2026年1月8日(木)~1月18日(日) 東京芸術劇場 シアターウエストにて、楽劇 『フィガロ』が上演中だ。
オペラの原作となったボーマルシェの戯曲「フィガロの結婚」と「セビリアの理髪師」をもとに、荻田浩一による上演台本・演出で、モーツァルト、そしてロッシーニによるオペラの名曲を織り交ぜた作品となる本作。主演のフィガロを演じるのは矢田悠祐、フィガロとの応酬を繰り広げるアルマヴィーヴァ伯爵は山本一慶が演じる。
そしてフィガロの婚約者・スザンナ役に皆本麻帆、伯爵夫人のロジーナ役に朝月希和、伯爵家の小姓・ケルビーノ役に谷山知宏、ロジーナの音楽教師・ドン・バジリオ役に柴原直樹、フィガロに恨みを持つドン・バルトロ役には駒田 一、そして伯爵家の女執事マルチェリーナ役は霧矢大夢が務める。新春に相応しい華やかな顔ぶれとなり、どのような作品に仕上がるか、期待が高まる。
初日に先立ち行われた公開ゲネプロを取材したので、その模様をお伝えしよう。
アルマヴィーヴァ伯爵のもとで使用人として働くフィガロと伯爵夫人ロジーナの小間使いとして働くスザンナは結婚を約束した仲で、顔を合わせるたびにハグをする仲の良さだ。結婚を控えて幸せな気分で過ごす2人だが、ひとつだけ懸念事項を抱えていた。それは、フィガロが仕えるアルマヴィーヴァ伯爵が、スザンナに色目を使うようになったことだ。
伯爵夫人・ロジーナの心遣いで、結婚後は屋敷に住むように言われている2人だが、浮気者のアルマヴィーヴァ伯爵から距離を置くため、新居を手に入れることにする。しかし先立つものがないフィガロは、アルマヴィーヴァ伯爵家の女中頭・マルチェリーナから借金をし、着々と結婚に向けて準備を進めていくのだが…。
新春に相応しい華やかな衣裳に身を包んだキャストたちが繰り広げるドタバタ劇。次から次へとハプニングが起きるため、時間の経過が分からなくなるが、実はフィガロとスザンナのある濃密な1日を描いている。
フィガロを演じる矢田は、明るく元気な青年。幼い頃に両親とはぐれ、浮浪児となった苦労人だ。理髪師やさまざまな仕事を経験した「なんでも屋」としてたくましく生きている。卑屈な面がなく真っ直ぐな人間だが、伯爵などの上流階級の人間に対しては少し手厳しい一面を持っている。「これまでにあまり演じたことがない役」と矢田が言うように、天性の明るさを持つフィガロを演じる姿はなかなか新鮮だ。人間の暗い部分を出すのが上手い矢田だが、今回のような明るい役もとてもよく似合う。歌に関して言えば、矢田が担当するナンバーは2曲。いずれも複雑なリズムで難しい曲なのだが、軽快に踊りながら難なく歌いこなしている。かなり聴き応えがあるので注目してほしい。
アルマヴィーヴァ伯爵を演じる山本は、プレイボーイで能天気なキャラクターを生き生きと演じている。筆者はコメディ作品で何度か山本を観ているが、一挙手一投足で笑いがとれるのが彼のすごいところだ。プライベートでも仲が良いといわれている矢田とのコンビネーションも抜群で、2人がやり取りする場面では、お互いに信頼し合っているのが見てとれる。久しぶりに山本がソロで歌うシーンを観ることができ、大満足だ。
スザンナを演じる皆本は、はつらつとしたキュートな女性を熱演。フィガロのことが大好きで心から信頼している。フィガロとのラブラブぶりはかわいらしいのだが、アルマヴィーヴァ伯爵に言い寄られて露骨に嫌な顔をするところに、フィガロ一筋の一途な面を見せている。
浮気者の夫を持つ伯爵夫人ロジーナを演じる朝月は、美しい佇まいと歌声で観客を魅了した。アルマヴィーヴァ伯爵の心が自分に向いていないと嘆きながらも悲劇的な面は一切なく、品のある優しい素敵な女性だ。アルマヴィーヴァ伯爵の浮気癖を目の当たりにし、長い手を大きく広げて大仰に怒るところにクスッと笑ってしまう。可憐な朝月のコメディエンヌとしての一面を見て、新たな発見となった。
フィガロをめぐり、ドン・バルトロ役の駒田、マルチェリーナ役の霧矢といったベテラン2人も圧倒的な存在感を見せている。
ロジーナとの結婚をフィガロに阻止されたドン・バルトロは、復讐すべくフィガロの前に姿を現す。マルチェリーナは、フィガロが新居を得るためのお金を融通するが、結婚に浮かれているのをよく思わず、あることを画策する。2人はフィガロの結婚を邪魔するやっかいな存在なのだが、実は深い縁があったことが判明する。
ドン・バルトロを演じる駒田は、顔を真っ赤にしながらの熱演が光る。マルチェリーナ役の霧矢は鮮やかなドレスに身を包み優雅な女性に見えるが、フィガロの前で見せる表向きの顔としたたかな一面を見事に演じ分ける。歌唱力に定評がある2人が歌う歌が素晴らしいことは言うまでもない。
独特のせりふまわしで存在感を示すケルビーノ役の谷山と、軽妙洒脱な演技が光るドン・バジリオ役の柴原もしっかり脇を固めている。
演出を手掛けた荻田によると、出演者はミュージカルほど歌っていないということだが、実際に観終わると歌への満足度がかなり高いことが分かる。それは音楽監督・編曲・歌唱指導の福井小百合が手掛けた楽曲の数々が非常に魅力的だからだ。しかも福井のピアノ、佐藤誠のギターといった生演奏で物語が進行していくので、とても贅沢だ。どこかで聞いたことがある楽曲の数々にじっくりと耳を傾けてほしい。本公演は東京芸術劇場シアターウエストにて1月18日(日)まで上演されている。
取材・文:咲田真菜
初日を迎えてのコメント
▼フィガロ:矢田悠祐
僕は荻田さん演出作品に、数えると8作目になりますが、今までとはちょっと違うコメディでポップな作品は初めてです。演出をしていただく度、毎回新しい景色を見ることができて、今回もそういう作品の1つになればいいなと、もうそうなってきていますね。今までやったことがない役柄なので、個人的にも楽しみにしております。
≪見どころについて≫
スザンナとの浮かれ具合。以前に皆本さんと共演した時は、ハムレットとオフィーリアだったので真逆な役どころです。あたたかく見守ってください。
≪メッセージ≫
1年の幕開けに観ていただく作品として、肩の力を抜いて観られる、すごくホンワカしたポップな音楽劇になっていると思います。あんまり気を張らずに気軽に観に来ていただければと思います。
▼アルマヴィーヴァ伯爵:山本一慶
皆さんにお届けできることをすごく楽しみにしていました。240年前のオペラの原作ということで固いお芝居と思いがちですが、何の知識もなく楽しんでいただけるコメディ作品になっています。劇場で皆さんを笑いに誘えたらと思っています。
≪見どころについて≫
僕は一途ではなく、愛を叫び続けております。いろんな方に向けてのたくさんの愛を楽しんでいただきたいと思います。
▼スザンナ:皆本麻帆
いよいよお客様の前で上演できるということで、すごくワクワクしております。お客さまがどんな風にリアクションや受け取り方をしてくださるのか、お稽古場で皆さんのシーンを見ていて私自身どのシーンもすごく楽しくて、ここにお客様が入ったらもっと楽しくなっていくのではないかと、とても楽しみです。劇場でお待ちしております。
≪見どころについて≫
見どころは本当にありすぎるので迷います。私は霧矢さんのマルチェリーナと駒田さんのドン・バルトロのベテランカップルのシーンが大好きです。
▼ロジーナ:朝月希和
私が当初思っていたよりとてもコメディ要素の強い作品に仕上がっています。きっとご覧になった皆さんがクスッっと笑っていただけるところが多々あると思っておりますが、どうなるのかなというドキドキもあります。随所にモーツァルトとロッシーニのとても美しい音楽が散りばめられておりますので、そこも楽しんでいただけるように千秋楽まで努めてまいりたいと思います。
≪見どころについて≫
お稽古で拝見していて、私はおひとりおひとりにお気に入りポイントがあります。皆さまもご覧になると、登場人物それぞれのあそこ好きだなっていうポイントをいっぱい見つけてもらえるはずです。そこが見どころです!
▼ドン・バジリオ:柴原直樹
新年の幕開けにふさわしい楽しいコメディ作品になっています。今回、僕はキャストの中では最年少ですが、皆さん本当に素晴らしくて面白くて強烈で負けないように頑張ります。
≪見どころについて≫
ドン・バジリオはみんなからうっすら嫌われている人で、もちろん普段の皆さんはすごく優しいです。たくさん名前を呼んでもらえるので、みなさんにもドン・バジリオを覚えていただけるように印象に残るように頑張ります。
▼ケルビーノ:谷山知宏
楽劇『フィガロ』というだけあって、稽古場に入る時に歌を歌いながら入っていました。お客さまも観たあと歌を口ずさんで帰っていただけるような、楽しい気分をお持ち帰りいただけたらと思います。お待ちしております。
≪見どころについて≫
この作品は『フィガロの結婚』と『セビリアの理髪師』2つをドッキングしたお話で、セビリアが過去の回想として入ってくる疾走感が楽しくて好きです。そういう物語の壮大なスピード感を楽しんでいただきたいと思います。
▼ドン・バルトロ:駒田一
約1ヶ月以上稽古してきて、もう初日なんだなって思います。稽古場でやることをやって僕なりには出し切ったつもりです。出して出して出して(演出の)荻田さんにかなり削られてシンプルになって、結果的にそれが僕の目標だったので満足しています。これを初日からバーンとぶつけて、たまに舞台上で血管が切れそうで顔が真っ赤になる瞬間があるんですけど、その時は指を差して笑ってやってください。
≪見どころについて≫
この8人のチームワークはとてもいいです。見どころは本当にたくさんありますが、普通の人があんまりいない、ちょっとどこか変わってる、言ってる本人がそうなんですけど、荻田マジックとして演出家の荻田さんはよくまとめたなって思います。休憩なしのあっという間の上演時間なので、どこをとっても面白いんじゃないかと思います。
▼マルチェリーナ:霧矢大夢
衣装をご覧の通り、とてもカラフルなコメディ作品です。モーツァルトとロッシーニのすごく素敵で華やかな音楽が散りばめられておりますので、これを観ていただけたら2026年、良い1年を過ごせそうな作品であると自負しております。皆様にそう思っていただけるように、精一杯努めたいと思います。
≪見どころについて≫
全てが見どころと言いたいところですが、私個人としては今回初共演の谷山さんがすごく独特なキャラクターをお持ちで、この作品の中でも個性的です。本来、谷山さんが演じるケルビーノ役は女性の方が少年役としてお小姓を演じる役ですが、今まで私が見てきたミュージカル俳優さんたちには絶対出せないキャラクターと歌声と個性をお持ちです。ケルビーノが歌う曲は『フィガロの結婚』の中でもすごく有名な曲で、私の中では今回の共演者の中でピカイチ強い印象なので、お客さまの反応が楽しみです。
上演台本・演出:荻田浩一
音楽監督・編曲・歌唱指導:福井小百合
企画・製作:アーティストジャパン
出演:
フィガロ:矢田悠祐
アルマヴィーヴァ伯爵:山本一慶
スザンナ:皆本麻帆
ロジーナ:朝月希和
ケルビーノ:谷山知宏
ドン・バジリオ:柴原直樹
ドン・バルトロ:駒田一
マルチェリーナ:霧矢大夢
日程:2026年1月8日(木)~18日(日)
会場:東京芸術劇場 シアターウエスト
料金:S席9,900円、A席8,800円(税込・全席指定)
お問合せ:アーティストジャパン 03-6820-3500
公式サイト:https://artistjapan.co.jp/figaro2026/
公式X:@aj_figaro2026
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