2026年9月21日(月・祝)~10月12日(月・祝)シアタートラムにて、舞台『Yermaイェルマ』が上演される。
本作は1930年代スペインの閉塞的な寒村を舞台に、抑圧された女性の苦悩と孤独を鮮烈に描き出した詩人・劇作家 フェデリコ・ガルシーア・ロルカによる不朽の傑作「イェルマ」を起点に、現代社会で自らの居場所や価値を見出そうともがき苦しむ女と男たちの物語として、新たに立ち上げる。
「家族の在り方」や「自己の存在意義」を問う本作。現代が抱える切実な問題を舞台上に鮮やかに映し出し、今を生きるすべての人々に深い問いを投げかける一作になりそうだ。
自らの存在価値に苦悩する女性、イェルマ役を宝塚歌劇団退団後も舞台や映像で活躍の場を広げている咲妃みゆが演じる。
家庭生活に非協力的なイェルマの夫で、自らもある秘密を抱えるフワン役に渡邊圭祐。イェルマの幼馴染であるビクトル役は小林亮太、そしてイェルマの内的な存在であり、物語の展開に鮮烈なアクセントを刻む老婆役を渡辺いっけいが演じる。
このたびビクトル役の小林亮太さんにインタビューを行うことができた。稽古が始まったばかりの中で、現時点で考えているビクトル像などについて語ってくださった。
――『Yerma イェルマ』への出演が決まった際のお気持ちをお聞かせいただけますか?
小林:心底嬉しかったのを覚えています。10代の頃からミュージカルや演劇作品に携わらせていただく中で、20代になって、いち観客としていろいろな演劇に足を運ぶようになりました。ストレートプレイ、そしていわゆる小劇場規模で上演される綿密な作品にも参加したいという思いが年々強くなっていました。
そういう機会を望んでいた中で、今回、稲葉(賀恵)さんの演出で世田谷パブリックシアターさんの制作、シアタートラムで上演される作品に参加できることになったので、ものすごく嬉しかったです。
――現在は、顔合わせがすんだばかりということですが、稽古場の雰囲気はいかがですか?
小林:なごやかですね。かなり久しぶりのストレートプレイなのですが、演出家やキャスト、スタッフで稽古場の雰囲気って変わるので、正直どんな雰囲気になるのだろうと最初は緊張や若干の不安がありました。
でも、稲葉さんが作品に関して丁寧に言葉を選択しながら僕たちに話してくださいますし、稲葉さん自身がどう思われているかをかなりユーモアも交えてお話してくださっています。稽古は今日で2日目になりますが、マイルドだけれど非常に真に迫ったものなので、2日目とは思えない濃さを感じています。
作品にもよりますが、ミュージカルの場合、かなり早くから立ち稽古に入ってスピーディーに進んでいくことが多く、そうなるとまずはセリフを覚えることが先行します。
今回は、まず劇作のオノマリコさんと稲葉さんがどういう思いで、今この作品を作ろうとしているのかということや、登場人物の背景など言葉では書かれていないことを「本読みからここまで踏み込むのか!」というほど、読み込んでいます。皆さんとディスカッションして言葉を交えながら考えていく時間があるので、気が抜けないな……という緊張感を感じています。
――今回小林さんが演じられるのはビクトルですが、どのような人物だと思いますか?
小林:原作ではイェルマの幼なじみで、イェルマの夫であるフワンとは違ったイェルマの一面を見ている人物です。イェルマ自身が家族や社会に囚われている中、彼女のことを放たせてあげ、彼女の心の奥を開いてあげる存在だと思っています。原作を改めて読み返してみても、今回の台本を見てもそう思うので、そういった部分をどう演じていこうかと思っています。
稽古に入る前の段階で、稲葉さんからビクトルには気だるさや色気を持っていてほしいと言われました。そういうのは溢れ出たものを見ている人が感じるものだと思うので、どうしたらいいんだろうと考えています。
日常の僕と比較するとビクトルはあまり近しくないかなぁと感じたので、そういうところをこれから埋めていきたいと思っています。稽古が始まって数日ですけど、イェルマが抱えていることに一歩踏みこむのは、なかなか勇気のいることです。ビクトルについていろいろな側面で考えている最中なので、今の時点で具体的に言うのは難しいところがありますが、ビクトルは楽観主義な人かなと思うので、そこは大事にしたいと思います。
――今はどのように演じていくか、作り上げて悩んでいる段階なのですね。
小林:この作品に携わらせていただくことが決まったのが、少し前だったこともあり、自分の中でイェルマという作品への気持ちがずっと流れていました。下手に考えすぎずにいきたいなと思いながら初日の稽古を終えて、自分の中で撃沈した感覚がありました(笑)。もしかしたらオノマさんが立ち上げられた戯曲に飲み込まれてしまった部分があったのかもしれません。
ビクトルという人物の内面を最初に組み立てた方が、俳優としては安心なのですが、ただそうするとイェルマの心にどう触れていくかが一筋縄ではいかないと感じています。まずイェルマを軸に考えて、小さい頃から見てきた彼女は今どうなっているかという台本の中で描かれていることにフォーカスしていきたいという気持ちです。
――今、イェルマを軸に……というお話がありましたけれども、イェルマを演じる咲妃みゆさんの印象をお聞かせいただけますか?
小林:素晴らしくエネルギーに溢れている方です。咲妃さんが出演されている舞台を何作品も拝見してきましたので、演劇への溢れる愛をひしひしと感じます。咲妃さんご自身も自分の中にある言葉を相手にどう伝えたらいいかということをすごく考えられている方です。稽古場でご一緒していて。そこは原作のイェルマと重なるというか、とても熱いものが流れている方だなと感じています。そこに自分はどういう温度でかかわっていけばいいのだろうと考えています。
人間としてチャーミングな方ですし、役を演じているときとそうでないときのギャップも、いい意味である方だと思います。
――イェルマとビクトルは、芝居の中で関わっていくところが多いと思いますけれども、咲妃さんとはいいコンビになれそうでしょうか?
小林:そうなったらいいなと思います。舞台に立った時、エネルギーの爆発力みたいなものは、自分自身も大事にしているところなので、演劇に対する熱量が咲妃さんと近しくあれたらいいなあと思っています。これからたくさん作品について話し合っていくだろうと思いますし、イェルマとビクトルは幼なじみなので、遠慮なくお互いが会話のキャッチボールができる存在になれたら……と思います。
――ビクトルに関して楽観的っていうお話がありましたけれども、小林さんご自身がビクトルに共感できること、逆にここはちょっと理解できないなっていうところはありますか。
小林:物語の中で、どこまでビクトルが自分の意志で動いているのか、イェルマの妄想なのか現実なのか……というところがありますが、なかなか共感しにくいところはありますね(笑)。
稽古をしている中では、ビクトルの家族との距離感についても考えています。イェルマが抱えている問題の一つが家族とのつながりの中で生まれたものなのですが、同じような環境で育ったビクトルは家族との関係はどうだったのだろうと。
ビクトルは家族に甘えているわけではないけれど、家族の影響を受けているところがあるので、その点はもしかしたら僕自身に近いかなと思います。自立したい気持ちはすごく持っているけれど、親から与えられたものが人生に影響しているな……と考えるところがあるからです。その点は、年齢的にもビクトルと共通する部分はあるかなと思います。
――この作品は、「生産性のない人たちには存在価値がないのか」というテーマを掲げていますが、小林さんご自身がこの言葉からパッと連想するものはありますか?
小林:あくまでも僕自身の考えですけど、演劇って最近は、いろいろな形で残すこともできますが、お芝居自体は実体としては残らないですよね。そこに果たして生産性はあるのかと思うこともあります。一方で、その瞬間でしか観られないお芝居を観るために劇場に足を運んでくださる人々がいらっしゃる。僕はそういう人たちがいらっしゃるということをめちゃくちゃ信じて、この仕事をしています。
――最後に作品への意気込みとファンの方へのメッセージをお願いできますか。
小林:毎日身近なところから様々な情報が入ってくる中で、情報とともにいろいろな人の価値観も入ってきて、自分自身で気づかないうちに影響を受けていたり、自分で選択していないのにも関わらず、価値観の違いを受け入れていることがあるなと思っています。
そういう時代だからこそ、皆さんに劇場へ足を運んでいただいた先で、僕らが演じる物語を観ていただけることに幸せを感じています。『Yerma イェルマ』は、現代を生きる皆さん自身への問いかけとなる作品かもしれません。
堅いお話なのかな、難しいお話なのかなと思われる方もいらっしゃるかもしれないですが、すごく鮮やかな作品になるんじゃないかなと期待していますし、そこを叶えていかなきゃいけないなと感じています。すごく鮮烈な作品が生まれると思いますので、ぜひ劇場へ足を運んでいただけましたら、幸いです。
取材・文:咲田真菜
【日程】2026年9月21日(月・祝)~10月12日(月・祝)
【会場】シアタートラム
【作】オノマリコ
【構成・演出】稲葉賀恵
【出演】咲妃みゆ 渡邊圭祐 小林亮太
樋之津琳太郎 大場みなみ 青山祥子 前東美菜子
渡辺いっけい
◆東京公演
【公演日程】2026年9月21日(月・祝)~10月12日(月・祝)
【会場】シアタートラム
●料金(全席指定・税込)
一般: 9,000円
高校生以下: 4,500 円(当日要証明書提示)
●チケット取扱い
世田谷パブリックシアターチケットセンター https://setagaya-pt.jp
03-5432-1515(10:00-19:00)
※その他プレイガイドでも取扱いあり
【主催】公益財団法人せたがや文化財団
【企画制作】世田谷パブリックシアター
【後援】世田谷区
【お問い合わせ】世田谷パブリックシアターチケットセンター 03-5432-1515(10:00-19:00)
https://setagaya-pt.jp
【公式HP】https://setagaya-pt.jp/stage/32248/
【公式X】@Yerma_sept
【公式Instagram】@yerma_sept
■ツアー公演
◆兵庫公演
【日程】10月17日(土)~18日(日)
【会場】兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
https://www1.gcenter-hyogo.jp/
【主催】兵庫県、兵庫県立芸術文化センター
◆宮城公演
【日程】10月31日(土)~11月1日(日)
【会場】多賀城市民会館 大ホール
https://www.niitaka-plus.com/ticket/yerma_miyagi/
【主催】ニイタカプラス
◆愛知公演
【日程】11月7日(土)~8日(日)
【会場】東海市芸術劇場 大ホール
https://www.nagoyatv.com/event/yerma_aichi.html
【主催】メ~テレ、メ~テレ事業
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