どころだと思います。ノヴェチェントは船で生まれて船で育っているから、船が時化(しけ)で揺れても普通に歩ける設定なんですけど、その時化の揺れを表現するのは…。
吉野:僕しかいない!(笑)揺れすぎて台本どこ読んでるかわからない! 映画はご覧になりました?
宮原:映画は見ました
吉野:ああいう感じが出ないですかね。これ(カフェのテーブルと椅子)がザーーーと動くの、あのイメージを身体で表現できないかなって思って。
――そして中村匡宏さんによる音楽と演出、小滝翔平さんによるピアノの生演奏も見どころです。
吉野:中村さんは天才ですよね。中村さんの楽曲はとてもドラマチック。リーディングだけじゃなく、曲と歌もすごく魅力的でとても素敵な作品になっています。
宮原:ピアノ演奏の小滝さんもそうですが、音楽も出演者のような存在です。会場にいらしていただけたら、心が浄化される世界観が待っています。ピアノの生演奏とこの2人の語りがお客様を癒しますので、ぜひ心の洗濯にいらしてください。
吉野:ノヴェチェントという人を知ってもらい、ノヴェチェントの心の旅を感じていただけたら。お客様と共にこの豪華客船ヴァージニアン号に乗って同じ旅ができたらいいなって思います。このゴールデンウィークは是非ご乗船ください、船でお待ちしております。
音楽劇『海の上のピアニスト』リーディング
作:アレッサンドロ・バリッコ
訳:草皆伸子(白水社 刊)
上演台本・演出・音楽:中村匡宏
製作:アーティストジャパン
出演
トランぺッター:吉野圭吾
ノヴェチェント :宮原浩暢(LE VELVETS)
ピアノ演奏:小滝翔平
◆東京公演
劇場:浜離宮朝日ホール 小ホール(朝日新聞東京本社・新館2階)
日程:2024年5月5日(日)~7日(火)
料金:7,700円 (税込・全席指定)
チケット取り扱い:アーティストジャパンチケットセンター、イープラス、ローソンチケット
お問合せ : アーティストジャパン 03-6820-3500 https://artistjapan.co.jp/
公式X
https://twitter.com/aj_novecento
公式サイト
https://artistjapan.co.jp/uminoueno_pianist_2024_ajrt/
【あらすじ】
大西洋を往復する豪華客船ヴァージニアン号ーー。
その一等船客用のダンスホールのピアノの上に、レモン箱に入れられた、生まれて間もない赤ん坊が捨て置かれているのを、黒人機関士のダニー・ブードマンが見つける。箱には「T・D・レモン」と書かれてあり、ダニーはそれを「Thanks Danny」=「ありがとう、ダニー」の意味に違いないと受け止める。
ダニーは、まず頭に自身の名前を並べ、1900年という新世紀最初の出来事にちなんで、900=ノヴェチェントまで盛り込んだ〝ダニー・ブードマン・T・D・レモン・ノヴェチェント〟という立派な名前をつけて、わが子のように大切に船の中で育てる。
ノヴェチェントが8歳になったある日、時化た海で起きた事故でダニーは亡くなってしまう。再び孤児となったノヴェチェントだが、ピアノと出逢い、やがて彼はこの船の専属楽団のピアニストとなる。そしてその楽団のトランぺッターが、彼の唯一の親友となった。船で生まれ、ただの一度も陸地を踏んだことのない彼が弾くのは前代未聞の音楽。それは、いまだかつてこの世に存在せず、彼がピアノの前から離れた瞬間にはもう存在していない音楽。
そのうわさを聞きつけた全米一のジャスピアニスト、ジェリー・ロール・モートンが決闘を申し出て船に乗り込んでくる。ピアノ対決を受けたノヴェチェントはそのセンスとテクニックで、モートンを完膚なきまでにうちのめしてしまうのだった。
そんなエピソードを持つ天才ピアニストにも解決できない人生の課題は、どうしても船を降りることができないということであった。親友トランぺッターの勧めもあり、32歳にして初めて陸地に降り立つことを決意した彼は、ニューヨークの果てしない街並みを目にしたとき、世界のあまりの大きさに恐れをなし、タラップの最後の一段を踏み出せないまま船に戻っていった。
やがて親友も下船し二人にも別れの時がきた。そして時代はヒットラーが台頭し、世界が戦火の渦に巻き込まれる中、ヴァージニアン号もその大きな流れには抗えず、病院船として使われた結果、ボロボロに傷つき、廃棄処分が決まった。
その話を聞いたトランぺッターは、急いでヴァージニアン号へと向かった。ダイナマイトが山と積まれ、やがて沖へ曳航、爆破される運命の船。このどこかにノヴェチェントがいるに違いない!そして彼は船底の機関室に一人残るノヴェチェントを見つける…。