2019年10月18日(金)から、東京・東劇で、25日(金)から大阪・なんばパークスシネマおよび名古屋・ミッドランドスクエアシネマ他で、松竹ブロードウェイシネマ、ミュージカル『42nd ストリート』が上映される。
『42nd ストリート』は1933年に公開されて大ヒットしたミュージカル映画『四十二番街』を舞台化したもの。エンターテインメント世界の裏側を描いた作品として話題になっただけでなく、のちに映像に携わる人たちが影響を受けた「バークレイ・ショット」という群舞のダンサーを上の位置から撮影する手法を生み出した作品としても知られている。
大不況のアメリカで身も心も疲れ切っている演出家・ジュリアン・マーシュが新作ミュージカルを上演することになり、喜び勇んでオーディションに集まったキャストたちのタップダンスがオープニングで繰り広げられる。総勢50人ぐらいになるのか、映像で観ていることを忘れてしまいそうな迫力は、松竹ブロードウェイシネマならではの魅力だ。
物語は新作ミュージカルの主演を務めるベテラン女優、ドロシー・ブロックと新人コーラスガールのペギー・ソイヤーを軸に、演出家のジュリアン・マーシュがからんで展開していく。新作ミュージカルが上演されるまでの舞台裏と、実際に上演されるミュージカルのシーンが交互に演じられ、その中でふんだんに取り入れられているタップダンスが大きな見どころとなる。
主役のドロシーがけがをしたことで、代役となるペギーを演じるクレア・ハレスがとにかく光っていた。歌とダンスの両方が素晴らしく、舞台女優としては小柄ながらも、踊る姿はスケールが大きい。小柄だからこそ出せるキュートな雰囲気もあり、両手を大きく広げてタップダンスを踏む姿に魅了された。
ベテラン女優のドロシー・ブロックを演じるボニー・ラングフォードはさすがの風格だが、この人もクレアとは違う意味でキュート。わがままでひねくれているのだが、どこか憎めないドロシーを表情豊かに演じていた。けがをしたあと、代役となったペギーを励ますシーンは感動的だ。
この物語は、タップダンスだけでなく「どんなに苦しくても希望を持ち続ける」ということを訴えているというが、小難しいことを考えずに観るほうが楽しめる作品のように思う。やっぱり見どころは大人数のダンサーたちが生き生きと踊っている姿だからだ。
実は日本で初演された舞台『42ndストリート』を観ていて、ペギー役を涼風真世、ジュリアン役を錦織一清が演じていた。当時まだ30代だった錦織がジュリアンを演じたことで、なんとなく物足りなさを感じた覚えがあったのだが、実際に演出家としてキャリアを積んだ今ならもしかしたら似合うのではないかと、今回の作品を観ながら思ってしまった。これだけ大人数でタップダンスを披露するカンパニーを作るのは大変かもしれないけれど、また日本で上演してほしい作品だと改めて感じた。