2025年7月12日(土)東京国際フォーラム ホールCにて『オリンピックコンサート2025』が開催された。オリンピックコンサートは、日本オリンピック委員会(JOC)が、オリンピック・ムーブメントの推進を目的に、オリンピズムに掲げられたスポーツと文化の融合をかたちにした、オリンピック映像とフルオーケストラが競演する唯一無二のコンサートだ。
今回は「つなごう勇気、描こう大きな夢!」をテーマに、辻博之による指揮で、結成10周年をむかえるTHE ORCHESTRA JAPANが美しい演奏を聞かせた。オリンピアンから俳優に転身した藤本隆宏がナビゲーターを務め、過去のオリンピック映像を見ながら、大会ごとに感動がよみがえる時間を過ごすことができた。
第1部は「Rising Togetherーつなごう勇気」と題し、映画『トップ・ガン』よりハロルド・フォルターメイヤーの「トップ・ガン・アンセム」の演奏から始まった。『トップ・ガン』といえば、トム・クルーズの代表作。パリ2024大会の閉会式で、トム・クルーズがサプライズでスタジアムに舞い降りた姿を思い出さずにはいられなかった。
続けて演奏されたスメタナの連作交響曲「わが祖国」第4曲ボヘミアの森と草原よりが終わると、寺川綾(水泳・競泳)と三宅宏実(ウェイトリフティング)を迎え、オリンピアントークが繰り広げられ、昨年行われたパリ2024大会を振り返った。以下、その詳細をお伝えしよう。
藤本:お二人は、パリ2024大会をどのようにご覧になったのでしょうか? 寺川さんはキャスターとしてレポートされていましたけれども、いかがでしたか?
寺川:リオ2016大会、東京2020大会は現地で取材をさせていただきましたが、パリ2024大会は初めてテレビでの観戦でした。東京2020大会はお客さんがいなかっただけに、パリ2024大会は選手の皆さんの表情がすごく明るかった印象があります。多くのアスリートが、結果がどうであれ環境に感謝する姿が印象に残ったのがパリ2024大会でした。
藤本:演劇の世界もそうですけど舞台に立てること、そしてスポーツができる環境をありがたく思うというのはすごく大事なことですよね。現役を引退してから時間が経ちましたけど、冷静に競技を見られますか?
寺川:引退するまでは分からなかったのですが、競泳に関しては、頑張っている選手の皆さんを見ると、よくこんなに毎日水の中に入って練習するなというのが正直な感想です。自分が現役時代は気づきませんでしたが、選手の立場でなくなると、集中されている選手の皆さんを見てかっこいいなと純粋に思います。先ほどのような映像を見ていたらハンカチとティッシュが必要ですよね。皆さんの活躍を目にすると、時が経ってもかっこいいな、輝いてるなという感じます。
藤本:ありがとうございます。三宅さんは、コーチを務める所属先の後輩、村上英士朗さんがパリ2024大会に出場されて、現地のパリでご覧になっていると思うのですが、いかがでしたか?
三宅:自分の所属の選手が出場したことはすごく嬉しかったです。パリ2024大会は歴史とスポーツが融合し、歴史的建造物の前で競技ができました。これはなかなか経験できないことじゃないかと思います。魅力が満載で今の時代に合ったオリンピックだったと感じました。
藤本:指導した選手が出場するのは、自分が出場する以上に緊張するものですか?
三宅:緊張しますね。そばで見てきた選手がオリンピックの舞台に上がっていく瞬間はドキドキします。怪我をしないでやりきってほしいという気持ちもありました。一歩離れた目線で、いろんな感情が入り交じるような気持ちで応援していました。
藤本:お二人とも、お子さんがいらっしゃいますが、ご自分のお子さんを選手にしたいですか? 苦しい経験はさせたくないと思う方もいらっしゃると思いますが…。
寺川:自分が3歳から水泳をやってきたので、子どもには違うスポーツを体験させました。
藤本:具体的には何ですか?
寺川:テニスや、今はチアダンスをやっています。でも2人とも水泳をやりたいって言い出しちゃって(笑)。水泳もたくさん魅力がありますが、親と比べないようにしようと思いますし、楽しんでやってくれたらいいなと思っています。
藤本:三宅さんはいかがですか?
三宅:まだ1歳半で小さすぎて想像できないです。私は父と師弟関係でしたが、もし自分の子どもが同じ競技を選んだら、父と同じようにできるのかな、冷静に見られるのかなと思いますね。他のお子さんでも頑張る姿にボロボロ泣いているのに、自分の子どもだったらどう対応できるのだろう…と想像してしまいました。
寺川:相談にのるよー!
三宅:(笑)よろしくお願いします。
藤本:来年はいよいよミラノ・コルティナ2026冬季大会です。チームジャパンのコンセプトは「ともに、一歩踏み出す勇気を」です。お二人はこの言葉を聞いて、どんなことを思い起こされますでしょうか?
寺川:私が選手の時は、明日何ができるかとか、今日何ができたかということの繰り返しでした。今思うと、毎日がチャレンジの連続でしたね。結婚して子どもが生まれて前に進まざるをえなくなっている。今はそういう環境に身を置かせてもらっていて、一人ではできないことがほとんどです。ですので「ともに」という言葉がものすごく力強くもあり、背中を押してくれると思っています。昨日よりも今日、今日よりも明日というふうに、周りの人とともに知恵を出しながら、アイデアを出して協力してもらいながら、自分なりにこれからも新しいことに挑戦していければとその言葉を通じて改めて感じました。
藤本:三宅さんはいかがでしょうか?
三宅:現役の時を振り返ると、小さな一歩だったり、大きな一歩だったり、でもその一歩を増やすことによって、未来が変わること、成功も失敗もある経験をしました。一歩を踏み出したときに支えてくれるチームメートだったり、家族だったり、いろんな人たちがいるということで、その人たちに助けられてきたと改めて感じました。
藤本:最後に挑戦を続ける後輩アスリートたちに、メッセージをお願いいたします。
寺川:選手の皆さんは、冬の競技も夏の競技も、結果を出すことを追い求めて常にチャレンジする、そういう時間を過ごされていると思います。失敗を恐れず自分の力に変えて、自分を一番信じて、オリンピック、パラリンピックに向けて頑張ってほしいと思います。応援しています。頑張ってください。
三宅:日頃からアスリートの皆さんには、たくさんのパワーとか、挑戦し続ける姿にとても心を動かされています。でもその姿に新しい世代とか時代がつくられ、そして頑張っている姿に未来を変える力がある、大きな力があるといつも感じています。選手の皆さんの挑戦し続ける軌跡をずっと応援したいと思います。皆さん、大きな力を選手に、応援、エールをよろしくお願いします。
オリンピアントークのあと、第1部のラストに、リヒャルト・シュトラウスの交響詩「ドン・ファン」が演奏された。今回のオリンピックコンサートの開催に先立ち、事前に一般の方からパリ2024大会のベストシーンを募集し、中でも多かった、スケートボード・堀米雄斗選手のストリート決勝の模様が演奏とともに映し出された。最後の最後に成功して逆転勝ちし、日本中に感動の渦を巻き起こした堀米選手の映像に見入り、その時の興奮がよみがえってきた。
休憩をはさんで第2部は、TEAM JAPANによるトークからスタートした。参加アスリートは以下のとおり。ナビゲーターの藤本とのやり取りをお届けする。
鏡 優翔(レスリング)
戸本 一真、北島 隆三、大岩 義明、田中 利幸(馬術)
江村 美咲(フェンシング)
島田 麻央(フィギュアスケート)
村岡 桃佳(パラリンピック・パラアルペンスキー)
米山 知奈(アイスホッケー)
藤本:みなさま、ようこそお越しくださいました。お一人ずつお話を伺っていきたいと思います。まずは、パリ2024大会・レスリング女子76kg級金メダリスト、鏡優翔さん、お願いします。
鏡:初めてのオリンピックでしたが、小さい頃から目指してきたオリンピックの舞台に立つことができて、また重量級だけが取れてなかった金メダルを獲得することができて本当に幸せでした。
藤本:大怪我を何度もされて、それを克服するメンタルの強さはどこからきているのでしょうか。
鏡:本当はメンタルが弱いほうでしたが、いろいろな方に声をかけていただいて「偶然は必然」という言葉を大事にしてきました。怪我も何かを私に教えてくれるものだと思って、ポジティブに乗り越えることができました。
藤本:今後の抱負・目標はございますでしょうか?
鏡:パリ2024大会で金メダルをとって、本当に幸せな気持ちになりました。「もういい」と一度は思いましたが、金メダルをとると皆さんにチヤホヤしてもらえるので(一同爆笑)、またチヤホヤしてもらいたいので、ロサンゼルス2028大会でも金メダルを獲得します。応援よろしくお願いいたします。
藤本:続きまして、総合馬術団体銅メダリスト、大岩義明選手、北島隆三選手、戸本一馬選手、田中利幸選手です。パリ2024大会を振り返っていかがでしょうか。
大岩:私は5回目のオリンピックにしてやっとメダルを獲得できたので、ここまでたどり着くのにすごく長かったという思いがあります。個人でオリンピックに出場していましたが、2010年くらいからチームを組めるようになり、団体でメダルがとれたのは、私にとって本当に幸せなことでした。
北島:このチームは、長く4人で戦ってきた存在です。本当は3人のチームでしたが、最終競技で入れ替わって4人で銅メダルにたどりつけたのは本当に良かったなと。みんなで取れたので本当に嬉しいというのが率直な感想です。
戸本:パリ2024大会で銅メダルを取り「初老ジャパン」というチーム名をいただいてから、もう1年が経つんだなという想いがあります。この1年、いろいろな経験をさせていただいたので、あっという間でした。私は、第1部の冒頭で流れていた陸上のカール・ルイス選手、棒高跳びのブブカ選手、意識朦朧となった状態でゴールしたマラソンのガブリエラ選手…あの辺りでウルウルしてしまう世代なんです。この年になっても十分活躍できる馬術に出会えて、素晴らしい経験をさせていただけていることに本当に感謝しています。
田中:パリ2024大会で私はリザーブ選手でしたが、最終的に選手交代で出番がまわってきました。プレッシャーがありましたが、チームのサポートもあり結果を残すことができ、4人でメダルが取れたので幸せな気持ちでいっぱいです。
藤本:「初老ジャパン」と言われるのは、どんなお気持ちなんですか?
大岩:私は49歳で他の3選手より飛びぬけて年が上なのですが、話題にしていただいて良かったなと思っています。
藤本:お一人ずつ、今後の抱負・目標を聞かせていただけますでしょうか。
大岩:オリンピックで金メダルを取っているのが、馬術では唯一、戦前の西大佐だけなんです。それが1932年のロサンゼルスオリンピックでした。次回2028年はロサンゼルスオリンピックですから、ここでもう一回金メダルを目指してやりたいという気持ちです。全力でここに向かっていけたらと思っています。
北島:馬術はまだまだ僕の中ではマイナーなスポーツだと思っています。パリだけで終わらず、次につなげていけるように、また未来の選手にとって活動しやすい環境が生まれるように、私たちが活躍することで、もっとメジャーなスポーツになるようにやっていけたらと思います。
戸本:北島選手がおっしゃいましたが、我々の活躍を見て、今後につながるように若い選手を育てていかなければいけないのも我々の使命だと感じています。皆さんご覧になっても分かりますように、我々はまだ若いので(会場笑)、若い子たちを育てつつも、自分自身も負けないように頑張っていきたいと思っています。引き続き応援よろしくお願いします
田中:今回メダルをとって、周りの方から祝福の声、そしていろんな経験をさせていただきました。次のロサンゼルスオリンピックでは、違った色のメダルを目指して挑戦していきたいと思います。応援のほどよろしくお願い致します。
藤本:続きまして、パリ2024大会・フェンシング女子サーブル団体銅メダリスト、江村美咲選手です。このたびJOCスポーツ賞の特別貢献賞を受賞されましたが、受賞理由が、旗手を務めTEAM JAPANの精神的支柱になり、士気向上に大きく貢献されたということでした。この賞をいただいてどう思われましたか?
江村:選手として成績を評価していただく賞も嬉しいですが、今回は旗手としての活動を評価していただいて、とても光栄ですし、嬉しく思います。ここまで自分が評価していただけたのも、これまでたくさんの方々にご指導いただいたり、いろんな経験をさせていただいたり、フェンシングのおかげだと思っています。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
藤本:パリ2024大会を振り返っていかがでしょうか?
江村:パリ2024大会で、フェンシングはグランパレという100年以上昔に建てられた歴史のある建物で試合ができました。その会場が本当に美しくて忘れられない景色となりました。
藤本:そしてすぐ世界選手権があります。出発は何日ですか?
江村:7月21日です。
藤本:もうすぐですね。今後の目標・抱負をお聞かせください。
江村:世界選手権で優勝できたら1位のままシーズンを終えることができます。今までサーブルではまだ誰も成し遂げていないことなので、まずは世界選手権だけを見て全力で頑張りたいと思います。応援よろしくお願いします。
藤本:続いては、世界ジュニアフィギュアスケート選手権3連覇の島田麻央選手です。まだ16歳でいらっしゃいますので、年齢制限でミラノ・コルティナ大会は出場できませんが、2030年の出場を目指してオリンピックへの思いをお聞かせください。
島田:2030年は長いようでもあっという間だと思うので、一日一日を大切にして、2030年までに何を成し遂げればいいかというのを考えながら練習していきたいと思います。
藤本:今日はメダリスト方々と一緒の楽屋だったと思いますが、何か話されましたか?
島田:私がテレビで見ていたあこがれの選手の皆さんがたくさんいて、ずっと緊張していたのであまり話せませんでした。
藤本:続きまして、北京2022パラリンピック、パラアルペンスキーで3つの金メダルを取った村岡桃佳選手です。村岡さんは夏も冬もオリンピックに出場されているスーパーウーマンでいらっしゃいます。
村岡:前回の北京2022パラリンピックでは、陸上競技に挑戦したこともあってスキー競技にブランクがあいてしまいました。東京オリンピック・パラリンピックが延期になったことで、北京大会に向けて準備できる時間がすごく少なくなってしまいました。陸上とスキーが重複した期間もあって肉体的にも精神的にも過酷な中、何とか北京2022大会に出場できました。コースもすごく難しかったですし、大丈夫なのかな…と思いながらも「絶対に負けないぞ」という強い気持ちを持ってのぞんだ結果、金メダル3つと銀メダル1つと、4つのメダルを獲得することができました。それは自分自身の自信にもつながったと思っています。
藤本:ミラノ・コルティナ大会で 達成したい目標はございますか?
村岡:前回の北京パラリンピック、そして前々回の2018年の平昌パラリンピック、 それぞれで金メダルを獲得できました。次のミラノ・コルティナでは3大会連続となる金メダル獲得を目指して現在取り組んでいますので、ぜひ応援のほどよろしくお願いします。
藤本:続きましてアイスホッケーでソチ2014、平昌2018、北京2022、3大会連続出場の米山知奈選手です。すべてのオリンピックを振り返ってもらっても構いませんので、一言お願いいたします。
米山:今ご紹介いただいた通り、2014年のソチオリンピックから3大会出場させていただきました。アイスホッケーはオリンピックに出場するところからスタートしまして、そこから1勝、そして北京2022大会では決勝トーナメント進出というところまできました。まだメダルには届いていませんが、一歩ずつステップアップして、日本代表として戦ってきました。次のミラノ・コルティナオリンピックでは、その意思を受け継いでくれた後輩たちが良いパフォーマンスをして、さらに良い順位で終えることを期待して、皆さんと一緒に楽しんで応援できたらと思っております。
藤本:今後の抱負、そしてスマイル・ジャパンの強みを一言お願いいたします。
米山:今は指導者としても活動させていただいておりまして、未来を背負っていく子どもたちが、アイスホッケーという競技を楽しんで、世界にチャレンジしていくことを後押ししていけたらと考えております。スマイル・ジャパンという名の通り、強みはやはり笑顔です。アイスホッケーは激しくてタフな競技ですが、仲間同士で笑顔を出してポジティブなエネルギーで世界に挑戦していくところが、スマイル・ジャパンの長所かなと思っております。
参加アスリートの方々とのやり取りの後は、ジュニアレポーターとして参加した3人の子どもたちが壇上に上がった。子どもたちのメンター役となったのは、北京2008大会競泳男子4×100m、メドレーリレーで銅メダルを獲得した宮下純一。緊張気味の子どもたちの気持ちを優しくほぐす姿が印象的だった。
アイスホッケー、ラグビー、新体操に取り組んでいる3人の子どもたちからは、目の前にいるトップアスリートに向けてさまざまな質問が飛び出した。
最初にアイスホッケーを頑張っている子どもから、アウェイの試合で応援が少なく、野次などで圧倒された時に負けない気持ちを維持するにはどうしたらよいかという質問がされた。アイスホッケーの米山選手は、ロシアで開催されたソチ2014大会でアイスホッケーが盛んな国らしく地元の歓声に圧倒されたが「アウェイでも野次だけじゃなく、すごく応援してくれるのがオリンピックのいいところ」と答えた。
パラアルペンスキーの村岡選手は、一般的にパラ競技は観客が少ないので野次などはあまり感じないと語った一方で「パラリンピックの舞台になると、人の多さにびっくりします。あがり症なので目をつぶって深呼吸をすることを心がけ、集中して頭をクリアにし筋肉を弛緩させてベストパフォーマンスにつなげることを意識しました」と答えた。
どうしてラグビーを始めたの? とよく聞かれるので、競技を始めたきっかけを聞きたいという子どもに対して「本当はレスリングをやりたくなくてピアノを習いたかった」と語った鏡選手。「一緒にレスリングを始めた兄のチームメイトのお家に伺ったときに、トロフィとメダルがずらりと並んでいたんです。私は特別なものが好きなので、これはどうやったらもらえるんだと母に聞きました。そしたらレスリングをやるしかないと騙されました」と答え、観客の爆笑をさらった。さらに「こんなに自分に合う競技を見つけられたのは嬉しい」と付け加えた。
フェンシングの江村選手は「両親がもともとフェンシングの選手だったので、生まれたときから身近な競技でした」と語るも「サーブルという種目に転向したきっかけは、サーブルの大会の景品が好きなキャラクターのジグソーパズルでそれが欲しくて大会に出場しました。優勝できたので、そのまま転向しました」と意外なエピソードを披露した。
新体操を頑張る子どもからは、みんなを魅了する演技をするにはどうすればいいかという質問がされた。フィギュアスケートの島田選手は「私もそれがすごい課題ではあるんですけど…」とし、「笑顔で楽しく演技をしていれば、見ている皆さんも笑顔になってくれると思うので、まずは自分が楽しんで演技をしたらいいんじゃないかなと思います」と語った。
馬術の大岩選手は「馬術も採点競技なので、ジャッジする人からどう見えているかをいつも考えながら競技をしています」とアドバイスをした。
トップアスリートに質問ができた3人からは「自分が知らなかったことを知れたので、試合に出るときに活かしてみようと思った」「ジグソーパズルがきっかけで競技を始めたというのが面白かった」「魅了する演技をする方法を教えてもらったので私もそういう風に演じたい」といった感想が飛び出し、和やかな時間が終了した。
第2部後半は、ミラノ・コルティナ2026冬季大会に思いをはせつつ、これまでの冬季オリンピックにフォーカスした映像が流れた。日本が初めて冬季オリンピックに参加したのは今から97年前のことで、当時は船で韓国・釜山に渡り、シベリア鉄道で3週間におよぶ過酷な旅を経てヨーロッパにたどり着いたという。
ナビゲーターの藤本は、そうした未知の世界への勇気ある挑戦が、現在世界で活躍するアスリートたちにつながっている語った。そしてNHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」のオリジナルサウンドトラックより、久石譲作曲 「青春」「Stand Alone」(歌唱はソプラノ・牧野元美)の2曲が披露された。
ナビゲーターの藤本が俳優として躍進したドラマ「坂の上の雲」を思い出しながら演奏に耳を傾けた人も多かったことだろう。この日の藤本の髪型が「坂の上の雲」に出演した頃に似ている…と感じた人もいたようだ。
続けて記憶に新しい冬季オリンピック・北京2022大会の映像とともに「ファンタジック・メモリー Beijing 2022」が演奏された。長く苦しいコロナ禍の重圧から、少しずつ抜け出そうとしていた北京2022大会に想いを馳せた人も多かったことだろう。
オリンピックコンサート2025が開催された当日は、ミラノ・コルティナ2026冬季大会まで209日前だった。伝統と革新が融合した新しいイタリアの魂に触れられるような大会になるのでは…とし、ジュゼッペ・ヴェルディの歌劇「ナブッコ」序曲に乗せて、これまでイタリアで開催された2度の冬季オリンピックを振り返った。トリノ2006大会で金メダルを獲得した荒川静香選手の懐かしい映像を観て、来年のオリンピックではどんなドラマが生まれるか、楽しみな気持ちを持った人が多かったと思う。
そしてコンサートの最後は、ソプラノ・瀧本真己、牧野元美、テノール・新堂由暁、バリトン・後藤春馬によるスピロ・サマラ作曲のオリンピック讃歌が披露された。
ナビゲーターの藤本は、TEAM JAPANのミラノ・コルティナ2026大会のコンセプト「ともに、一歩を生み出す勇気を」は、一人じゃないと信じることが大きな力になるという思いがベースにあると解説。「アスリートだけでなく、私たち自身も努力と喜びを分かち合えれば、もはやTEAM JAPANの一員なのではないでしょうか」という言葉で締めた。
貴重なオリンピックの映像とオーケストラ、ボーカリストによる素晴らしい音楽、アスリートのトークや子どもたちとの和やかなやり取りが楽しめたコンサートとなった。
取材・文:咲田真菜
舞台写真:オフィシャル提供©JOC
公演日程:2025年7月12日(土) (公演終了)
会場:東京国際フォーラムホールC
指揮:辻 博之
ナビゲーター:藤本隆宏
オーケストラ:THE ORCHESTRA JAPAN
公式サイト:https://www.harmonyjapan.com/joc2025/
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