1960年代創世期のビートルズが蘇る! 舞台『BACKBEAT 2026FINAL』取材会&公開ゲネプロレポート

茨城、愛知、大阪のツアーを経て、2026年5月3日(祝)より東京・EX THEATER ROPPONGIにて上演中の舞台『BACKBEAT 2026FINAL』。東京公演開幕直前に行われた取材会及び公開ゲネプロを取材したので、その模様をお届けしよう。

『BACKBEAT』は、世界的ロックバンド・ビートルズの創成期を描いた1994年公開の伝記映画『BACKBEAT(バックビート)』を、イアン・ソフトリー監督自ら舞台化した作品。結成当初は5人編成だったビートルズに、メジャーデビューを待たず袂を分かつことになるバンドメンバーが存在した……という史実が基になっており、日本では2019年に初演、2023年に再演。翻訳・演出は、石丸さち子、音楽監督は、森大輔が務め、ビートルズ結成時のメンバーたちの葛藤や心の揺れを描く青春物語を再び創り上げる。

スチュアート・サトクリフ役は、戸塚祥太(A.B.C-Z)。ジョン・レノン役は、加藤和樹。ジョージ・ハリスン役は、辰巳雄大(ふぉ~ゆ~)。ポール・マッカートニー役は、JUON(THE& ex FUZZY CONTROL)。ピート・ベスト役は、上口耕平。19年の初演から熱量高く演じ、絆を深めてきた5人が若き日のビートルズとして再集結。共演には、アストリッド・キルヒヘア役の愛加あゆ、クラウス・フォアマン&リンゴ・スター役の林 翔太、に加え、鍛治直人東山光明田川景一安楽信顕、そして60年前のビートルズ来日公演で前座を務めた尾藤イサオと存在感と実力を備えた、個性豊かなキャストが揃った。

あらすじ】
1960年、イギリス・リヴァプール。絵の才能を持つスチュアート・サトクリフ(戸塚祥太)は、同じ学校に通う親友ジョン・レノン(加藤和樹)に誘われ、ロックバンドにベーシストとして加入する。スチュアート、ジョン、ジョージ・ハリスン(辰巳雄大)、ポール・マッカートニー(JUON)、ピート・ベスト(上口耕平)ら5人の”ビートルズ”は、巡業で訪れたドイツ・ハンブルクの地で頭角を現してゆく。とある夜、女性写真家のアストリッド・キルヒヘア(愛加あゆ)が、自身もアーティストでありミュージシャンであるクラウス・フォアマン(林翔太)に連れられインドラクラブにやってくる。スチュアートとアストリッドは互いに運命的な出会いを感じ、恋に落ちる。スチュアートは彼女との出会いをきっかけに再び絵を描き始め画家の道を志すが、ビートルズは魅力的なナンバーを次々に打ち出し、評判は日に日に高まってゆく――。

舞台セットをバックに舞台上で行われた取材会では、スチュアート・サトクリフ役の戸塚祥太、ジョン・レノン役の加藤和樹、ジョージ・ハリスン役の辰巳雄大、ポール・マッカートニー役のJUON、ピート・ベスト役の上口耕平、アストリッド・キルヒヘア役の愛加あゆ、クラウス・フォアマン&リンゴ・スター役の林翔太、そしてエルヴィス・プレスリー役の尾藤イサオ、翻訳・演出の石丸さち子の9人が登壇。フォトセッション後に、「尾藤さん、お着換えは?」と言われると、キャスト陣も「来た来た~!」と盛り上がり、今まで着用していた黒い革ジャンを脱ぎ、法被を身にまとう尾藤。そこから和気あいあいとした雰囲気で取材会が始まった。

-尾藤さん、気になるので、その法被の説明をしていただいてもよろしいでしょうか?

尾藤:ビートルズは後にも先にも日本に来たのは1回きり。その武道館公演の際に前座をやらせていただき、その後にこの法被をいただいたんです。「いつもハッピートゥギャザー、みなさんと一緒にハッピーにいきましょう」ということでございます。(一同爆笑)ちょうど60年。歳もとるよね(笑)。
そうそう、(辰巳)雄大くんが岩手に行ったら古着屋さんでこの法被が売ってたんだって。

辰巳:今年の3月に、岩手の古着屋さんにYouTubeで行かせていただいたんです。そのとき、真ん中にドカーンとこの法被が飾ってあって、非売品でした(笑)ビートルズのメンバーが着てたかどうかは定かではないのですが、襟に入っている「JAL」と「日航」の文字が1個だけ逆のもの(尾藤のものは右に「JAL」,左に「日航」)があって、それはリンゴ・スターが着てたものみたいです。そこのものは違ったので、当時の飛行機のスタッフさんが着てたのか、もしくはビートルズのメンバーが着てたのか、それは分からないんですけど。尾藤さんのは、本物中の本物です!

尾藤:びっくりしましたよ!(一同爆笑)家にしまってたのをすっかり忘れちゃって。ビートルズの前座をやらせてもらえるなんて考えもしなかったんですけど。今まで僕が経験した一番大きいところが「日劇ウェスタンカーニバル」でキャパ約3000人弱。武道館は当時1万人ですから。その1万人の前で歌えることが本当に幸せでした。あっという間の60年でしたね。

-今回の舞台のことについて、石丸さんからお話を聞かせてください。石丸さんは初演からずっと関わってきて、ファイナルである今回のツアー、近くでご覧になっていて、キャストの皆さんはいかがですか?

石丸:「本当にビートルズを演じていいのか」と、一つ一つ手探りで、苦悩しながらつくってきたので、とても感慨深いです。アストリッドの写真や、クラウスの絵などが証言してくれてはいるのですが、あの頃のビートルズは誰も知らなくて、記録が残っていないので。このファイナル公演で、彼らの熱と、あの頃のビートルズが湛えていた熱が一緒になったという実感があります。もう恐れも不安もなく、今も出てきたくてたまらないビートルズがここにいます。年齢に関係なく、先の見えない未来に向かって疾走する――。人間が本質的に持っているエネルギーを、ストレートにぶつけ合い、人間ってこんなに滑稽で、こんなに激しく、こんなに悲しく、そしてこんなに生き抜こうとしてるんだ、という姿を彼らが見せてくれます。そして、東京公演ではまた少し変更もあります。劇場の空間が変わり、生々しいライブ、そしてより洗練され、荒々しいストレートプレイをお見せできると思います。ご期待ください。

―ビートルズの皆さんにお伺いします。ついにファイナルを迎えました。みなさん、もう3回目ですが、この作品にかける思いを聞かせてください。

戸塚: 今回、ファイナルということで、たくさんのお客様やスタッフさんにこの作品を愛していただいているんだなと実感しています。自分としては、たくさんの方々の気持ちを自分なりの色に変換して、ステージの上に優しく叩きつけていきたいなと思っております。

非常に楽しい時間を過ごさせてもらっていますね。もちろん厳しい瞬間だったり、しんどいときもあったんですけど、みんなで一緒にそれを乗り越えた素敵な稽古の時間がありまして。喜びをみんなで共有できているという気がしていて、楽しかったなって(笑)。(東京公演は)まだ今からですけど(笑)。水戸だったり、豊橋だったり、大阪だったり、ツアーを重ねての現在の状況なんですけれども。多分、今後の自分の人生の中の端々で、今回のことを「あのとき楽しかったな」「みんなで笑ってたな」と思い出すのかなって気がしています。

―この作品は、戸塚さんの音楽人生にも大きな影響があったのではないかと思うのですが、いかがですか?

戸塚:そうですね。めちゃくちゃ大きいですね。ビートルズは、音楽を好きになった人は絶対一度は通る道だと思います。ジョン・レノンの曲にも、中学校のときの英語の教科書に載っていたから、僕は出会えたっていうのもあったので、ジョン・レノンやビートルズに導かれてきたと言っても過言ではないのかもしれません。今回の期間、自分にとってもそうですし、こうやってお客様とスタッフさんとチームのみんなで共有できるのが、本当に嬉しいです。

―加藤さんはいかがですか?

加藤:僕は「ファイナル」と言ってますけど、初演も再演も「ファイナル」の心積もりでやってきたので、複雑な気持ちではあるんですけど。本当に1回1回がファイナルにふさわしい、熱量をもった公演になっていると思います。それだけ我々は体を張り、命がけで、この「ザ・ビートルズ」という、とてつもなく大きい存在に向かい合い、彼らと共に進んできた、それがこの「BACKBEAT」という公演だと思っております。

本当に大変なことは、ビートルズをそれぞれが演じるということで。石丸さんもおっしゃっていましたけど、とんでもなくエネルギーをもった彼らが最初は本当に怖かったです。自分が「ジョン・レノンか」って思いましたし。ただ、やはり1人ではつくれないところがあって、このメンバー、そしてスタッフのみなさんに支えていただいて「ジョン・レノン」としてこの日々を生きてきているので、このまま最後まで突っ走り、最後にはみんなで、「俺ら、やりきったね」って、笑い合えたらいいなと思います。

-みなさん演奏するときも完全に役になりきっていますが、「ジョン・レノン」になるための役づくりは何かしましたか?

加藤:初演のときは、やはり自分が引っ張って頑張らなきゃというのがあって、すごく悩んだんですけど。今はただ自由でいればいいなって。そうすると、みんながジョンにしてくれるので、自分で頑張ろうというのは今は特にないですね。とにかくめちゃくちゃやれば、みんなが助けてくれると思っているので、すごく他力本願なジョン・レノンです。みんなには信頼しかないです。

-それではこの作品のためにギターを始めた辰巳さん、お願いします(一同笑)

辰巳:正確に言いますと、この舞台の初演のときに出演したくて「ギターが弾ける」と嘘をついた辰巳です。「BACKBEAT」という作品を日本でやるってことは、演劇業界でも噂になってまして。「ふぉ~ゆ~のメンバーで、ギターをちょっとでも弾ける人いたっけ?」と聞かれたときに、絶対「BACKBEAT」だと思って「僕弾けます!」って言ったんです。ギターの初心者のまず第1の壁「F」というコードがあるんですけど、あれがギリギリ弾けないくらいだったんですけど、「弾けます!」と嘘をつかせていただきました(一同爆笑)。でもそのおかげで僕は世界初かもと言われている、「リードギター」というポジションを築いたジョージ・ハリスンと出会いまして。本当にギターのテクニックが必要な役なんですけど、そこから7年経ち、今、みんなが「ジョージだよ」「ギタリストの手してるよ」って言ってくれるまで、自分の中でもずっとギターに触れてきた7年間でしたね。

何よりこの「BACKBEAT」と出会って、文献を読んだり、さわ子さんと話をしたり、写真の中のジョージの表情や、来日時の演奏中に尾藤さんに一番手を振ってくれたのがジョージだったいう話から、「静かなビートル」と言われていたジョージが、ジョン、ポール、リンゴにはない「人懐っこさ」で、いろんな方をビートルズと繋げていたんだなと分かったんです。ジョージに関するたくさんのことをみなさんと共有したおかげで、今は自分なりのジョージ・ハリスンとしてステージに立っている自信があります。

この7年間、みんなとビートルズとして生き、今回も水戸、豊橋、大阪とやってきて、ビートルズが「本当に売れたい!勝ち抜くぞ!」って言っていた人生を、毎公演本気で後先考えずに生きてきたので、舞台はファイナルなんですけど、このバンドは一生続けたいなと思っています(一同笑)。本当に強い気持ちでビートルズの魂を僕らかなり胸に刻んでいるので、ビートルズの魂を刻んだバンドとして、バンド活動は続けたいと思っています!(一同笑・拍手)

実は、今年「ふぉ~ゆ~」で武道館公演をするんです。ビートルズが60周年というこのタイミングで、ビートルズ4人が60年前に立ったステージに「ふぉ~ゆ~」の4人で立つ。その覚悟もあるので、まずその武道館をしっかり成功させた後に、このバンドで武道館にいつか立ちたいです!嘘を本当にする男です!(一同爆笑)

-JUONさんも、いつも弾いてるのとまた違う弾き方もあったりで大変ではないかと思いますが、いかがですか?

JUON:普段の音楽活動では右で弾いてるんですけど、ポールは左なんです。初演のときは半年ぐらいずっと家で弾いていて、食べながらも弾いてました(一同笑)。僕、食べるときは左なんですけど、でも右にしたんですよ。脳って、そうやって意識して切り替える努力をしていると、徐々に変わっていくらしいんです。変な話ですけど、今では右で弾くよりも左で弾く方が快感なんです。脳が嬉しがってるんですよ。

-歌い方とかも意識されていますか? 

JUON:どうですかね。僕は昔からビートルズを聴いてきたので、今回の初演からこの舞台に携われていることは、自分の人生にとってこの上ない幸せの極みですし、本当に嬉しいです。その中で、自分の見てきたビートルズの映像だったりをそのまま純粋にやっているだけですね。「こうやってるからこうしよう」というのはあんまりなくて、やりすぎない方がポールになっていくなっていう自分の感覚があって。自ら自然に出てくるものが、意外にもポールのフィルターを通しての自分の道として見えたので、それを信じてやっています。

-上口さんは、いかがでしょうか?

上口:そうですね。さっきジョンが言ったんですけど、毎公演「ファイナル」の気持ちというのはまさにその通りで。みんな舞台人なので、普段の公演、特に公演が続く場合は、ここはセーブしようとか、ある程度調整したりすると思うんですね。でも、この作品に関しては、みなさんそれが不可能なようで。僕は後ろのドラムセットから見てるんで一番分かるんですけど。

例えば、「今日リハーサルだからセーブしようね!」って言った途端に爆発するんですよ。それを後ろから見てると、「うわーっ!」て僕も結局テンション上がっちゃうんです。これまで地方を回ってきて、それぞれが毎公演違う爆発のし方をするので、何が起こるか毎日分からなくて、僕は後ろから毎日ゾクゾクしながら見てるんです。今回東京公演が19回あるので、どうなってしまうか僕にも分からないですが。多分すごい景色が見れると思いますので、是非目撃しに来ていただきたいなと思います。僕はドラムセットに座りながらゾクゾクする毎日を過ごすと思います。

-そのゾクゾクが今回20曲以上もあるんですよね。体力的にも大丈夫でしょうか?

上口:そうなんですよ!毎日みんなのことを心配してるんですよ!「そんなに飛んで大丈夫?」って(一同笑)。でも心配もありますが、「何が見えるんだろう」「自分もそれもらってどうなるんだろう」「お客さんもどのように盛り上がってくれるんだろう」といった楽しみも強いです。東京は今までの劇場よりも舞台が近いので、一つになる感覚がより味わえると思っているので楽しみです。

-そして絆がもう出来上がってるチームですけど、林さんは初参加してみていかがですか?

林:最初すごいドキドキしたんですけど、今は毎日楽しんでやらせてもらっています。ドラムも今回初めてやらせてもらって、最初のレッスンのときに先生からすごく褒められちゃって(一同笑)。今回3カ所地方を回ってどんどん上達しちゃって、「ピートさんお疲れ様です」みたいな感じで(笑)。(周りから「宣戦布告かー!」の声)絶対に5人で武道館に立ちたいと思います(一同大爆笑)。

-そして愛加さん。今回2回目の参加ということですが、このみなさんの絆をご覧になっていかがですか?

愛加:みなさん、毎日こんなに大変なライブを重ねているのに、舞台袖ではずっと笑い合ってふざけ合っているので、「あぁー男の子って面白いな」って。(「保護者か!」と周りから突っ込みつつ笑いが)今回は女子1人なので、みなさんにとても助けていただいて、アストリッドとして舞台に立たせていただいて幸せでございます。

-前回と違うところって感じますか?

愛加:今回さち子さんからは「客席の人に嫌われてもいいから!それぐらい強い女性であってほしい」と言われたことがとても印象に残っています。アストリッドは、誰かに好かれようとする人ではなく、自分の持っている芸術に猛る思いやスチュへの想いに一本筋が通っている人で、ものすごく達観しているけど、繊細な部分も持ち合わせているという、とても難しい役どころです。前回はこのすごい作品の再演から入るというプレッシャーもあったので、私自身が必死すぎて、周りとコミュニケーションがうまくとれていなかったという反省点がありました。今回は前回を超えて、みなさんと目を合わせて心を通わせられているという実感があるのでとても楽しいですし、そのぶん、みなさんの楽しそうな雰囲気がすごく伝わってきます。

-そして尾藤さん、本物のビートルズと一緒の舞台に立った尾藤さんからご覧になって、このビートルズはいかがでしたか?

尾藤:みなさんの話を聞いていてもそうですが、一人一人が、楽器を演奏するときはもちろん、他のどんな仕事をするときでも「俺は最高!私は最高!」と、自信を持ってやっていってほしいと思います。僕もこの5人のビートルズと初舞台で出会ってから7年経ちますが、今話を聞いていて、本当にお別れが寂しいというか。さっき雄大君も言ってたように、武道館じゃないけども、みなさんとまたどこかで何か機会があったら、ぜひぜひやりたいと思っております。

-そのときにはもちろん、尾藤さんも一緒に!

尾藤:あの、僕、ビートルズじゃなくて、プレスリーの役で出てるんですよ。僕はプレスリーの大ファンなんです。ビートルズが出てきたとき、初めは「なんだ?このボンボンたちは!」と見てたのですが、ビートルズが初めて来日し、ジョン・レノンが一番初めに「Rock and Roll Music」を歌うんですけども、彼が出てきて手をチラっとやるだけで「うわぁー!」、体をちょっとこっちに向けるだけで「うわぁー!」って歓声が起こるんです!そんな中、ジョン・レノンが前に出てきて歌い出すと、もうっ! 私は大のプレスリーファンなんですけど、その1曲を聴いて「こいつら、かっこいいな!」と思ったのが、ビートルズの第一印象ですね。そして、このみなさんと7年前にやり始めて一緒に公演ができ、このビートルズもそうですけども、何か機会があったらみなさんとまた仕事を一緒にやらせてもらいたいと思っておりますので、よろしくお願いします。

―最後に代表して戸塚さんと加藤さんからお客様へメッセージをお願いします。

加藤:7年前、この初演を迎えた「BACKBEAT」が再演を重ね、今回がファイナルとなります。これでもかっていうぐらい思いのこもったストレートプレイで、演劇好きの方だけでなく、ビートルズ好き、音楽好きの人にも、確実に楽しんで帰ってもらえる作品になっておりますので、一度や二度、三度、足を運んでいただけると嬉しいです。

戸塚:「BACKBEAT」ファイナルにして最高傑作が出来上がりました。俳優が芝居をし、そして生演奏をするという、なかなか他では味わえない作品になっていると思います。気軽に劇場に遊びに来てください。パーティーに来たという感覚で楽しんでもらえたらと思います。一緒に楽しみましょう! ぜひみなさん劇場にお越しください。

上口耕平、JUON、加藤和樹、戸塚祥太、辰巳雄大
(撮影:岡 千里)

取材会の後には、1幕の公開ゲネプロが行われた。ここからは、その模様をお伝えする。ネタバレが入るところもあるので、注意して読んでいただければと思う

本作は、スチュアート・サトクリフとジョン・レノンの固い友情を軸に、結成まもないビートルズの5人のメンバーと彼らを取り巻く人々の若き日々を描いた青春群像劇。
第1幕では、画家志望のスチュアートがジョンに誘われてバンドのベーシストとなり、ビートルズを結成。巡業先のハンブルクで演奏を重ね着実に知名度を上げていくが、最年少ジョージの年齢詐称が発覚し、イングランドに強制送還されるまでが描かれる。

実は、筆者はビートルズをよく知らない。知らないのだが、5人の「ビートルズ」が奏でる生ライブの迫力に圧倒された! キャスト陣がとにかく熱い! かき鳴らされるギター、魂を揺さぶるボーカル、そしてズンズンと身体の奥底まで響き渡るドラムのビート、すべての音楽が一体となって身体を包み込む。まるで本物のライブ会場にいるような感覚で、立ち上がって拳を振り上げ、一緒にシャウトしたい衝動に何度も駆られた。当時のビートルズへの熱狂も、きっとこんな感じであったのだろうと、想像してしまう。1幕のみであったが、取材会でキャストのみなさんが「熱量」という言葉を何度も口にされていた通り、その5人の「熱量」が舞台にほとばしり、観ているこちらも胸が熱くなった。

JUON、辰巳雄大、上口耕平、加藤和樹、戸塚祥太
(撮影:岡 千里)

スチュアート・サトクリフを演じる戸塚祥太は、青春期特有の荒削りな勢いの中にもどこか「影」を感じさせる佇まいが印象的だ。ビートルズのメンバーでありながら、本来は画家であるというスチュアートの二面性、その間で揺れ動く繊細な心の機微を、戸塚は見事に体現していた。また、演奏中にサングラスをかけ、ときに客席に背を向けながらジョンの後ろで少し隠れるようにしてベースを弾く姿は、演奏に対する彼の自信のなさを表しているようで深く心に残った。

アストリッドに恋してからのスチュアートは、バンドとして大切な局面でも恋を優先してしまう。その盲目的な姿は「若さゆえ」ともいえるが、その行動はプロとしてはダメなのでは?!と突っ込みたくなる場面もあった。が、それは悲しいかな、筆者が大人になりすぎてしまったからなのかもしれない。アストリッドの隣こそが彼本来の「居場所」だったのではないか。まさにアストリッドのいう「運命」に導かれ、彼は辿り着くべき場所に辿り着き、再び絵を描くという彼本来の心が追い求めるものを満たせる場所を見つけたのだろう。

今回は1幕のみの観劇であったため、彼がこの先に辿る未来を見届けることは叶わなかった。しかし、悲劇的な結末を知っているからこそ(筆者は事前に『BACKBEAT』の映画を見て行った。英語版で字幕がなく流れしか分からなかったが…笑)の「運命」を戸塚がどのように演じ切るのか、続きが見たくてたまらなくなった。

加藤和樹、戸塚祥太(撮影:岡 千里)

スチュアートと固い友情で結ばれている親友ジョン・レノンを演じるのは加藤和樹。彼はとにかく華がある。立ち姿、ギターを弾き歌う姿、そしてタバコを吸う仕草など――。一つ一つに色気があり、目を惹くのだ。魅せ方が非常に上手い! 彼が演じることにより、ビートルズのリーダーとしてのジョンの姿がより説得力をもってリアルに浮かび上がってくる。加藤は、自信満々でいながら嫉妬深く、ちょっとひねくれ者で、何かにイラつき生き急いでいるようなジョンの複雑な性格を魅力たっぷりに演じていた。

そんな一癖あるジョンでも、スチュアートのこととなると話は別だ。バンドの大切なレコーディングの日に姿を見せなかった彼を、結局は許してしまうような優しさも持ち合わせている(筆者だったら絶対激怒するところ!)。彼のことが心から好きだからこそ「一緒にビートルズをやっていきたい」という強い思いがあってのことだろうと思うが、彼本来の才能を発揮する場所、本当の居場所はここ(バンド)ではないということに、ジョン自身もこのとき薄々気づき始めていたのかもしれない。アストリッドの登場で、2人の間には少しずつ距離ができはじめる。筆者の脳裏には、物語の冒頭でジョンがスチュアートをバンドに誘い、楽しそうにベースの弾き方を教えながら奏でていた「Johnny B.Goode」のシーンがふとよぎり、胸がギュっと締め付けられた。

上口耕平、加藤和樹(撮影:岡 千里)
加藤和樹、愛加あゆ(撮影:田辺まゆ)

ジョージ・ハリスンを演じるのは辰巳雄大。ビートルズメンバーの中では最年少で、みんなの弟分的な存在。明るく屈託がなく、バンド内でもムードメーカーで、何をしても憎めず許せてしまいそうなジョージをお茶目に演じていたのが印象的だった。彼もまた華があり、ふとした瞬間に思わず目がいってしまう。取材会では、「初めはギターが弾けなかった」と話していた辰巳だが、楽しそうにノリノリでジャンプしたり、のけぞったりしながらギターをかき鳴らす姿からは、そんなことを微塵も感じさせない。初演から7年間ギターに触れ続けたという辰巳の努力の賜物であろう。ギターがすっかり身体に馴染み、一体となって演奏する姿からは、ほとばしるようなエネルギーを感じた。

JUON、辰巳雄大(撮影:岡 千里)

ポール・マッカートニーを演じるJUONの歌唱力には圧倒される。アコースティックギター片手にバンドを売り込みにいった先で、甘い声で歌いあげる「A Taste of Honey」が絶品だ。スチュアートがアストリッドへの気持ちを独白するシーンのバックに流れることもあり、その歌声に思わず酔いしれてしまう。また、歌といえば、エルヴィス・プレスリーを演じる尾藤イサオの「Hound Dog」もさすがの迫力である! 渋さとロック魂を感じる歌声には心底しびれた。

尾藤イサオ(撮影:岡 千里)

身体に響き渡るドラムを叩くピート・ベストを演じるのは上口耕平だ。メンバーの中でも異質な存在として描かれ、女や酒、ドラッグに溺れることなく、他の4人とは一線を画す。上口は、決して周囲に流されない芯の強さをもつピートを抑えた演技で好演していた。後に彼はバントを離れることになるとのことだが、物語がどのように展開し、彼がメンバーとどのように袂を分かつことになるのか、気になるところである。

そのピートと入れ替わりでバンドメンバーとして加入するリンゴ・スターと、1幕では、アストリッドの恋人であるクラウス・フォアマンの2役を演じたのが林翔太である。クラウスはビートルズの大ファンであり、スチュアートにアストリッドを引き合わせたことで、その後悲しい運命を辿ることになるのだが…。林は、そんな人のよい優しいクラウスを好演。ビートルズが大好きだからこそ、どうしようもないやるせなさを抱える彼の想いに、観ているこちらも切ない気持ちになった。2幕ではどのようなリンゴ・スターを演じたのか、その演じ分けがとても気になる。

そして、物語のキーマンであるアストリッド・キルヒヘアを演じるのは愛加あゆ。熱量高い男性陣の中で、まさに紅一点。彼女が登場すると、劇場の空気が一変する。筆者には、熱い嵐が吹きすさぶ中の「台風の目」のような存在に思えた。静かな情熱を内に秘め、美しく凛とした佇まいに、金髪のショートヘア。彼女の一本筋の取った生き方を象徴しているようで、スチュアートはもちろん、ビートルズの面々が魅了されたのも納得の堂々たる存在感であった。ジョンとタバコの火を分け合うシーンは息を呑むほど美しい。これは同姓である著者も惚れ惚れしてしまった。今回の公演で、「メンバーと心を通わせられている実感がある」と話していた愛加の演技には、常に自分を信じた道を突き進むアストリッドの強さがあった。「観客に嫌われてもいい」と演出の石丸から言われたそうだが、むしろその媚びない強さが筆者にはとても魅力的に映った。

愛加あゆ、戸塚祥太(撮影:田辺まゆ)
愛加あゆ、加藤和樹(撮影:田辺まゆ)

これら個性的なキャストが、全力で奏でる1960年代のビートルズ! 5人の熱量も凄まじく、20曲以上もの熱い生演奏が聴けるとなれば、面白くないわけがない。ぜひ劇場に足を運び、ライブ感を全身で体感してほしい。そして、悩み苦しみ、もがきながらも懸命に生きた彼らの「若き日の生きざま」を、ぜひその目で見届けてほしい。

取材・文:彩川結稀
撮影(一部):田辺まゆ

『BACKBEAT(バックビート)』公演概要

作      イアン・ソフトリー  スティーヴン・ジェフリーズ
翻訳・演出  石丸さち子
音楽監督   森 大輔

出演     
戸塚祥太(A.B.C-Z) 加藤和樹
辰巳雄大(ふぉ~ゆ~) JUON(THE& ex FUZZY CONTROL) 上口耕平
愛加あゆ 林翔太
鍛治直人 東山光明 田川景一 安楽信顕
尾藤イサオ

企画     シーエイティプロデュース
製作      シーエイティプロデュース、テレビ朝日

公式サイト   https://www.backbeat-stage.jp
公式X    @BackbeatStage
ハッシュタグ  #バックビートファイナル

【プレビュー公演】2026年4月12日(日) ※公演終了
【愛知公演】   2026年4月17日(金)~19日(日) ※公演終了
【大阪公演】   2026年4月25日(土)~26日(日) ※公演終了

【東京公演】
公演日程     2026年5月3日(日祝)~17日(日)
会場       EX THEATER ROPPONGI
チケット料金   S席 12,500円/A席 10,000円(全席指定・税込/未就学児入場不可)
お問合せ     チケットスペース 03-3234-9999(10:00~15:00 ※休業日を除く) 

【兵庫公演】
公演日程     2026年5月21日(木)~24日(日)
会場       兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
料金       12,500円(全席指定・税込/未就学児入場不可)
お問合せ     キョードーインフォメーション 0570-200-888(12:00~17:00 ※土日祝休業)

彩川結稀

大手出版社にて、雑誌編集・動画制作などに携わる傍ら、演劇活動・音楽活動にも励む。社会人劇団にも所属していたが、体力に限界を感じ、現在はフリーで活動中。

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