渡辺謙『The King and I 王様と私』がシネマイクスピアリで上演中

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2019年7月から8月にかけて、東急シアターオーブで渡辺謙が出演する舞台『The King and I 王様と私』が凱旋公演を行い、その後2018年8月にロンドン・パラディウム劇場で行われた公演がTOHOシネマズを中心に上映された。どのタイミングも合わず、悔しい思いをしていたのだが、現在シネマイクスピアリで上演しているとのことで、ようやく観ることができた。

舞台は1860年代初頭のシャム(現在のタイ王国)。英国人女性・アンナが王の子どもたちの家庭教師をするために、バンコクへやってきた。「王が絶対」という考え方を頑なに持つ王と何かと衝突するアンナだったが、子どもたちはすぐに懐き、楽しい日々を送る。そしてある日、英国公使が突然バンコクを訪れ、接待をどうすればいいのか戸惑う王を助けたことで、一気に二人の距離が近くなるのだが…。

時代の背景には、女性の地位が低くみられていた当時のシャムの様子や、それを仕方がないことと受け入れる女性たち、奴隷制度の問題など、人権に関わることが描かれていく。アンナは理解できないことははっきりと異議を唱え、そのはっきりとした性格にまわりは驚き、反感を持つ者もいるのだが、次第に王をはじめとして、王のまわりの女性たちの信頼を得ていく。

アンナを演じるケリー・オハラがとにかく魅力的だ。確か凱旋公演時の記者会見で渡辺謙が「ケリーの魅力をぜひ日本の人たちに観てもらいたい」と言っていたが、本当にそのとおり。歌や演技はもちろんのこと、チャーミングな表情、時折見せるコケティッシュな表情、どれをとってもかわいらしい。

シャム王を演じる渡辺謙は、期待以上のカリスマ性を発揮していた。本当の王ではないのに、彼が登場すると「ひれ伏さなくては…」と思ってしまう迫力があった。歌はどうなんだろうと不安があったが、さすが上手く歌いこなしていたし、何より「王は絶対」としながらも、西洋の考え方を取り入れていかなくてはいけないと考え、アンナにいろいろと質問をするところは、お茶目な王の一面を出していた。有名なシーン「Shall we Dance」で二人が踊るシーンは本当に楽しく軽やかにダンスをして、観ているこちらも笑顔になっていった。

脇を固める役者たちも実力者ぞろいだ。ビルマから人質同然に王の女として差し出されたタプティムとその恋人、王の第一夫人など、それぞれ歌の見せどころがあり、聴きごたえがある。

時代こそ1860年代だが、古いしきたりにとらわれることはおかしいと訴えるアンナや、新しいものを受け入れようとする王を見ていると、今の日本に通ずるものがあるような気がした。シネマイクスピアリで12月12日(木)まで上演中なので、まだ観ていない人はぜひ足を延ばしてほしい。

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