咲妃みゆ、松下優也、昆 夏美出演 『クワイエットルームにようこそ The Musical』ゲネプロレポート

2026年1月12日(月・祝)~2月1日(日) THEATER MILANO-Za(東急歌舞伎町タワー6階)にて、COCOON PRODUCTION 2026『クワイエットルームにようこそ The Musical』が上演中だ。

大人計画の主宰であり、作家・演出家・俳優とマルチに活躍する松尾スズキが、2005年に単行本として刊行した『クワイエットルームにようこそ』。精神病院の閉鎖病棟を舞台に、精神的な問題を抱える人々の絶望から再生の日々をリアルに描き、第134回芥川賞にノミネートされるなど高い評価を受けた。2007年には松尾が自ら脚本・監督を手掛け映画化し注目された。

本作を「いつかミュージカルに!」と松尾が長い時間をかけて構想を温めてきたが、ついに新作ミュージカルとしてお披露目された。音楽を手掛けるのは、Bunkamuraシアターコクーンで上演された作品でも多彩な楽曲を生み出してきた宮川彬良。振付は、あらゆるジャンルを軽々と飛び越え、ユーモアあふれるダンスで観客を魅了するCHAiroiPLIN主宰のスズキ拓朗が手掛ける。

【ストーリー】
バツイチで28歳のフリーライター・佐倉明日香(咲妃みゆ)は、パートナーでバラエティ番組の放送作家・焼畑鉄雄(松下優也)と同居。売れっ子ライターとして大物芸人・墨田(皆川猿時)への取材や、原稿の締切に追われ、ストレスフルな日常に飲み込まれていく。ある日、目覚めると見知らぬ白い部屋にいた。そこは「クワイエットルーム」と呼ばれる、女子専用の精神科病院の閉鎖病棟。ストレスの捌け口として大量摂取した睡眠薬が原因で意識を失い、オーバードーズをした自殺志願者とされてしまったのだ。突如として放り込まれた異質な環境に戸惑いながら、厳格な看護師・江口(りょう)や、山岸(桜井玲香)、入院初日に出会った少女・ミキ(昆 夏美)、元ぽっちゃり専門デリヘル嬢の久米(皆川猿時)、元AV女優の西野(秋山菜津子)ら個性的な患者達と接し、次第に閉鎖病棟に馴染んでいく。同時に日常から離れた明日香は、自身とその人生、鉄雄との関係も見つめ直し始める。退院に向けて、さまざまな事情を抱えた仲間たちと過ごす日々が始まった。

初日を前に開催されたゲネプロを観劇。その模様をお伝えしよう。主人公のフリーライター・佐倉明日香は、ライターとして大きな仕事を任され充実していたが、執筆が進まず、編集長から何度も催促されるなどストレスのかかる日々を送っていた。そんなある日、突然気を失った明日香が目覚めると、そこは精神科病院の閉鎖病棟だった。

撮影:細野晋司

明日香を演じる咲妃は、明るく人当たりの良いフリーライターをのびのびと演じている。何か訳ありな過去を抱えているようだが、サバサバした人柄からは、精神科病院に入院させられる理由が見当たらない。

撮影:細野晋司

そんな明日香と同棲しているのが、松下が演じる放送作家の焼畑だ。人は良いのだが挙動不審な彼は、明日香にもしものことがあったら…とパニック状態になる。ロン毛姿で登場した松下は、焼畑の独特なキャラクターをインパクトのある演技で見せた。

撮影:細野晋司

明日香が入院先で出会う患者の一人が、長い間摂食障害を患っている少女・ミキだ。演じている昆は、ギャルっぽい風貌がよく似合う。筆者はミュージカル『マリー・キュリー』で、昆が演じるマリーと松下が演じるピエールを見ているので、今回のような役どころで再び同時に2人を観られることに高揚した。

撮影:細野晋司

明日香が入院している病院には、個性豊かな看護師がいるのだが、中でもりょうが演じる江口は抜きんでた存在だ。唯一、本作の映画版でも同じ役を演じているとあって、気合の入り方が違う。桜井が演じる後輩看護師・山岸のちょっと抜けているところとセットで見ると面白い。

撮影:細野晋司

入院患者も強烈な面々ばかりだ。元ぽっちゃり専門デリヘル嬢の久米を演じる皆川、元AV女優の西野を演じる秋山といった、松尾作品には欠かせない役者たちが躍動する。

特筆すべきは、曲のすばらしさだ。言い方に語弊があるかもしれないが、グランドミュージカル顔負けのクオリティーと言っていいだろう。さすが宮川が手掛けただけのことはある。その素晴らしい楽曲を咲妃、松下、昆をはじめとしたミュージカルで活躍する役者が歌い上げるのだから、聴き応えがあるのは当然だろう。個人的には、久しぶりに笠松はるの美しい歌声が聞けたのがうれしい。

松尾作品らしく、ハチャメチャでクスッと笑える場面は多いものの、扱っている題材は重いものだ。後半にかけて身につまされるエピソードが展開されるが、シリアスな空気をあまり感じさせない。物語に登場する人物が、自分なりの道を見つけていく姿を温かい目で見守ってほしい。本公演はTHEATER MILANO-Zaで2月1日(日)まで。

取材・文:咲田真菜

撮影:星野麻美

松尾スズキ コメント
ミュージカル界のど真ん中にいる方たちと一緒に仕事をすること自体が初めてで、そこに僕の昔からの仲間が混じって同じ土俵でやることがとても新鮮ですし、皆プロだなあと日々感心していました。「クワイエット~」は、自分の作品の中ではいちばんシンプルな内容で、歌や踊りで遊べる隙間や余韻のあるこの作品だからこそ、結果的にミュージカルに向いていたと思います。実際、原作は女性の一人語りなのですが、その語りの間が、歌を入れる余白になったり、皆さんに当て書きをしているうちに原作にはなかったエピソードが生まれ、それを入れ込むこともできました。なにより、楽曲はもちろん、皆の歌が素晴らしいので、毎日の稽古が本当に楽しかったです。

最初に宮川さんに楽曲をいただいたとき、セリフを歌に取り込んでいて、うねるように物語る仕上がりになっていたのでイメージがしやすかったのも、すごく力になりました。今までにもミュージカルはやってきましたが、ついついはすに構えてしまうことが多く、その度、極端な話、「ミュージカルファンの方には観に来ないでほしい」ぐらいに思っていました。ですが今回は、ミュージカルファンの方も真っ直にお待ちしています(笑)。たくさんスターがいるので一度だけではなく二度、三度と、ぜひ観に来ていただけると嬉しいです

咲妃みゆ コメント
いよいよお客様にお届けできるという喜びと同時に、もうここまで来てしまったのかという気持ちが募っております。お稽古が始まって今日にいたるまで本当に濃厚で、演劇の楽しさをひしひしと感じる日々を過ごしていました。数々の松尾さんの作品を一観客として拝見していて、私もそのセリフを発してみたい、松尾さんの作品に出演している俳優さんが羨ましいなと思っていました。自分が客席で感じた心がたぎる感覚を皆さんにも楽しんでいただきたいです。これまでお稽古をしてきましたが、松尾さんがすごく楽しそうで、電池が切れそうになっても頑張ってくださっていると耳にしました(笑)。この作品の生みの親である松尾さんが楽しんでくださっていることが何よりも励みでしたし、松尾さんへの尊敬が毎日増す一方です。

この作品は松尾さんが手掛けられた大切な小説で、それが今回ミュージカルという形でより幅広くお客様にお楽しみいただける作品になっています。楽曲が本当に素晴らしくて、その一つ一つに松尾さんがお書きになった歌詞がありますので、ぜひ楽しみにしていただきたいです。どのキャラクターも今を懸命に生きていて、その様がお客様に届いた時にどのようなご感想をいだいていただけるかなと楽しみです。ぜひ劇場に何度も足を運んでいただけたら嬉しいです!

松下優也 コメント
観てもらったら分かる通り個性の強いキャラクターに囲まれて稽古をやってきました。ここ数年はミュージカルを多くやらせてもらうようになったので、タイトルの「ミュージカル」の部分を担う…とまでいくとおこがましいので、「ミュ」ぐらいを担って「(役の)鉄雄のミュ」で頑張りたいと思います!

松尾さんの作品を観させてもらった時、始めから終わりまで笑いっぱなしで、それは今回の稽古でも変わらずでした。ミュージカルってシリアスな題材も多い中で、これだけ笑いの多い作品をやれることはすごく嬉しいですし、どれだけ自分の持っている力を注げるか勝負でした。稽古場でも、一旦やってみてという自由演技から始まったり、最近そういう稽古は少なかったので体当たり感が刺激的で、そこからどんどん演出がついて形になり、皆の演技を観ていても楽しいですし、自分自身も楽しんで演じています。

昆 夏美 コメント
松尾さんの台本の文字からディレクションを経て立体的になっていく稽古期間がとても楽しかったです。自分の役を追及するとともに、キャストの皆さんの素敵なお芝居を観て、爆笑をしていたらあっという間に初日を迎えていました。松下さんも仰っていましたが、松尾さんがキャスト陣に自由にやらせてくれるところと、手綱を引っ張ってくれるところが稽古を重ねるにつれてどんどん緻密になっていき、それが内容の濃さになるのかなと思いました。

精神科病院の閉鎖病棟の中で行われている物語ですが、病気という個性を持った人たちがたくさんいて、一生懸命生きている人ばかりの作品だなと思います。お客様にも素敵なひと時を過ごしていただけたら嬉しいです。

皆川猿時 コメント
今年ほど純粋にお正月を楽しめなかったのは初めてです(笑)。休みは3日間だけでしたが、むしろ3日でちょうどよかったです。ミュージカルということで形から入ろうと、吸入器と電子キーボードと良いヘッドホンを買いました(笑)。よろしくお願いしまーす!

桜井玲香 コメント
リラックスして稽古に臨めて、今日までが本当にあっという間でした。笑えるところもたくさんあり、音楽も素晴らしい楽曲ばかりです。その中でも、ヒリヒリする体験や考えさせられる場面もたくさんある作品だなと感じてこの作品と向き合ってこられたので、早く観客の皆さまにもお届けしたいですし、いろんな気持ちになっていただけたら嬉しいです。

松尾さんは、これまでお芝居をされているところも拝見していましたし、松尾さんが出演された番組も観ていたので、純粋にお会いしたいなと思っていました。松尾組常連の皆さんのお芝居もですし、松尾さんが見せてくださる仕草などが面白すぎて、どうしたらそんな風にできるんだろうと考える時間になりました。勉強させてもらえる機会になるなと思って飛び込みましたが、今まで感じたことのない新しい刺激をいただいていて素晴らしい学びの場になっています。

◆りょう コメント
皆さん個性豊かで笑いが絶えないキャラクターなのですが、私の役はすごく事務的な人なので、あまり笑っちゃいけないと絶えるのに必死で大変な思いをしています。ちょこちょこ歌ったり踊る場面もあるのですが、ミュージカルと言われてしまうとちょっとハードルが…(笑)。

20年ほど前に映画でナース江口の役で出演させていただいて、また同じ役をいただけるというのは初めてのことでした。ミュージカルということで、何がどうなるのかわからない状況でお稽古を始めたのですが、江口の持っている軸はそのままに、映画よりも少し人間的な温かさやユーモアが入ったキャラクターになっています。先ほども稽古をしていて、振りも間違えるし、今まで噛んでいなかったのに急に噛み始めるし…明日の開幕に向けて少し緊張しています(笑)。でも今までお稽古で学んだことを本番で出せるように頑張ります。

秋山菜津子 コメント
非常に楽しく、笑いが絶えない稽古場でした。ありがたいことに松尾さんの初ミュージカルからご一緒させていただいていて、そのあとも松尾さんが手がけるミュージカル作品のほとんどに出演してきたんですが、本当に松尾さんはミュージカルが好きな方なんだなと今回改めて思いました。楽しく、ちょっと切なく、面白い作品だと思います。

COCOON PRODUCTION 2026 『クワイエットルームにようこそ The Musical』公演概要

【東京公演】
公演期間 2026 年1 月12 日(月・祝)~2 月1 日(日)
会場 THEATER MILANO-Za(東急歌舞伎町タワー6 階)
チケット料金 S 席=12,500 円 注釈付きS 席=12,500 円 A 席=9,500 円(税込・全席指定)
※注釈付きS 席は場面によりご覧になりにくい場合がございます。ご了承の上、ご購入ください。
チケットに関するお問合せ Bunkamura チケットセンター 03-3477-9999 (10:00~15:00)
公演に関するお問合せ Bunkamura 03-3477-3244 (10:00~18:00) www.bunkamura.co.jp
主催 Bunkamura

【京都公演】
公演日時 2026 年2 月7 日(土)~11 日(水・祝)
会場 ロームシアター京都 メインホール
お問合せ キョードーインフォメーション 0570-200-888 (12:00~17:00/土日祝休業)
主催 サンライズプロモーション大阪
共催 ロームシアター京都(公益財団法人京都市音楽芸術文化振興財団)

【岡山公演】
公演日時 2026 年2 月22 日(日) / 23 日(月・祝)
会場 岡山芸術創造劇場 ハレノワ 大劇場
お問合せ キョードーインフォメーション 0570-200-888 (12:00~17:00/土日祝休業)
主催 サンライズプロモーション大阪

作・演出 松尾スズキ
出演 咲妃みゆ、松下優也、昆 夏美、皆川猿時、桜井玲香、
池津祥子、宍戸美和公、近藤公園、笠松はる、
りょう、秋山菜津子
香月彩里、田川景一、エリザベス・マリー、中根百合香、
永石千尋、原梓、藍 実成、感音、古賀雄大、
羽衣、芹犬、等々力静香、中野亜美、吉田ヤギ* (*コクーン アクターズ スタジオ第1期生)

ミュージシャン 吉田 能  熊谷太輔  中條日菜子  福岡丈明  藤野”デジ”俊雄  山下綾香

公式HP https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/quietroom2026/

咲田真菜

国家公務員・一般企業勤務を経てフリーランスのライターになる。高校時代に観た映画『コーラスライン』に衝撃を受け、ミュージカルファンとなり、以来30年以上舞台観劇をしている。最近はストレートプレイも積極的に観劇。さらに第一次韓流ブームから、韓流ドラマを好んで視聴。最近のお気に入りはキム・ドンウク。

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